複数元帳対応の「Oracle E-Business Suite」選定
【事例】トップダウンで始まった楽天銀行のIFRS対応、会計システム刷新を追う
インターネット専業銀行の楽天銀行がIFRS対応のために会計システムを刷新した。導入期間は1年間。製品選定や要件定義、テスト工程を楽天銀行の担当者が説明する。
トップダウンでIFRS適用を決定
楽天グループのインターネット専業銀行、楽天銀行が会計システムを刷新した。刷新の狙いは楽天グループ全体のIFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)対応だ。導入期間はこの規模のシステム開発では短期間となる1年だった。限られた期間と高い要求水準の中で、楽天銀行はどう会計システムを選定し、どう導入したのか。プロジェクトの担当者が説明する。
楽天グループ自体はIFRSの適用時期を明確にしていないが、「トップダウンで(楽天 代表取締役会長兼社長の)三木谷が任意適用をやるぞと言っている」(楽天 経理部 部長の大塚年比古氏)。既に楽天グループ全体でIFRS適用プロジェクトが始まっているという。金融機関の楽天銀行はIFRSを適用するための課題が多く、先に取り組むことにした。大塚氏は楽天グループ全体のIFRS適用プロジェクトにも参加している。
「楽天が海外進出するに当たって、資金調達やM&Aの株式交換などが増え、われわれの財務諸表を海外投資家に見てもらうことが多くなる。その場合、IFRSの方が企業グループの実態をより明確に見てもらえる」
IFRS適用に当たって刷新、導入したのは楽天銀行の主に3つのシステムだ。1つはバックエンドの勘定系システム、IFRSの金融商品会計に対応した新日鉄ソリューションズのパッケージ「BancMeasure for IFRS」、そして会計システムだ。新しい会計システムは日本オラクルのERPパッケージ「Oracle E-Business Suite」(Oracle EBS)の一般会計モジュールと、Oracle EBSのフロントエンドとなる電通国際情報サービス(ISID)の「σ-FORCE」(シグマフォース)で主に構成する。新会計システムの導入はISIDが支援した。
アドオン開発は極力避ける
新会計システムの選定は2010年夏に開始した。システム導入期間は2011年の1年間と決まっていたため、「追加開発、アドオンを極力避ける」(楽天銀行 財務本部 経理部長 兼 企画本部 経営企画部長 和田博志氏)ことが基本方針。実際は多少のアドオン開発が発生したが、選定時には「そのソリューションの標準機能が必要な機能を持っているかどうか」を考慮した。新会計システムに合わせるよう業務プロセスも変更した。
総勘定元帳を会計基準ごとに複数持てることも会計システム選定の条件だった。会計システムのIFRS対応では、日本の会計基準に対応した1つの総勘定元帳をベースに、修正仕訳などでIFRSの財務諸表を作成する方法もある。しかし、その分だけ決算期に処理工程が発生するのは確実で「開示スケジュールに間に合わない」(和田氏)。そのため楽天銀行は、複数会計基準の仕訳を同時に記帳できる複数元帳に対応していることを新会計システムの必須条件と考えた。その他に管理会計機能なども重視した。
楽天銀行の新会計システム導入に関しては8社が製品を提案した。上記の選定条件を以下の6項目に整理し、RFI(Request for information)や集中ヒアリングなど2段階で選定した。
- 共通機能
- 制度会計機能
- 管理会計機能
- 支払い管理機能
- 固定資産機能
- 追加開発内容
選定では1年間という短期開発を考慮し、別システムとの連携のしやすさ、平残計算など金融機関特有の処理への対応なども検討し、数社に絞り込んだ。最終的にはISIDが提案したOracle EBSとσ-FORCEに決めた。
Oracle EBSを選んだ理由は、複数の総勘定元帳、複数の会計基準に対応していることに加えて、配賦などの管理会計機能が充実していたからだ。σ-FORCEは操作性の良いユーザーインタフェースや帳票作成の自由度の高さを評価した。
会計システムのIFRS対応についての連載インデックス
テストの繰り返しで品質を向上
実際のシステム開発は2011年1月に始めた。要件定義では日本基準とIFRSの共通マスター項目を設定。「最大公約数的な勘定科目マスターを持たせた」(和田氏)。これによって勘定科目マスターのメンテナンスの負荷を下げる狙いがあった。
2011年5月から行ったテストでは、システム機能テスト、他システムとの連携も含めた稼働テスト、ユーザーによる最終稼働テストと3段階で実施した。最終稼働テストでは、実際のデータを上流システムに入れて新会計システムが正しい処理をするかをチェックした。「テスト、検証、修正、再テストというプロセスを延々と繰り返した」(和田氏)。リリース直前まで帳票内容や操作性の修正を続けたという。
結果的に新会計システムはスケジュール通りに導入でき、2012年1月に稼働した。1月から3月までは旧システムと並行稼働させて、新旧システムのマスターデータをマッピングし、データを移行させた。従来、Microsoft Excelを使っていた管理会計機能も新会計システムに移行できた。2012年4月からは新会計システムのみを利用している。ただ、4月は経理部員がまだσ-FORCEの操作に完全に慣れておらず、月次決算の処理に時間がかかってしまった。5月は旧システムによる月次決算処理と比較して早く終わらせることができた。和田氏は「本当は稼働開始の1カ月くらい前までに操作の確認をすべきだった」と話した。
大塚氏は1年間のプロジェクトを振り返り、「切り替えるシステム、関与するベンダーが多く、会計上の論点もあることから、プロジェクトマネジメントでのコミュニケーションには気を遣った」と話した。全体の定例会議を週に1回開催し、プロジェクトにかかわる楽天銀行のメンバーや、ベンダーのメンバー間で見落としや認識の違いがないかをチェックした。「非常にチャレンジングだったが何とか走り抜けることができた」
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