「非Windowsマシン対応」や「多機能さ」で差異化
BitLockerとどう違う? 市販「HDD暗号化製品」の利点と注意点
HDD暗号化を実現するのはWindows標準機能の「BitLocker」だけではない。充実するHDD暗号化製品の選定ポイントを解説する。
ノートPCの盗難・紛失時における情報漏えいの危険性を抑えるのに、マシンのシステムパーティションを含むHDD全体を暗号化する「HDD暗号化」は大いに役立つ。
Windows向けのHDD暗号化の手段は幾つもある。最も単純なのは、Windows標準のHDD暗号化機能であるMicrosoftの「BitLocker」を利用することだ。BitLockerは、システムドライブと外部ストレージ双方を暗号化できる。
BitLockerが現時点で利用できるのはWindowsマシンに限られる。MacintoshやLinuxなど複数プラットフォームのクライアントPCを抱えているユーザー企業の場合、サードパーティーベンダーのHDD暗号化製品が有力な選択肢となる。
サードパーティーベンダーのHDD暗号化製品が役立つのは以下のような場合だ。
- Windows 7 Home Premiumなど、BitLocker機能が利用できないエディションのWindowsを利用している場合。規模の小さな事業所の場合、Home Premiumを利用するケースは決して少なくない
- ドメインに参加していないマシンの管理など、BitLockerが現時点で備えていない機能が必要な場合
- Windowsマシンと非Windowsマシンのサポート体制を統一する必要があり、双方で別々のHDD暗号化製品を導入したくない場合
無料で使える、非Windowsマシン対応の「TrueCrypt」
Windowsマシンと非Windowsマシンの両方に対応できるBitLockerの代替製品の1つとして、オープンソースのHDD暗号化ソフトウェアである「TrueCrypt」がある。Windowsに加え、Mac OS XやLinuxで利用可能だ。
TrueCryptが持つ最大の魅力は「無料」という点だ。TrueCryptはコンピュータの台数にかかわらず無料で利用できる。
無料とはいえ、機能は充実している。TrueCryptはBitLockerと同様、マシンの起動時にパスワード入力を求める「プリブート認証機能」を備える。緊急時にデータを復号するためのリカバリディスクの作成も可能だ。エンドユーザーがシステムで作業を続けている間もバックグラウンドで暗号化プロセスを続行できる「トランスペアレント暗号機能」もある。
TrueCryptのデメリットは、管理ツールが十分に整備されていない点だ。従業員が数人規模以上の組織になるとTrueCryptの魅力は薄れる。Windowsの標準機能であるBitLockerと異なり、Active Directory(AD)と直接連携できない。BitLockerはADのリポジトリに全ての暗号鍵を保管するなどの集中管理が可能だが、TrueCryptはこうした管理ができないということだ。万一従業員が暗号鍵を紛失した場合、復号手段は従業員が自ら作成したリカバリディスクのみになる。
TrueCryptはBitLockerとは異なり、耐障害性チップ「Trusted Platform Module」(TPM)をサポートしない(TPMについては「新たな認証レイヤーを追加するアイデンティティー対応ネットワークデバイス」を参照)。TPMは、主に企業向けのマシンにおいて暗号証明書や生体情報といった認証情報の保存に利用されるセキュリティチップだ。
ただしTrueCryptは設計上の不備ではなく、意図的にTPMをサポート対象から外している。TrueCryptの開発チームは「TPMは『誤った安心感』を与える」と考えているからだ。この見方を支持するかどうかはともかく、TPMはエンタープライズ環境に広く普及している。TPMを利用できない暗号化システムを採用したがらないユーザー企業もいるかもしれない。
市販HDD暗号化製品は多機能がウリ、ネックは導入負荷
TrueCryptはそのシンプルさと手軽さ故によく引き合いに出されるが、サードパーティー製のHDD暗号化製品はもちろんTrueCryptだけではない。是非とも導入を検討したい2製品として、McAfeeの「McAfee Endpoint Encryption」とSymantecの「Symantec Endpoint Encryption」が挙げられる。
この2製品が搭載する機能の中には、BitLockerが標準搭載しない機能も数多い。例えばSymantec Endpoint Encryptionは、BitLockerにはない以下のような機能を備えている。
- Active Directoryの管理下にないクライアントPCの管理
- Novellのディレクトリ製品「Novell eDirectory」の管理下にあるクライアントPCのサポート
- ADとeDirectory双方の環境におけるシングルサインオン機能(プリブート認証機能と連携して動作)
こうした機能を見ると、BitLockerの代わりにサードパーティーのHDD暗号化製品を選択するメリットは大きいように思える。ただし留意すべき点も幾つかある。
まずはライセンスコストの問題だ。TrueCryptは別として、どんなサードパーティー製品であっても利用するエンドユーザー数当たりのライセンス料金が発生する。いくらライセンスコストがセキュリティへの投資だと主張しても、社内の誰もが納得してくれるとは限らない。
次に、導入に必要な時間と労力も課題となる。HDD暗号化製品のセットアップ方法や技術の仕組み、導入目的に関するエンドユーザー教育は不可欠だ。災害復旧などの機能が想定通りに働くかどうかを確認する作業も必要になる。こうした作業はBitLockerを選択した場合でも必要になるが、Windowsの標準機能であるBitLockerの場合、負担はやや軽減できる。
ユーザー企業がBitLockerの代替製品を選択するのは、その代替製品がBitLockerにない決定的に重大な機能を備えている場合だろう。MicrosoftがWindowsの機能群に変更を加えるペースは極めて遅く、Windowsの標準機能であるBitLockerも例外ではない。機能追加のスピードが比較的速いサードパーティー製品を検討する余地はそこに生まれる。
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