クラウドとオンプレミスの認証連携も可能に
【製品動向】「付せんでID管理」を一掃するシングルサインオン(SSO)
一度の認証で複数のシステムにログイン可能にする「シングルサインオン(SSO)」製品。クラウドの普及であらためて注目が集まるSSO製品の動向を解説する。
企業が直面するセキュリティ課題の1つが、管理すべきID・パスワードの急速な増加だ。「クラウドの普及やスマートフォンの登場による端末の多様化で、ID・パスワードの数が急増している。従業員が複数のID・パスワードを安全に管理するのはもう限界だ」。ガートナー ジャパンのセキュリティ担当リサーチディレクターである石橋正彦氏はこう話し、従業員任せのID・パスワード管理に苦言を呈する。
従業員がID・パスワードを管理しきれなくなるとどうなるか。クライアントPCのディスプレーに、ID・パスワードを書いた付せんを貼り付けるなど、セキュリティ上問題のある運用が常態化しかねないだろう。こうした事態を防ぐ有力な手段の1つが、1組のIDとパスワードで複数のシステムにログイン可能にする「シングルサインオン(SSO)」製品である。従業員に複数のID・パスワードを管理させる必要がなくなるため、利便性と安全性が同時に高められる。
本稿は、今あらためて注目すべきSSO製品の現状や動向を解説する。
製品種類:「WAM」と「IDフェデレーション」が主流
大手企業を中心に導入が進むSSO製品。石橋氏によると、2005年の個人情報保護法施行や2009年の内部統制報告制度(J-SOX)開始などを機に、SSO製品の導入機運が高まったという。クラウドの企業利用が本格化した現在、クラウドとオンプレミスの認証連携のニーズの高まりから、あらためてSSO製品に注目が集まりつつある。以下、SSO製品の現状を種類別に見ていこう。
Webアクセスマネジメント(WAM)
一般的にSSO製品というと、1回の認証で複数のWebアプリケーションを利用可能にする「Webアクセスマネジメント(WAM)」製品を指す。WAMは、オンプレミスのWebアプリケーションを対象としたSSO製品だ。製品構成によって「エージェント型」「リバースプロキシ型」の2種類がある。
エージェント型では、認証対象としたいWebアプリケーションのサーバに認証用のエージェントソフトウェアを導入。エージェントが認証サーバとやりとりしてユーザーを認証する。リバースプロキシ型では、エージェントではなくプロキシサーバを設置。プロキシサーバが複数のWebアプリケーションのユーザー認証を一括して処理する仕組みだ。
エージェント型とリバースプロキシ型には、それぞれ利点と課題がある。エージェント型は、特定のサーバやシステムに処理負荷が集中しないというメリットがあるが、認証対象としたいWebアプリケーションのサーバにエージェントを導入する手間がかかる。リバースプロキシ型は、エージェント導入の負荷はないものの、プロキシサーバに処理負荷が集中するという課題がある。
この他、クライアント/サーバ型のアプリケーションのシングルサインオンも可能にする「自動代行入力型」の製品もある。エンドユーザーのクライアント端末にデスクトップ監視用のエージェントを導入。アプリケーションのログインフォームに自動でIDとパスワードを入力する。
IDフェデレーション
前述の通り、WAMは、オンプレミスのWebアプリケーションを対象としたSSOに焦点を当てている。それに対して、オンプレミスだけでなく、クラウドサービスも含めたSSOを実現するのが「IDフェデレーション」製品である。IDフェデレーション製品は、オンプレミスの認証サーバと、クラウドサービス事業者などが運営する認証サーバとの間で認証情報をやりとりする機能を持つ。
多くのIDフェデレーション製品が採用する認証連携技術は、認証情報などのセキュリティ情報をXMLを利用してやりとりする「Security Assertion Markup Language(SAML)」である。SAMLは、XML関連の標準化団体「OASIS」が2002年11月に策定した標準技術だ。
IDフェデレーション製品の多くは、WAM製品の有償オプションや関連製品として提供されている。
製品動向:周辺機能や製品の提供形態に変化
SSO製品の機能は、「ここ数年で大きな変化があるわけではない」と石橋氏は指摘する。一方、製品の周辺製品・機能や提供形態には幾つかの動きがある。
動向1:モバイル対応やリスクベース認証
SSOのセキュリティ機能を強化するため、製品機能や周辺製品が充実しつつあるのが最近の動向だ。スマートフォンやタブレットからSSOを利用する際の端末認証機能を備える動きがその1つ。許可された端末のみログインを許可することで、安全性を高める。例えば、私物端末からはSSOを利用できないようにするなどの制御ができる。
SSO製品の機能ではないが、SSOの安全性強化に役立つのが「リスクベース認証」製品だ。リスクベース認証は、ユーザーの挙動などから不正アクセスの可能性が高いと判断すると、認証方法を動的に変更する。例えば、国内のIPアドレスを持つ端末でID・パスワードで通常の認証が通った数分後に、遠く離れた海外のIPアドレスの端末でログインしようとすると追加の認証を要求する、といった具合だ。
動向2:OSSツールが充実
業務利用に耐えるオープンソースソフトウェア(OSS)のSSOツールの充実も見逃せない動向の1つだ。OSSをベースとした商用製品やサービスを提供するシステムインテグレーターも多い。
OSSのSSOツールの1つが「OpenAM」である。OpenAMは、旧米Sun Microsystemsが開発していたJavaベースのSSO製品「Sun Java System Access Manager」「Sun Java System Federation Manager」のソースコードをベースに開発された。オージス総研は、OpenAMをベースとしたSSO製品「ThemiStruct-Web Access Management」を販売。野村総合研究所も同様のSSO製品である「OpenStandia/SSO&IDM」を提供している。
サイオステクノロジーが開発したOSSのSSOツールが「GHeimdall」である。GHeimdallは、ユーザー企業の社内認証システムと連携し、米Googleの「Google Apps」へのSSOを実現する(Google Apps向け認証製品については「クラウド移行の不安を解決するGoogle Apps拡張セキュリティ製品」も参照)。サイオステクノロジーは、GHeimdallを利用した商用SSOサービスも提供している。
OSSのSSOツールは導入コストを抑えることができるのが利点だ。ただし、SSOの構築には「SSO製品の価格よりも、システム構築やカスタマイズに掛かる人件費の方が高くなる」ことに注意が必要だと石橋氏は指摘する。
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