認証管理とアプリ配信機能で安全性を確保
ハイブリッドクラウドのセキュリティと利便性を高める「IDaaS」とは
クラウドとオンプレミスを組み合わせたハイブリッドクラウド。その利便性を維持しつつ安全性を高める手段が、認証機能やアプリ配信機能を持つ「IDaaS」だ。その現状を解説する。
ITのコンシューマー化とクラウドの出現に伴い、エンドユーザーに対するコントロールをいかに維持するかが今日のIT部門の最大の課題の1つになった。認証管理とアプリケーション配信に対する新たな手法が登場したことで、IT管理者はある程度負担を軽減できそうだ。
「Identity as a Service(IDaaS)」(サービスとしての認証管理)プラットフォームは、レガシーアプリケーションとWebアプリケーションをセキュアなポータルからエンドユーザーへ配信する。一方でIT部門には、従業員ごとにアクセス可能な社内リソースを制限する手段を提供する。
「認証管理とアプリケーション配信の組み合わせは、IT管理の新たな時代の到来を予感させる」と指摘するITプロフェッショナルもいる。
米Gartnerは、2013年までに認証アクセス管理製品の5分の1はクラウドサービスとして導入されると予想する。ただし、同社で認証サービスの調査を担当するグレッグ・クライツマン副社長によると、IDaaSは登場したばかりであり、現時点では企業の将来的な総合戦略の一環として位置付けておくのが無難だという。
「大企業では、レガシーアプリケーションとレガシーインフラが存在するため、当分の間はオンプレミス(社内運用)とクラウドのハイブリッド方式になるだろう」とクライツマン氏は話す。
OktaのIDaaS
今後2~3年でクラウドを主体としたインフラへの移行を予定する企業の1社として、米ネットワークインフラ企業のEnterasys Networksがある。
EnterasysでITアプリケーションを担当するディレクターのベンジャミン・ドイル氏によると、同社のITインフラの主要部分は既に、米salesforce.comや人事・給与管理企業である米Automatic Data Processing(ADP)が運営するクラウドに置かれているという。
従業員がいつでもどこでもアプリケーションに安全かつ容易にアクセスできるようにするため、ドイル氏は米OktaのIDaaSである「Okta」を導入した。
ユーザーはWebブラウザを使ってOktaのポータルにアクセスする。ログインにはActive DirectoryのID/パスワードを利用する。エンドユーザーごとにアクセスできるリソースを制限することも可能だ。
米バイオ医薬品企業のAMAG Pharmaceuticalsも、認証管理とアプリケーション管理にOktaを利用している。「当社のアプリケーションの大半が既にWebベースになっていることが、IDaaSの導入を後押しした」と執行ディレクターのネイト・マクブライド氏は説明する。
業界アナリストによると、OktaはWeb化されていないレガシーアプリケーションをサポートしていないため、大企業には不向きかもしれない。一方、中堅・中小企業には理想的なサービスだという。
大企業向けのIDaaS
英ITソリューションプロバイダーのSpecialist Distribution Group(SDG)は、英Centrix Softwareの「WorkSpace Universal」を採用した。WorkSpace Universalは、同一のユーザーポータルからオフプレミス(社外運用)型クラウドアプリケーションとオンプレミス型レガシーアプリケーションの双方を利用可能にする、大企業向け製品だ。
SDGでクラウドソリューション/サービスディレクターを務めるダン・カーター氏によると、スクラッチ開発をしなくても、クラウドアプリケーションとレガシーのエンタープライズアプリケーションの双方にアクセス可能になることが、WorkSpace Universalを選択する決め手になったという。
「IT部門にとっての課題は、インフラの一元化とセキュリティの確保だ」とカーター氏は話す。「世界各国のユーザーはさまざまな端末を持ち、常にあらゆる情報にアクセスすることを望んでいる。WorkSpace Universalを使えば、1つのポータルから自分のデスクトップ環境にアクセスできる」
ユーザーは複数のデスクトップウィンドウの間を行き来しなくても、WebブラウザのタブからOktaやWorkSpace Universalを利用できる。
同様のシステムを提供している企業は他にもある。米Citrix Systemsは、「Citrix Receiver」「Citrix CloudGateway」「Citrix CloudPortal」を組み合わせたシステムを提案。米VMwareは「VMware Horizon Application Manager」を発表済みだ。新興企業の米Nukona(米Symantecが買収)は、エンタープライズアプリケーションの配信管理製品を販売。インストーラ「InstallShield」で有名な米Flexera SoftwareもSCCM Expertの買収を機に、このニッチ市場に参入した。
IDaaSには、その他にも「Secure Access」や「Identropy」「PasswordBank」「Simplify」といった選択肢も存在する。各社の製品はいずれも、従業員にとってなじみのある環境を提供しており、米AppleのApp Storeと同様の感覚でエンタープライズアプリケーションを選択できる。
IDaaSで懸念される唯一の問題が可用性だ。ユーザー企業が利用するIDaaSがダウンした場合、企業の業務全体に支障が生じる恐れがある。SLA(Service Level Agreement:サービスレベル契約)は、そうしたリスクを減らすのに有効だ。
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