独自プロトコルでタブレットに最適化
タブレット向けモバイルWAN最適化製品登場
タブレットでも信頼性の高いネットワーク接続を実現するため、タブレット用のWAN最適化製品が登場した。限られたリソース下で、どのように実現しているのだろうか?
ユーザーが企業向けタブレットやスマートフォンで、メールのチェックやプレゼンテーションの表示、人気のモバイルゲームで遊ぶ以上のことをしたがるのも時間の問題だ。モバイル端末の普及が進むにつれて、このような新しいエンドポイント向けの複雑なビジネスアプリケーションも増えていくだろう。現在は、タブレットやスマートフォン向けに開発されたモバイルWAN最適化クライアントはほとんどないが、WAN管理者が信頼性が高くパフォーマンスのよい接続をユーザーに提供しなければならないことに変わりはない。
最近までモバイルWAN最適化製品は、ノートPCやNetbookなど、従来のモバイル端末をターゲットにしてきた。これらの端末は、強力で軽量なスマートフォンやタブレットに置き換えられつつあるが、ほとんどのWAN最適化ベンダーは新時代のモバイル端末に対応していない。その中で先ごろ、ソフトウェアベースのWAN最適化製品を提供する米Circadenceは、企業向けAndroid端末用のモバイルWAN最適化クライアントを発表した。同社によると、このような端末向けに開発されたWAN最適化クライアントはこれが初めてだという。
米Enterprise Management Associatesでリサーチディレクターを務めるジム・フレイ氏は「タブレットプラットフォーム向けのこのような複雑なアプリケーションは、“提供されるかどうか”ではなく“いつ提供されるか”が問題だ」と話す。タブレット向けのモバイルWAN最適化クライアントは、「可能な限り、(企業が)この新しい技術を本当に活用できるようになる可能性を高める製品だ」という。
フレイ氏は、大量のデータを共有し、デスクから離れて活動するユーザーが多い行政や医療業界のWAN管理者が、アーリーアダプターになると見込んでいる。ただし、タブレットの利用で大容量ファイルの転送や動画ストリーミングが増加する企業の注目も集めるはずだと同氏は話す。
「まだニッチな分野だが、この分野は元来、非常に大きな市場だ。この技術を必要とする状況の中には、数万台のエンドポイントが関係する場合もあるだろう」(フレイ氏)
タブレット向けモバイルWAN最適化に必要な処理性能と電力は?
タブレットやスマートフォンのバッテリー、メモリ、プロセッサの性能はノートPCに比べて劣るため、このような小型モバイル端末向けのモバイルWAN最適化の開発には特有の難しさが伴う。
Circadenceのコア技術は、キャッシュや圧縮など、メモリやプロセッサに負荷が掛かる手法ではなく、同社独自のプロトコルを採用しており、モバイルWAN最適化に特に適した技術だという。
「ノートPC向けであっても、(モバイルWAN最適化製品の)多くは、キャッシュのために4G~6GバイトのHDD領域を必要とする。そんな要件をモバイル端末に課すのはばかげているし、キャッシュ操作に必要な処理をしたらコストが掛かってしまう」とCircadenceのロブ・ショーネシーCTO(最高技術責任者)は言う。
Circadenceは既にWindows CEのモバイルWAN最適化を提供しており、AppleのiOS端末にも間もなく対応する予定だ。CircadenceのWAN最適化ソフトウェア「MVO」の機能は、基本的に拡張UDP(User Diagram Protocol)パケットとして機能する独自のプロトコルを基盤としている。
有線接続ではTCP/IPを利用することで信頼できるネットワークを実現できるが、TCPはパケット紛失を厳しくチェックするため、モバイル端末とは相性が悪い。一方、UDPは通常、メディアストリーミングの高速化に使用される「緩い」プロトコルのため、WANを流れる全てのデータに使用するには信頼性が低いとショーネシー氏は話す。
同氏によると、Circadenceでは独自のプロトコルTMPを開発するに当たって、TCPとUDPの両方の長所を取り入れることを考え、UDPパケットの基本構成に軽量のヘッダを追加して、フロー制御と信頼性の高いパケット配信を実現しているという。TCPはヘッダに含まれる情報が多過ぎてパフォーマンスに影響する上、この情報は削除もできないため、基盤には採用しなかったとのことだ。
クライアントがTCPで要求を送ると、CircadenceのソフトウェアはそのトラフィックをキャプチャーしてTMPに格納してからWANに送り出す。次に、データセンターのWAN最適化コントローラーがこのトラフィックを受け取り、TMPからパケットを取り出して、各宛先にパケットを送信する。このソフトウェアではキャッシュや圧縮もある程度は使用しているが、「依存はしていない」。この点は、タブレットやスマートフォンでモバイルWAN最適化をサポートする上で不可欠だとショーネシー氏は説明する。
また、TMPのデータの格納と取り出しは、ネットワークインタフェースカード上で処理されるが、この作業に必要なプロセッサ処理と電力は、キャッシュや圧縮に使われるリソース消費と比べるとごくわずかだという。
WindowsとMac用のモバイル最適化製品「Steelhead Mobile」を提供する米Riverbed Technologyは、タブレットとスマートフォン向け製品のロードマップを公開していないが、上記のような課題があることをメールで認めている。電話での取材を同社の広報担当に申し込んだが、四半期決算報告前の「沈黙期間」であることから了承されなかった。
Riverbedの製品マーケティングマネジャー、ナビーン・プラブ氏は、メールで「iPadなどのモバイル端末やスマートフォンに対する最適化が注目を集めていることは認識している」と述べている。「モバイル市場は急速に成熟しているが、弊社ではメモリとCPUなど、弊社製品のようなソフトウェアの処理に必要なリソースを調べ始めたばかりだ。需要の拡大に合わせて、このニーズにどのように対応するのが最適かを検討していきたい」(ブラブ氏)
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