Google Appsは補完的な位置付け?【後編】
Google Appsが向かない企業、それでも「クラウドに移行したい」なら
Google Appsは今のところ企業にとって万全なサービスとはいえず、当然導入には向かない企業もある。それでもクラウドに移行したいと考える企業に、ある事例を紹介する。
前編「Google Appsは法人市場で大成功を収められるか」では、Google Appsが企業でどのように利用されているかを見ることで、Google Appsが導入される理由を探った。後編ではGoogle Apps導入に向かない企業を整理するとともに、そうした企業の中でも「クラウドコンピューティングに移行したい」と考える企業のために、1つの事例を紹介したい。
Google Appsを必要としない企業とは
米GartnerのGoogle担当主席アナリストを務めるホイット・アンドリュー氏は、「CIOはGoogle Appsを検討しないわけにはいかない」と話す。同氏によると「Google Appsは、多くのユーザーにとって十分使えるメールおよび文書作成ソリューションであるため、組織で採用されるケースが増えてきている」という。
ここで、“十分使える”とはどういうことかを明確にしておこう。Google Appsのエンタープライズ版は、従来のOfficeアプリケーションの多くを必要とする従業員にとっては有用性が低い。また、Officeベースで多数の重要なビジネスプロセス管理(BPM)アプリケーションを作成している企業や、SharePointを広範にわたって使用している企業にも適していないと、アンドリュー氏は言う。
さらに、Forrester Researchのシャドラー氏によると、データの保存場所を把握しておく必要のあるグローバル企業、クラウドインフラストラクチャの利用経験がない企業、多数の事業所で信頼できる大域幅を確保できない企業も、クラウドベースのメッセージング/コラボレーションは適していないという。
「“完全に乗り換えて、全ユーザーをこれに移行する”という姿勢が取られることはない」とアナリストは口をそろえる。アンドリュー氏は「Google Appsは、代替ソリューションというよりも、補完ソリューションとして使われるケースが圧倒的に多い」と指摘する。実際、ITシステムの場合は、そのような抜本的な変更が行われることはほとんどない。「最近は、写真をFlickerにも保存するけれどHDDも引き続き使用しているのと同じで、Microsoft Officeを放棄してお払い箱にすることはないだろう」(アンドリュー氏)
最初に決断すべきは「クラウドへ移行するかどうか」
Googleのパートナーであり、クラウドへ移行する組織にコンサルティングサービスを提供する米MavenWave Partnersのジェイソン・リー氏によると、ほとんどの企業では、Google Appsへの移行を検討するきっかけは“純粋にコストのため”だという。しかし、リー氏は、「企業が最初に決定しなければならないことは、オンプレミスベースのソフトウェアを使い続けるか、クラウドソリューションへ移行するかだ」というForrester Researchのシャドラー氏の意見を支持している。
MavenWave Partnersのクライアントである米メディア会社のJournal Communicationsは、まさにこの意見に従っている。同社では、MicrosoftのEnterprise Agreement(EA:エンタープライズアグリーメント)の更新時期が近づいていた。また、Exchangeの複数のバージョンの実装を17も含む、多様性に富んだ複数のITインフラストラクチャが運用されていた。そこで、「変化を促す」ために、新CIOとしてマイケル・オブライエン氏が招聘されたとリー氏は話す。
以前、新興企業のCIOを務めているオブライエン氏は、クラウドコンピューティングに心酔しており、Journal Communicationsの業務を可能な限りクラウドに移行することを目標に掲げた。その結果、同社はMicrosoftのEAを保持していたにもかかわらず、Google Appsに移行する方向で取り組みを進めることになった。2012年までに、Journal Communicationsの2万7000人に上る全従業員のGoogle Appsへの移行が完了する予定であり、その時点で、「(同社を支えている)ExchangeやSharePointを取り巻く数百台のサーバは、撤去される必要がある」と、オブライエン氏は最近のブログに記している。「これは大きなビジネスの変化だが、当初、懐疑的な態度をとっていた人の協力も得られるようになった」(同氏)
基本的に多くの企業のIT部門はオブライエン氏と同じような見方をするだろうと考えているMavenWave Partnersのリー氏は、クラウドコンピューティングを検討している企業が、Googleへの移行を決めるのは難しいことではないと確信している。「話し合いを重ねなくても、このような基本のコラボレーションテクノロジーは、内部的なIT資産の投資先として恐らく最適ではないとCIOは気付くはずだ」(オブライエン氏)
課題は、オブライエン氏やLincoln Propertyのケニー氏が示唆するように“大きなビジネスの変化”にどう対応するかと、それを見つけるための洞察力を持てるかどうかだ。
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