OpenFlowに本気な国産、様子見の外資
【市場動向】「OpenFlow=SDN」ではない? ベンダー各社のSDN戦略
ネットワークベンダーは、SDNにどう取り組んでいるのか。現状を見ると、有力技術とされるOpenFlowを推進するベンダーばかりではない。SDNに対する各社の姿勢を整理する。
Software Defined Network(SDN)に対するネットワークベンダーの取り組みが活発化している。SDNの要素技術として「OpenFlow」が有力視されてはいるが、業界全体がOpenFlow一辺倒になっているわけではない。各ベンダーの思惑の違いが、SDNへの姿勢に変化を生じさせている。
ベンダーのSDN戦略はどう違うのか。それぞれの戦略がユーザー企業にもたらす利点や課題は何か。ガートナー ジャパンでネットワーク分野のリサーチ ディレクターを務める池田武史氏に聞いた。
SDNベンダー間の動き
現在、さまざまなベンダーがSDN関連の製品戦略を発表したり、具体的な製品の市場投入を図っている。池田氏は、こうした動きを見据えつつ、各ベンダーのSDNに対する姿勢を分類すると、「OpenFlow推進派」「VXLAN推進派」「SDN様子見派」の3つになると指摘する(図)。以下、それぞれについて見ていこう。
OpenFlow推進派:戦略は明確、製品は未熟
OpenFlowに積極的な姿勢を見せるのは、国内ベンダーだ。特に世界初の商用OpenFlow製品「UNIVERGE PFシリーズ」を販売したNECや、NTTデータなどは、SDNの取り組みに対する本気度が高いと池田氏は語る。
OpenFlow支持に「腹をくくっている」と池田氏が指摘するNECは、取り組みをさらに加速しようとしている。NECが2012年9月に発表した、Windows Server 2012のHyper-V仮想スイッチをOpenFlowに対応させる拡張ソフトウェア「UNIVERGE PF1000」(2012年11月提供開始)は、その現れの1つだ。日本通運や金沢大学付属病院が導入するなど、導入事例も着々と増やしている。
OpenFlow推進派ベンダーは、SDNを実現する技術としてOpenFlowを明確に位置付けている。具体的な製品も発売、発表済みで、導入の具体的なイメージを抱きやすい。前述の通り、NECのOpenFlow製品については導入事例が増えつつあるのもプラスだ。
ただし、OpenFlow製品は「現時点では成熟度が低く、リスクがあることを理解した上で導入することが不可欠」だと池田氏は指摘する。ガートナーは、OpenFlowを現時点で「黎明期」の技術と位置付ける。ユーザー企業の3~4割が導入し、当たり前の選択肢になるほどOpenFlow製品が普及するまでには「5~10年はかかるだろう」と池田氏は見る。現在市販されているOpenFlow製品は、ほとんどがOpenFlowの初期バージョンであるバージョン1.0がベースだ。最新のバージョン1.3に準拠した製品の登場は「2013年初頭になる」と見込む。
また、現状では、ホップバイホップ型とオーバーレイ型といった製品タイプによる性能面や運用面での差異が明確ではないという(ホップバイホップ型とオーバーレイ型の違いは「失敗しない“第1世代”OpenFlow製品の選び方」を参照)。物理的なOpenFlowスイッチが不要なオーバーレイ型は、専用スイッチが必要なホップバイホップ型と比べて手軽に導入でき、スモールスタートが可能であるとも考えられる。だが、「特に国内ではオーバーレイ型OpenFlow製品の導入事例はほとんど公になっておらず、効果は未知数」なのが現状だ。
VXLAN推進派:既存技術を有効活用、戦略には不安定さも
もう1つの動きは、米Cisco Systemsや米VMwareを中心とした「VXLAN(Virtual extensible LAN)」の推進である。VXLANは、レイヤー2ネットワークを論理分割できるなど、OpenFlowと同様のメリットの一部を実現する(参考:【技術解説】VLANの限界を打ち破る「仮想ネットワーク」技術)。池田氏は、VXLANをOpenFlowの有力な対抗軸の1つとして指摘する。
VXLANに加え、CiscoやVMwareが提供する既存の技術を活用すれば、「無理にOpenFlowベースのSDNに移行する必要はない」と池田氏は指摘する。自動プロビジョニングをはじめとするネットワークの柔軟性を高める機能は、既にCisco製品やVMware製品で「ある程度実現できている」からだという。
気になるのは、この状況に変化を生じさせるかもしれない出来事が、最近相次いだことだ。Ciscoは2012年6月、自社のネットワーク機器向けOS「Cisco IOS」「IOS-XR」「NX-OS」のAPI公開を中心とした独自のSDN戦略「Cisco Open Network Environment(Cisco ONE)」を発表。一方のVMwareは2012年7月、OpenFlowベンダーである米Niciraの買収を発表している(参考:VMwareがOpenFlowベンダー買収、Ciscoはどうなる?)。
特にVMwareは、Nicira買収を機にOpenFlow推進にかじを切る可能性があるだけでなく、Ciscoとネットワーク分野で競合になるのではという見方もある。現状、CiscoとVMwareの両者は、互いに従来の関係に変化はないと主張している。池田氏も、「VXLANを中心とした両者の協業姿勢は当面大きく変化しない」と見るが、今後の動きは「予測し難い」。
