セキュリティベンダーが語るモバイル戦略:マカフィー編
私物スマートフォンの業務利用はモバイル端末管理が鍵に?
スマートフォン狙いのマルウェアはまだ少ない。そんな今が一歩先んじた対策を整える絶好のチャンスだ。コンシューマライゼーションを成功へと導くモバイル端末管理について、その考えや将来像をマカフィーに聞いた。
マルウェアは少なくてもリスクは高い?
社員の私物スマートフォンを業務で活用する「コンシューマライゼーション」の流れが、2011年に入っていよいよ現実味を帯びてきた。
IT投資が厳しい現在、社有資産を持たずに生産性向上を狙える同概念は、企業にとって魅力的だ。社員側も、新たに学習することもなく、使い慣れたデバイスをそのまま活用できる。うまくいけばWin-Winの関係が築けるかもしれず、前向きに検討する企業は増えていると、マカフィーのコンシューママーケティング部部長 青木大知氏は言う。
しかし、やはり気になるのはスマートフォンのセキュリティだ。携帯端末は、それ自体が個人情報の集合体。当初は画面を変更する程度だったモバイルマルウェアも、今では端末情報や個人情報目当てにマルウェアを送り込むケースが増えている。その状況で企業データまでもが保存されるとなると、ハイリスクと言わざるを得ない。
マカフィーは、2004年11月からドコモのFOMA端末向けに「McAfee VirusScan」を提供しており、一般市場向けのモバイルセキュリティソリューションに取り組んできた。当時はSymbianやWindows CE狙いのマルウェアがほとんどで、2008年まではそれらがモバイルマルウェア全体の8割を占める傾向が続いた。
しかし、2010年になるとその様相は一変する。2010年に初めてAndroid向けマルウェアが登場し(年間を通じて全体の8%)、2011年6月にはモバイルマルウェア47件(亜種含まず)のうち24件がAndroid向けマルウェアに、7月には15件全てがAndroid向けマルウェアとなった(図1参照)。
PCに比べると、その数は圧倒的に少ない。これについて、青木氏は「(マルウェアの作成者は)PCウイルスが出始めたころと同じ状況で、さまざまな手法を試しながら一番影響力のある方法を探っている」と分析する。
スマートフォンにマルウェアを送り込む方法で現在主流となっているのが、アプリの中にマルウェアを仕込んでダウンロードさせる方法だ。特にアプリマーケットで提供するまでの審査が緩く、Root化でカスタムしやすいなど、オープンかつ自由なAndroidは格好の標的となっている。
従来の携帯電話感覚でアプリをインストールすることも、マルウェア増長の原因となっている。アプリをインストールするとき、そのアプリが行う外部通信について同意を求めるパーミッション画面が表示される。しかし、「その内容をしっかり読んでいるユーザーは少ない」(青木氏)。Android/Geinimi.Aでは、個人情報の取得やシステムツールのインストールなどをパーミッション画面に記載している。これを見過ごすユーザーも少なくない。ユーザー自らがセキュリティホールを作っているのが現状だ(画面1)。
手口も巧妙化しつつある。例えば、Android/Toplank.Aはバックドア機能を組み込み、端末内の情報を検索するマルウェアだが、マーケットへの申請時には普通のアプリを提示していた。申請が通ったのちにすり替えてまん延を図った。
こうしたマルウェア対策として、マカフィーでは個人向けウイルス対策アプリ「McAfee VirusScan」を提供している。マーケットでの販売以外にも、キャリアと協力してVirusScanの標準搭載なども行っている。「量販店でモバイルウイルス対策ソフトを購入するのは意識が高い人であって、そのレベルを全てのスマートフォンユーザーに求めるのは難しい。既に端末にインストールされている製品を利用してもらう方が、セキュリティを補完しつつ意識向上を促進できる」(青木氏)
また、不正なWebサーバへアクセスしないように制御するWebフィルタリングツールの「McAfee SiteAdvisor」も有効だ。Webサイトへのアクセス時に、赤や黄色、緑の色別でサイトの危険度を警告してくれる(画面2)。また、警告画面を表示することはアクセス先にリスクがあることを再認識させてくれて、教育のダブル効果も期待できる。
