Googleのサービス利用中止は困難
Googleのプライバシーポリシー変更が企業に及ぼす影響は?
物議を醸したGoogleが発表したプライバシーポリシーの変更。企業としては、この問題をどう捉えるべきか。影響はないのか、それとも何らかの対策を講じるべきなのか?
米Googleの新しいプライバシーポリシーに対する反応は、称賛から憤りまで多岐にわたる。一歩前進だと評価する声もあれば、法に触れるかもしれないとの見方もある。ほとんどの企業は、直接的なエンタープライズ向け製品の利用あるいは従業員によるコンシューマー向け製品の利用を通じ、何らかの形でGoogleのサービスを使っている。従って、セキュリティポリシーの担当者は誇張や過剰反応に惑わされることなく、今回の変更が実際のところ自社にどのような影響をもたらすのかを見極める必要がある。
簡単に言うと、Googleは製品ごとに別々に定めていたプライバシーポリシーを、全製品を網羅する1つのポリシーに置き換えた。新しいポリシーは短くなり、理解しやすくなった。Googleがどんな情報を収集していてなぜ収集するのか、その情報をどう利用するのか、どのように情報にアクセスし、更新するのかについて説明している。
だが実際には、同社のプライバシーガイドラインの中核部分は変わっていない。Googleは個人情報を外部に売り渡したり共有したりはしないが、ユーザー情報は同社の製品間で横断的に共有する。つまり、GoogleはYouTube、Gmail、検索エンジンといったサービスから収集したユーザー情報を組み合わせ、ユーザーごとに統合された単一のプロファイルを作成する。
透明性を保ちながらこれほど多くの異なる製品の間で文言を単純化し、ポリシーを調整したことは、たとえそれがGoogleの都合によるものだとしても、称賛に値する。別々のサービスのデータを集約することにより、Googleはユーザーに配信する広告のターゲットをさらに絞り込み、収益増大につなげることが可能になる。だが多くの人に警戒心を抱かせたのは、こうした形のデータの集約にある。複数の情報源からの情報を組み合わせれば、Googleが包括的かつ詳細なユーザーの個人プロファイルを作成できる能力は増し、ユーザーの匿名性は薄まる。
しかしエンタープライズの観点からみると、Googleが収集する情報が変更前より増えたわけではない。法人顧客との契約は、新しいプライバシーポリシーの導入後も変わっていない。Googleユーザーは個人用と仕事用とで別々のアカウントを持つべきだが、これはいずれにしても会社のポリシーで定めるべきことだ。もしそうなっていない場合、仕事用と個人用のアカウントを切り離すことの重要性を従業員に伝える好機としてプライバシーポリシーの変更を利用できる。
それでもプライバシーに関して不安があるという企業にはさまざまな選択肢がある。例えば、モバイル端末のGPS機能を有効にする「Googleモバイル」のような特定サービスの利用を禁止したり、検索のようなサービスを使う場合にGoogleアカウントからログアウトすることを従業員に義務付け、Googleが検索用語とビジネスユーザーアカウントを関連付けられないようにすることが可能だ。Googleのログアウト機能がこれまでのバージョンの同社製品に比べて大幅にパワーアップしたことも注目に値する。ユーザーがログアウトすると、同じクライアントマシン上にある全てのGoogleサービスで、そのユーザーのアカウントがログアウト状態になる。
新しいプライバシーポリシーによって検索結果の表示が高速化され、適合性も向上すれば、従業員の効率性は増すはずだ。ただしサードパーティーのサービスに依存することは常にリスクを伴う。サービス事業者が破綻したり、値上げしたり、利用条件を変更してくるかもしれない。事業継続計画ではこうした不測の事態を全て網羅しなければならない。どのようなサードパーティー事業者であれ、企業はそれにかかわるリスクを認識し、品質保証契約(SLA)には必要なセキュリティ対策と損害賠償責任を確実に盛り込んでおきたい。
企業は経費節減と生産性向上の目的でGoogle Appsのようなクラウドベースサービスを利用している。今回のプライバシーポリシー変更によってサービスが向上し、企業にとってのメリットがリスクを上回ることをGoogleが示せれば、企業は今後もGoogle製品を使い続けるだろう。従業員の匿名性をめぐり不安を感じている企業は既にGoogle製品を広範に使わない方針を打ち出しているだろうし、ユーザーが新しいポリシーを気に入らなければいつでもGoogleのサービス利用を中止できる。ただしGoogleのユビキタス性故に困難を伴うかもしれないが。ログインしていないユーザーのデータは9カ月相当分を保持し、ログインしたユーザーのデータはユーザーが自分で削除するか、アカウントを閉鎖するまで保持するとGoogleが明言している以上、仕事でGoogleを使うユーザーは、最低でもログインせずに匿名で同社のサービスを使うべきかもしれない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
4
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
5
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
6
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
7
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
8
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
9
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
10
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー