教えて経理部長【第12回】
会計システム刷新のメリットをどう説明する?
ERPによる基幹システムの刷新を社内で説得するにはそのメリットを明確に説明することが大事だ。経理部向けには、大きな負荷になっている社内外向けの説明資料の作成が簡単になることを説明するとよいだろう。
質問
当社では、各業務システムがつぎはぎで導入されてきたいきさつがあり、システム管理やデータ連携などに多くの課題を抱えています。そこで、最新のアーキテクチャを利用したERP導入で全社基幹システムを刷新することを計画しています。しかし、経理部長は、会計システムはこれまでのものをバージョンアップして使い続けたいと主張し、対応に苦慮しています。経理部長は、機能的に十分に足りており、経理部にとって変更のメリットがないからといった理由で会計システムの変更に反対しているようです。情報システム部門としては、古いアーキテクチャのシステムを使い続けることで運用や保守が効率化できないことを危惧しています。経理部長を説得するにはどうしたらよいでしょうか?
経理部長はシステムのアーキテクチャには関心はない
回答 多くの経理部長は、使っている会計システムのアーキテクチャには関心がないのが普通である。極端なことを言えば、決算が締まって、業績管理資料が出力されればよいと考えている経理部長は多い。決算プロセスを安定させるには長い時間を要する。会計システムの変更は、安定したこれまでの決算プロセスが変更を強いられることになる。そういった理由で会計システムの変更に抵抗を示す場合が多い。
このような経理部長からシステム刷新に協力を得るには、情報システムのインフラ整備といった観点ではなかなか話が進まない。それよりも、経理部が抱えている課題を解決する可能性を議論した方が話は進みやすい。ERP導入のメリットを強調し、経理部長を説得し、さらに、経理部の全面的な協力を仰ぐのが得策である。
多くの経理部長が抱えている課題は?
会社によって違いがあるが、経理部長は部門別損益管理、IFRS対応、滞留債権の管理、決算早期化、内部統制、伝票処理などに関してさまざまな課題を抱えている。その中でも多くの経理部長が常に抱えている課題の1つは、「説明資料の作成に多くの時間を要している」ということである。
経理部長はまず、取締役会や経営会議で月次決算の結果について説明したり、株主総会やアナリスト説明会で年度決算について説明したりといった定例の説明の機会がある。それらに加えて、銀行に年度決算の結果を説明したり、個別に来社した証券アナリストに決算について説明するといった業務もある。さらには、社外取締役や監査役も含めた役員や他部署から、日常的に経理数値への説明を求められる。そのため、経理部ではルーチンの決算作業の合間を縫って、説明資料を作成することになる。
説明資料の作成は大変
取締役会などで説明する予算と実績の差異の説明や財務分析数値の説明といった決まったパターンの説明資料でも、その作成には多くの時間を必要とする。それ以外の資料でも、切り口が違ったり、質問の背景が違ったりして、その都度、個別の対応となることが多い。
説明資料の作成は多くの場合、時間との勝負になる。案件によっては、「今日の夕方までに」といった突然の依頼もある。そのため経理部長は集計ミスや分析漏れがないか心配をしつつ、部下の作業を見守ることになる。部長から説明資料の作成を任された担当者たちは、表計算ソフトを駆使して原始的な方法で集計、分析をすることになる。結果として、結構な人数と時間を使って説明資料を取りまとめている。
ERPで「楽になる」ことを伝えよう
経理部門の資料作成作業は、ERPを導入すれば比較的スムーズに作業が進む。というより、そういった作業のためにERPを導入するといってもよい。経理部長が聞かれることは「どこで儲かって、どこで損をしているか?」「何で儲かって何で損をしているか?」といった単純なことである。損した理由は売単価の下落なのか? 数量が伸びなかったからなのか? それ以外の突発的な事象なのか? そういった説明が、相手によって切り口を変えて求められるだけである。
まさに、業務システムと会計システムが統合されたERPであれば、表計算ソフトの分析と比較して、より早く答えにたどり着けるはずである。またBI(ビジネスインテリジェンス)ツールがあれば、さらに軽快に分析が進むであろう。経理部長は、説明資料作成の課題がERP導入で解決できることを知らなかったりする。ぜひ、情報システム部門はITで楽になる方法を提案してほしい。経理部だけが楽になるのでなく、全社の意思決定のスピード化や効率化につながるだろう。
五島伸二(ごしましんじ)
アドバ・コンサルティング株式会社 代表取締役 公認会計士・ITストラテジスト
監査法人トーマツにて会計監査、IPO支援、マネジメントコンサルティングに従事。トーマツ退所後は多数のシステム開発プロジェクトやERP導入プロジェクトに参画し基幹システム構築を行う。その後、上場会社の経理部長を経て、2010年3月にアドバ・コンサルティング株式会社を設立。それまでの経験を生かし、会計とITの専門家としてシステム開発や業務改善コンサルティングに取り組んでいる。
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教えて経理部長
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