ユニファイドコミュニケーション市場リポート
「タブレットでWeb会議」に見るモバイルユニファイドコミュニケーションの成長性
iPadの登場とともに再び活発化したタブレット端末市場。業務で利用される事例も増えている。タブレットをコミュニケーションのツールとして捉えた場合の可能性を探ってみよう。
ここ数年、映像コミュニケーションの市場が急成長している。その一方で、タブレット端末を業務に活用しようとする動きもあり、ビジネスコミュニケーションのツールとして利用する環境が整備されつつある。本稿では、映像コミュニケーションのうち、Web会議およびスマートフォン、タブレット端末といったスマートデバイスを利用した「モバイルユニファイドコミュニケーション」の可能性について、独自の調査データなどを基に考察したい。
映像コミュニケーションの市場が拡大
ユニファイドコミュニケーション(UC)に関連する映像コミュニケーションの国内市場は、2006年時点で約160億円規模であり、うちビデオ会議が約80億円、Web会議が約26億円となっている。現在はビデオ会議の市場規模が大きいが、Web会議の価格面、手軽さに加え、タブレット端末の普及、クラウドコンピューティングの活用といった動向が、Web会議市場の拡大を後押ししている。
さらに、ビデオ会議を導入した上場企業がWeb会議を導入し、業務支援や業務プロセスの中で映像コミュニケーションを利用し始めた。これらのことから、2012年以降、映像コミュニケーション市場の中ではWeb会議が一番規模が大きい市場になると予想される。
進むiPadのビジネス利用
モバイルUCに利用できるモバイル端末として有望視されるのはスマートフォンとタブレット端末の2つだ。これらのうち、タブレット端末の業務利用の動きを見てみよう。
タブレット端末を国内発売した、もしくは発売予定の企業は現在13社。アップルと一部のベンダーを除き、そのほとんどがOSにAndroidを採用している。
| 発売 | メーカー |
|---|---|
| 2009年12月 | カマンジ(Camangi) |
| 2010年5月 | アップル |
| 2010年10月 | 加賀ハイテック |
| 2010年11月 | マウスコンピューター、オンキヨー、NTT東日本、サムスン、NEC |
| 2010年12月 | NECビッグローブ、デル、シャープ、クリエイティブメディア |
| 2011年上半期 | シスコシステムズ |
米Appleは2010年4月にタブレット端末「iPad」をリリースした。iPadは民生用の新しいデジタル機器として人気を集めたが、ビジネス用途での利用も注目されている。2010年7月現在で国内のiPadをビジネスに利用した事例は4分野で36あり、以下にその分類を行った。
さらに分野別に分類すると、医療・薬品と教育・文化施設の割合が多いことが分かる。
| 分野 | 企業名 |
|---|---|
| 医療・薬品 | エムスリー、富士フイルム、フェーズワン、AZE、大塚製薬、武田薬品、むつ総合病院 |
| 教育・文化施設 | 博多学園、前橋国際大学、名古屋文理大学、名古屋商科大学、中津川図書館、富弘美術館、スペクトラムビジョンズ、エキサイト、英語タウン.com、朝日ネット、テクノロジー・アイ、エフプラス |
| サービス業 | モーションポートレート、クロノス、ノバレーゼ、ベーシック、ダイニングキッチン、ボトルキープ、フーマトレーディング、みずほ銀行、チューリッヒ保険、アイビーシステム |
| その他 | リバー、アットホーム、千趣会、五反田電子商事、TOHOシネマズ、スカラ、テクノツリー |
タブレット端末の今後の方向性
iPad発売以降に登場したタブレット端末は、ディスプレーサイズが7型以下のものと9型以上のものに明確に分かれている。iPadは9.7型の液晶を搭載しており、シャープによるタブレットの分類でいえば「ホームモデル」に当たる。このことは、タブレット端末の今後の方向性として、「モバイルモデル」と「ホームモデル」の2つの選択肢があることを示している。
