仮想環境のプーリングと自動化が鍵
プライベートクラウド向けインフラを検討する
プライベートクラウドを検討する企業が注意すべきポイントと、インフラのビルディングブロックとなる主な製品を紹介する。
プライベートクラウドが旅だとしたら、企業は乗り物を考える必要がある。プライベートクラウドという選択肢を考える場合、現在のITデータセンターインフラは参考にならない。
幸い、プライベートクラウドインフラのビルディングブロック(仮想化、自動ワークロード管理、セルフサービス、メータリング、チャージバックなどの技術)を提供するベンダーはいくらでもある。これはつまり、企業が新規の投資を検討する際は十分な注意を払う必要があることも意味する。
業界専門家は第一に、クラウドコンピューティングの定義を確認し、プライベートクラウドはエンタープライズデータセンター内のクラウドであることに留意するようアドバイスしている。
クラウドコンピューティングの定義
米国立標準技術研究所(NIST)によると、クラウドコンピューティングは構成可能なリソース(ネットワーク、サーバ、ストレージ、アプリケーション、サービス)の共有プールへの便利なオンデマンドネットワークアクセスを実現するモデルだ。これらのリソースの提供と解放は、最小限の管理作業やサービスプロバイダーの関与で迅速に行われるとされている。
さらに、NISTの定義には、クラウドコンピューティングにおける5つの基本的な特徴が含まれている。
オンデマンドセルフサービス
クラウドコンピューティングは、オンデマンドとセルフサービスという2つの特徴に分けられる。そう指摘するのは、業界調査・コンサルティング会社のEnterprise Management Associates(EMA)のシニアアナリスト、スティーブ・ブラセン氏だ。「セルフサービスとは、リソースやサービスがユーザーにとってアクセスしやすいということだ。オンデマンドでは、リソースやサービスのほぼ瞬時のプロビジョニングと高度なIT自動化を必要とする」と同氏は説明する。
多様なネットワークアクセス
モバイルプラットフォームを含むさまざまなプラットフォームからネットワーク経由で利用できる。
リソースプーリング
マルチテナントモデルを使って、リソース(ストレージ、処理能力、メモリ、ネットワーク帯域、仮想マシンなど)が多数の利用者に提供される。
迅速な弾力的調整
コンピューティング能力が高速かつ弾力的に、場合によっては自動的にプロビジョニングされ、迅速なスケールアウトが実現されるとともに、高速に解放され、迅速なスケールインが実現される。
サービス測定
サービスの種類(ストレージ、処理能力、帯域、アクティブユーザーアカウントなど)に応じて適切な抽象化レベルでメータリング機能を使って、リソース利用が自動的に制御、最適化される。リソース利用量は監視、制御、報告でき、それによってサービスの提供者、利用者に透明性が提供される。
企業は動的なプライベートクラウドプラットフォームを実現するだけでなく、セキュリティとコンプライアンスに関するビジネスポリシーと、サービスレベル保証契約(SLA)が実施されるようにしなければならない。
プライベートクラウドと仮想化
プライベートクラウドは、仮想化の新たな進化形と考えるのが最も適切だ。
「仮想化は、コスト抑制と効率向上、そしてコスト削減の基盤だ」と、VMwareのプロダクトマーケティングディレクター、ジョン・ギルマーティン氏は語った。
仮想化は物理インフラの統合を可能にする。デスクトップ仮想化のトップベンダーは、仮想化業界最大手のVMwareで、これに続くのがCitrix Systems、Microsoftだ。両社はそれぞれXenServer、Hyper-Vというハイパーバイザーを提供している。Red Hatのエンタープライズデスクトップ仮想化製品も企業で使われている。サーバ仮想化でもこれらのベンダーが選択肢になる。
自動化の重要性
仮想化の利用が進んでいる企業は、手動の管理プロセスでは運用効率向上を図りにくいことを理解している。今のところ、最大限の効率を達成するには仮想環境のプーリングと自動化が不可欠だ。
「自動化は、迅速なプロビジョニングと展開を実現する上で極めて重要であり、クラウドコンピューティングの基幹要素だ」と、Forrester Researchのアナリスト、ジェームズ・スタテン氏は語った。
物理デバイスと仮想インフラ、両方のシステム管理(展開、パッチ適用、監視)が自動化の対象となる。「仮想化への対応が充実している製品を使うことが重要だ」と、EMAのブラセン氏は語った。
システム管理の自動化に利用できる製品は、おなじみのシステム管理ベンダー各社から提供されている。例えば、Hewlett-Packardの「HP Business Service Automation Suite」、IBMの「Tivoli IT & Service Management Solutions」、CA Technologiesの「Cloud Solutions」、Microsoftの「System Center Suite」、BMCの「Software Cloud Computing Solutions」などだ。これらのほかにも、Dell Kaceのシステム管理アプライアンスである「Kbox」、LANDesk Softwareの「LANDesk」、Symantecのサービス指向管理ソリューションである「Altiris」などがある。
また、環境のメータリングとクラウドインフラの監視により、SLAが満たされているかどうかを確認するためのサービス管理製品について、業界専門家はシステム管理ベンダーの製品を検討するよう勧めている。ただ、製品コンポーネントの整備の度合いはベンダーによってまちまちだと、専門家は指摘している。
システム管理ベンダーではないが、VMwareが提供する管理ソリューションファミリーである「VMware vCenter」は、同社のクラウドプラットフォームである「VMware vSphere」を導入したデータセンターの運用管理を自動化する。
“クラウドパッケージ”の検討
十数社のベンダーが“クラウドパッケージ”製品を提供している。「ソフトウェアのみのパッケージと、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせたパッケージがある」とスタテン氏は語った。
ソフトウェアのみのクラウドパッケージには以下のような例がある。
CA AppLogic
CA Technologiesは、3Teraの買収で取得した「AppLogic」を提供している。AppLogicは、任意のx86ハードウェアおよびハイパーバイザーレイヤー上で動作し、ワークロード分散、メータリング、管理といった機能を提供するターンキークラウドコンピューティングプラットフォームとされる。
VMware vCenter Lab Manager
VMwareは、開発/テスト環境でプライベートクラウドを試したいというユーザーのために、開発/テストチーム用のセルフサービスプロビジョニング機能や自動管理機能を備える「vCenter Lab Manager」を提供している。
Eucalyptus Enterprise Edition
Eucalyptus Systemsは、オープンソースのプライベートクラウドプラットフォームの商用版である「Eucalyptus Enterprise Edition」(Eucalyptus EE)を提供している。
ハードウェアとソフトウェアを組み合わせたクラウドパッケージとしては、HPの「BladeSystem Matrix」、IBMの「CloudBurst 1.2」(IBM System x BladeCenterプラットフォーム上に構築されている)、Dellの「Cloud Infrastructure Solution」、CiscoとEMCがVMwareとともに結成したVirtual Computing Environment(VCE)連合の「Vblock Infrastructure Package」などがある。
プライベートクラウドの取り組みは長い目で
プライベートクラウドを構築するための製品の市場はダイナミックであり、新しいベンダーと製品が続々と登場している。
「プライベートクラウドの構築と運用は、長期にわたる取り組みだ。CEOは、高価な製品を提供する大手ベンダーを採用する場合と、優れた技術を持っているかもしれないが、信頼できる存在になるかどうか分からない小規模なベンダーを採用する場合のそれぞれについて、トレードオフを綿密に検討しなければならない」と、クラウドコンピューティングコンサルティング会社HyperStratusのバーナード・ゴールデンCEOは語った。
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