この他、マカフィーでは「McAfee WaveSecure」で端末の紛失・盗難時の情報流出対策を提供している。WaveSecureは、リモートから端末にロックをかける、紛失した携帯電話の位置を地図上で追跡表示する、リモートから端末内データをバックアップおよびリストアするなどの機能を提供する。
上記3機能は、個別に導入できる他、総合セキュリティソリューション「McAfee Mobile Security」としても購入できる(画面3)。今後、コンシューマライゼーションが本格化したとき、「個人向けセキュリティ製品でも、企業ユースに耐えられる機能が必要だ。そこを盤石にして、初めて次のステップであるモバイルデバイス管理へと移れる」と、マーケティング本部スペシャリストの松久育紀氏は言う。
注目を集めるモバイルデバイス管理
「McAfee Enterprise Mobile Management」(McAfee EMM)は、iPhoneやAndroid、iPadなど多プラットフォームを統合管理するMDM製品だ。ユーザーは端末用エージェントをマーケットやストアで選択し、社用メールアカウントで認証してからダウンロードする。ダウンロード時に、端末に対してアプリ制限やポリシー設定などを行う旨が表示され、同意するとインストールが開始する。
エージェントを起動すると、社内サーバが端末を認証し、パスワード設定やポリシーなどがまとめられた「プロファイル」をインストールして各種設定が行われる(画面4)。
後は、定期的にサーバと通信しながら端末のセキュリティ状態を自動で維持する。「ITで一番問い合わせが多いのは、新規デバイス導入時の設定トラブルだ。McAfee EMMは自動設定および自動管理が徹底しているので、そうした問題は起こりにくい。管理者にとっても煩雑な作業が軽減されるので、メリットだ」(青木氏)
設定できる内容はOSによって異なるが、MDMで求められる主だった機能が利用できる。
- デバイス管理
- ポリシー設定
- アプリ管理
デバイス管理では、メールアカウントの設定や管理、盗難・紛失時のリモートワイプおよびロック、端末機能の利用制限などを適用できる。また、不正端末のブロックや端末の状態の把握、インベントリおよびログ管理、リポート機能も実装している。
ポリシー設定では、企業側のコンプライアンスに従って適切なセキュリティポリシーを各端末に対して展開できる。例えば、パスワードロックをかけるなども、その1つだ。「マカフィーの調査では、スマートフォンユーザーの6~7割はパスワードロックをかけていないと回答している。紛失・盗難時の情報漏えいリスクを極力低減するためにも、パスワードロックの有効化、8文字以上の数字・記号によるパスワード設定の強制、過去使用したパスワードの再利用不可などをポリシーとして適用できる」(松久氏)
アプリ管理では、企業側で用意した業務アプリなどの配信やアップデートの一元管理が可能だ。
McAfee EMMは2010年8月に発売開始し、特に2010年末にAndroid端末機種のラインアップが充実したことも受け、引き合いが着実に増えているという。脅威が深刻化する前に、PCセキュリティで学んだ経験を生かし、早めの対策を講じたいのが本音かもしれない。2012年あたりがMDM元年になると、両氏は予想している。
同社では、将来的にスマートフォンがシンクライアント化した場合も踏まえ、今までPCで展開してきたセキュリティ対策をどうMDMに組み込んでいくか、どう啓蒙していくかに注力していく。
「コンプライアンス対策としての意味合いが強いMDM製品にセキュリティ機能を統合できるのは、セキュリティベンダーとしての強みだ。今後は、McAfee EMMでウイルス対策を実現するなど、より一層セキュリティ機能を充実させる」(青木氏)
統合管理の面でも、さらなる強化を目指している。既に同社セキュリティ管理ツール「McAfee ePolicy Orchestrator」との連携が進んでおり、2012年にかけてMcAfee ePOを通してMcAfee EMMを統合管理できるようになる。
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