モバイルモデルは、あらゆるモバイル機器と融合する。例えばスマートフォンと融合する例があり、ゲーム機とも融合が進んでいる。今後はPND(Portable Navigation Device)や携帯ゲーム機など、さまざまな用途のモバイル機器との融合が進むだろう。一方、ホームモデルは、家庭内AV機器と融合する動きが注目される。既にデジタルフォトフレームとは融合しており、今後は例えば薄型テレビとの融合が進むと考えられる。
また、タブレット向けのコンテンツ配信については、端末のOSや搭載プレーヤーに依存しないクラウドサービスに移行することが予想される。複数の端末それぞれのコンテンツを用意することなく、クラウド上にコンテンツを置いておくことで、いつでもどこでも、あらゆる端末で利用できる環境が整うことになる。また、端末側には大容量のメモリも必要ない。
映像コミュニケーションにおけるモバイルUCの現状
現在の映像コミュニケーションの利用端末に目を向けると、専用端末とPCが中心である。PCではノートPCが主流だ。しかし、外出先から会議に参加する機会の増加や、近年のスマートフォン、タブレット端末の市場成長に伴い、モバイル利用のニーズも拡大してきている。
モバイルUCへの対応基準として、ベンダー各社のビデオ会議/Web会議システムが「スマートフォン」「タブレット端末」に対応しているか、主要8社(ヴィデオ、NTTビズリンク、沖電気工業、ジャパンメディアシステム、ブイキューブ、ポリコムジャパン、マイクロソフト、ラドビジョン)をヒアリングして下表にまとめた。
| 対応あり | 対応なし | 小計 | |
|---|---|---|---|
| スマートフォン | 1 | 7 | 8 |
| iPad | 3 | 5 | 8 |
| (出典:シード・プランニング「テレビ会議/Web会議の市場動向 2011」) | |||
全体としてはまだ、モバイル専用端末には25%しか対応していない(スマートフォンは13%、タブレット端末は38%)状況だ。しかしながら、スマートデバイスのサポートにコミットするベンダーは多く、各社が今後モバイル対応を順次進めていくことで、タブレットによる映像コミュニケーションの市場成長性はさらに高くなる。
モバイルUCが普及する環境が整う
UCの定義は、音声やテキスト、動画などさまざまな通信手段をIPネットワーク上に統合(unify)し、いつ、どこでも、誰とでもコミュニケーションが行えることである。また、映像コミュニケーションの発展形として、スマートフォン、タブレットといったスマートデバイスでビデオ会議/Web会議あるいは音声会議を利用するという、新しいUCのスタイルがモバイルを基点に確立されつつある。
現状、映像コミュニケーションにおけるモバイル端末の位置付けはまだ低く、用途としてはメールやスケジュール管理が多い。スマートデバイスに対して以前からあったコンセプトではあるが、なかなかビジネスにつながらなかったのだ。しかし、近年のブロードバンド環境の整備を背景としたWeb会議の市場拡大や、iPadを含むタブレット端末の普及により、広帯域を使うモバイルコミュニケーションも実用性を帯びてきた。
シード・プランニングが実施したビデオ会議のユーザーアンケート調査結果においては、下図のように最も使いたい端末としてノートPCが57%を占めている。しかしこれは、選択肢にタブレット端末やスマートフォンを含んでいないため、このノートPCの比率にニーズが含まれているとみることもできる。
以上の点から、映像コミュニケーションに関して、モバイルUCがビジネスに浸透していく可能性は十分にあるといえるだろう。
原 健二
シード・プランニング 2グループリーダー
CIAJ(情報通信ネットワーク産業協会)フォーラムWGで「映像コミュニケーションWG」「サービスロボットWG」のリーダーを務める。主な調査分野は映像コミュニケーション、タブレット端末、3Dビジネス、音楽配信ビジネス、サービスロボット、介護支援ロボットなど。
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