企業利用の注意点は?
IT部門が押さえておきたいiCloudのセキュリティリスク
AppleのiCloudは他のストレージサービスと比較して、まだセキュリティリスクが多いようだ。本格的な普及を前に、iCloudを企業利用する際にIT部門が気を付けるべき項目をまとめる。
米Appleが大々的に発表したiCloudは、エンドユーザーの熱狂とIT要員の頭痛の種が入り混じった反応を予感させる。「ITのコンシューマー化」とは職場と自宅との境界が崩れることであり、iCloudはまさにその実例となる。だが、これは明るい可能性を秘めていると同時に、セキュリティリスクも存在する。
iCloudの到来により、Apple端末のユーザーは登録を済ませて自分の個人的なデータを全てAppleのデータセンターに転送し、いつまでも生かしておける。ありがたいことだ。しかし、Appleの携帯端末向け社内アプリケーションを開発している企業、そしてその端末を社外秘情報の処理に使いたい組織、例えばiPadに患者の情報を記録している病院(関連記事:孫社長も驚いた「医療現場のiPad/iPhone活用」最前線)などにとっては、困ったことになる。
もしも部外秘の患者の記録が、利用を許可された担当者の手を離れてiCloudに転送されれば、たとえ誰かが悪意を持ってその情報を盗んだわけではないとしても、所有者はHealth Information Protection and Privacy Act(HIPAA)法違反に問われて米政府の罰則を科せられる。もちろん、企業の大多数には既に情報リスク低減のための計画があり、こうしたことも全て織り込み済みだ。
ある大手多国籍企業のITディレクター、クリスチャン・ライリー氏は「(iCloudは)データ分類ポリシーに沿わせる必要があり、Appleはわれわれが全SaaS(Software as a Service)プロバイダーに課している情報セキュリティ評価を通過しなければならないだろう」と話す。この企業では既に、外回りの従業員用のiPadアプリを導入しているが、重要なデータを私物の端末に流出させない対策を取ってきた。ライリー氏はむしろ、iCloudでアプリケーションとAppleのストレージプラットフォームとの豊富な連携を実現できる長期的な可能性の方に大きな関心を抱いている。
「最もエキサイティングな部分はiCloudのAPIだ」と同氏は言う。ファイル保存の他、iCloudのストレージプラットフォームはkey-valueストレージシステムを備える。つまり開発者は、例えばアプリケーションの設定やファイルやデータについて記憶した情報など、目には見えないが有用なデータをiCloudに保存できる。これは例えば、多数の端末に自動的に更新を配布できるアプリなどにつながるかもしれない。
iCloudの世界におけるモバイルデータの分散
IT部門がAppleを容認している限り、これは実際にはiPhoneとiPadのモバイルサポートの負担軽減につながる。そしてiCloudとモバイルの台頭により、このデータの分散状態に対処するための戦略が必要になる。
「ITリーダーなら大抵はやるべき手順が分かっていて、データ保護、セキュリティ、プライバシーなどのSLA(サービス品質保証契約)の内容について何を主張すべきかも分かっている」と話すのは、米調査会社Saugatuck Technologyの調査責任者兼上級副社長ブルース・ガプティル氏。
同氏によると、これが一因となって、アプリのデータを無効にしたり消去したりできる「リモートキルスイッチ」が普及し、人気が高まっているという。iCloudについて理解すべき最も重要な点は、iCloudと企業との相互作用は避けられない事態であり、企業はそれに抵抗するのではなく取り込むことに力を入れるべきだと同氏は言い添えた。
「基本的に、企業は端末の範囲と数およびiCloudがどんな場面で使われているのかに注目し、やめさせたり管理したりするのではなく、取り込んで教育する方法を見いださなければならない」(ガプティル氏)
米Forresterのアナリスト、フランク・ジレット氏は、個人がこれを取り入れることを会社が奨励しサポートしたいと考えた場合、そのための方法は幾つもあると指摘する。Appleの企業専門の開発者サポートに対応することもその1つだが、詳細はまだ不明だ。
iCloudの幅広い提供が開始されるのは2011年秋になる見通し。企業の開発者サポートについて、Appleはまだはっきりした計画を公にしていないが、iPhoneとiPadについては既に企業専用のサポートを用意しており、iCloudについても何もないとは考えにくい。このサービスは現時点で問題があるのは確かだ。開発者フォーラムには多数の苦情が寄せられており、特にiCloudではユーザーが古いアプリを削除できないという苦情が多い。アプリを複数の端末から削除することはできても、iCloudのユーザースペースには自分のデータとともに残ってしまい、削除する方法がないようだ。
Appleが一部のデータを保持することは構わないとしても、同社が永遠にそれを持ち続けることまで企業は容認できるだろうか。
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