SDN様子見派:戦略は不明瞭、最適な技術が利用できる可能性
SDNへの取り組みを表明しつつも、具体的な製品戦略が見えないベンダーも多い。池田氏は、その例として、米IBMや米Hewlett-Packard、米Juniper Networks、米Brocadeといったベンダーを挙げる。
「SDN様子見派」であるこうしたベンダーの多くは、OpenFlow対応スイッチについては既に発売もしくは発表済みである。ただし、OpenFlowの中心要素であるOpenFlowコントローラーについては、明確な製品戦略を打ち出せていないところが多い。池田氏は、「SDNの潮流をうまく利用し、自社製品のアピールにつなげようとしているのが現状」だと分析する。
SDN様子見派の動きは、ベンダーによってさまざまだ。例えば、JuniperやBrocadeは、SDNの取り組みの中心にイーサネットファブリックを据える(イーサネットファブリックについては「【技術解説】ネットワークの設計や拡張を容易にする『ファブリック』」を参照)。
HPは、独自のネットワーク戦略の中核製品として、同社のネットワーク管理製品「HP Intelligent Management Center」のオプション「Virtual Application Networks(VAN)」を発表。アプリケーションごとに最適なネットワーク構成を自動設定できるようにする(参考:【トレンド解説】仮想化対応や障害分析の強化が進む「ネットワーク管理製品」)。
現状ではVXLAN推進派とみられるCiscoも、SDN様子見派に入る可能性があると池田氏は語る。Ciscoは、OpenFlow製品を発表したものの、あくまでも研究用途向けに限定。前述のCisco ONEも、独自技術のオープン化というアプローチであり、「SDNの動きに追従したというよりも、あくまでもCiscoの独自技術をベースとしたSDNに対する解」だという見方だ。幅広い技術を取り入れようとしている反面、どの技術に注力するのかが明確でなくなっている。
SDN様子見派の中には、OpenFlowを中心とした現状のSDNには課題があると考えるベンダーも多い。こうしたベンダーは、今後の技術革新や市場動向を踏まえて最適な技術を選択し、ユーザー企業に提供する可能性があると池田氏は見る。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[横河レンタ・リース株式会社] AIの全社活用が加速 トヨタ・コニック・プロに学ぶ「AI PC調達」の秘訣 -
製品資料
[横河レンタ・リース株式会社] 人材不足時代の「PC調達」ガイド:知っておきたいリースとレンタルの違い -
製品資料
[横河レンタ・リース株式会社] PC調達に「レンタル」を選ぶことのメリットは? リース・購入との違いも解説 -
技術文書・技術解説
[セコムトラストシステムズ株式会社] SCS評価制度時代の「SASE選定」ガイド -
比較資料
[セコムトラストシステムズ株式会社] なぜ「SASE選定は難しい」と言われるのか? 多くの人が陥る失敗パターンを解説
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
2
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
3
パッチなしで「今すぐサーバを落とせ」 Kiteworks異例警告の波紋
-
4
LINEヤフーはなぜ「社内の管理者」すら信用しないインフラを作ったのか
-
5
「企業におけるAI導入検討度とIT投資優先度」に関するアンケート
-
6
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
7
OpenAIやAnthropicでさえ制御不能 2026年夏「3大サイバー攻撃」の衝撃
-
8
「契約業務のAI活用」に関するアンケート
-
9
【基本情報技術者試験】メモリ不足でもアプリが動くのはなぜ? OSを支える「仮想記憶」
-
10
Copilot導入で陥る“目的化”の落とし穴 定着の鍵は「作り込まない」こと
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
2
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
-
3
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
4
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
5
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
6
プログラミング不要で誰でも実現できる、ネットワーク運用管理の自動化とは
-
7
Linux初心者でも知らないとまずい「RHEL」「SLES」の違いとは?
-
8
東大教授と考える、AI時代の「データ主権」「信頼性」「ガバナンス」の在り方
-
9
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
10
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー