クラウドDBの暗号化技術も進化
【製品動向】処理高速化や導入負荷軽減が進む「データベース暗号化製品」
企業情報システムの要であるデータをサイバー攻撃から守るのが「データベース暗号化製品」である。本稿はデータベース暗号化製品の機能トレンドや今後の方向性などをまとめた。
データベースのオブジェクト全体や表単位、カラム(列)単位で暗号化する「データベース暗号化製品」。最近のデータベース暗号化製品は、パフォーマンスへの影響や導入時の負担を軽減する機能強化が急速に進む。
本稿は、データベースセキュリティに関する業界団体データベース・セキュリティ・コンソーシアム(DBSC)のデータベース暗号化WGリーダを務める高岡隆佳氏の話を基に、データベース暗号化製品を取り巻くトレンドを紹介する。
データベース暗号化製品の現状
まず、現在提供されているデータベース暗号化製品について整理しておこう。主要なデータベース暗号化製品を見ると、データベース管理システム(DBMS)の標準機能、有償オプション、サードパーティー製品に大きく分けることができる。DBMSの標準機能や有償オプションとして提供されるデータベース暗号化は、当然ながら対象のDBMSのみで利用可能である。一方のサードパーティー製品には、複数ベンダーのDBMSで利用できる製品が多い。
DBMSの標準機能としてデータベース暗号化機能を搭載するのは、日本オラクルの「Oracle Database」や日本マイクロソフトの「Microsoft SQL Server」、日本アイ・ビー・エム(日本IBM)の「IBM DB2」などだ。日本オラクルは、データベース暗号化に加えてネットワーク暗号化や認証機能などを備えた有償オプション「Oracle Advanced Security」も販売する。
サードパーティー製のデータベース暗号化製品の提供形式はソフトウェアとアプライアンスがある。アプライアンス製品の場合、暗号鍵の生成や管理用に対タンパ性を備える専用ハードウェア「HSM(Hardware Security Module)」を用意することが多い。ソフトウェアとして提供される製品には、医療業界で導入が進むソフトベンチャーの「eCipherGate」、1データベースサーバ当たり30万円程度からと低価格がウリのワールドスカイの「D'Amo」などがある。アプライアンスとして提供される製品は、日本セーフネットの「SafeNet DataSecure」やタレスジャパンの「Thales nShield」などだ。
※訂正履歴:掲載当初、サードパーティ製品としてEMCジャパンの「RSA Database Security Manager」を紹介していましたが、販売が終了しており後継製品もないため、削除いたしました。本稿は修正済みです。(2012/5/30 19:55)
データベース製品機能の機能向上のトレンド
従来のデータベース暗号化製品には、システムのパフォーマンスが低下したり、莫大な導入コストが掛かるといった課題があった。だが最近のデータベース暗号化製品はこうした課題を解決すべく機能強化が進んでいる。以下、主要な機能強化のトレンドを見ていこう。
トレンド1:専用ハードウェア処理で高速化
データベース暗号化の課題として指摘されることが多いのが、データベースのデータ検索時に発生する遅延である。例えば表(テーブル)全体をスキャンするフルテーブルスキャンを実行するとき、「検索キーが暗号化されたカラムにヒットする場合、暗号化されたデータベースにレコードが100万件あれば、100万件のレコードを全て復号しながら検索するため、ハードウェアに大きな負荷が掛かる」
※訂正履歴:遅延が発生する条件を明確にするため、文中に「例えば表(テーブル)全体をスキャンするフルテーブルスキャンを実行するとき」「検索キーが暗号化されたカラムにヒットする場合」という説明を加えました。本稿は修正済みです。(2012/5/31 12:20)
最近は、データベースの暗号化や復号処理を専用ハードウェアで実行することで、パフォーマンス低下を防ぐ製品が増えている。例えばAESについては、暗号化や復号処理をハードウェアで直接実行するプロセッサ向け命令セット「AES-NI」を利用することで、処理を高速化する製品がある。またHSMなどの暗号化や復号専用のハードウェアを用意することで、データベースサーバへの負荷軽減を図った製品も提供されている。
トレンド2:オンライン暗号化でシステム停止を防ぐ
製品導入に伴うシステム停止も課題の1つだ。特にオンライントランザクションシステムなど常時稼働が不可欠なシステムの場合、導入から暗号化終了までシステムを停止しなければならない従来型データベース暗号化製品の場合、導入が難しい場合が多かった。
現在のデータベース暗号化製品は、データベースサーバに対する通常の処理を受け付けつつ、同時並行で暗号化や暗号鍵の更新などを実行する製品が主流になっている。さらに、初期設定においてもシステム停止を伴わないのが一般的だ。
※訂正履歴:掲載当初、「初期設定時には一時的にデータベースサーバへのアクセスを停止させる必要はあるものの、トータルの停止時間は1分程度で済む」としていましたが、最近のデータベース暗号化製品の多くは無停止での導入が可能であるため、「さらに、初期設定においてもシステム停止を伴わないのが一般的だ」に修正いたしました。本稿は修正済みです。(2012/5/31 12:20)
トレンド3:アプリケーションの修正なしで導入可能
従来のデータベース暗号化製品はアプリケーションに暗号化機能を盛り込むため、アプリケーションのコード修正が必要な場合が多かった。最近のほとんどのデータベース暗号化製品は、暗号化処理をデータベースサーバや専用サーバで実行することでアプリケーションの改修を不要にした「透過的暗号化」を採用しており、導入時のハードルは下がっている。
厳密にはデータベース暗号化ではないが、データの一部を乱数化して意味のない数列(トークン)に変換する「トークナイゼーション製品」もある。例えば、PCI DSSにおいてはトークン化されたデータは機密情報扱いではなくなるため、PCI DSS準拠を進める企業にとってはセキュリティ対策コストを抑制することができる。データ自体を変化させるために復号処理の必要がなく、システムの改修や負荷も最小限に抑えることができる。
今後の方向性:クラウド/オンプレミスDBの統合暗号化へ
「Microsoft SQL Azure Database」や「Amazon Relational Database Service(Amazon RDS)」など、DBMSをクラウドサービスとして提供する動きが加速している。「クラウドデータベースとオンプレミスのデータベースの混在環境において、データをどのようにして統合的に保護するかが今後の課題となる」と高岡氏は指摘する。
クラウドデータベースの暗号化機能の提供状況は、「クラウドサービス事業者に依存」するのが現状だ。技術開発という観点では、NTTが2012年2月、暗号鍵をクラウドで管理し、復号をクラウドで安全に実行する「クラウド鍵管理型暗号方式」という暗号方式を発表するなど、クラウド環境での暗号化技術は急速に充実しつつある。今後は、クラウドとオンプレミスのDBMSの暗号鍵管理を統合管理する製品やサービスが充実するだろうと高岡氏は見る。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
4
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
5
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
6
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
7
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
8
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
9
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
10
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー