OpenFlow/SDNで何が変わるか【前編】
【技術解説】OpenFlow/SDNの自在な経路制御を実現する技術
ネットワーク構築の次世代像として期待される「Software Defined Network(SDN)」。SDNと、その主要技術である「OpenFlow」について技術的な側面から解説する。
ソフトウェアでネットワークを定義する――。そんな夢物語を現実に変える概念が「Software Defined Network(SDN)」である。SDNを実現する中核技術である「OpenFlow」は、米Googleや米Facebookといったメジャーなインターネット企業が主体となって標準化に取り組んでいる。OpenFlowの商用製品を国内ベンダーが早期に発売するなど、話題には事欠かない。
SDN/OpenFlowは現状のネットワークにおける課題をどう解決するのか。本稿はSDNとOpenFlowの特徴や機能を技術的な側面から解説する。
経路制御とデータ伝送の仕組みを分けるSDN/OpenFlow
従来の仕組みに縛られない、新しい発想のネットワークアーキテクチャを検討する。そうした理念の下に進められているのが、米スタンフォード大学の「Clean Slate」プロジェクトだ。OpenFlowは、このClean Slateプロジェクトから誕生した。
SDNを推進する非営利団体であるOpen Networking Foundation(ONF)は、SDNの概念を実現する要素として以下の3つを規定している。
- データ伝送を担う「データプレーン」と経路制御を担う「コントロールプレーン」の分離
- ネットワークの情報や制御を論理的に集中
- ネットワークインフラをアプリケーションから抽象化
ONFは、こうしたSDNの概念を実現する仕組みとして、アプリケーションが属する「アプリケーション層」、経路制御を担う「コントロール層」、データ伝送を担う「インフラストラクチャ層」の3層アーキテクチャを定義(図1)。コントロール層とインフラストラクチャ層との間を結ぶ制御プロトコルとして有望視されているのがOpenFlowである。
SDNを実現するプロトコル「OpenFlow」
OpenFlowのネットワークは、経路制御機能を持つ「OpenFlowコントローラー」とデータ伝送機能に特化した「OpenFlowスイッチ」から構成される。OpenFlowプロトコルを利用し、OpenFlowコントローラーで複数のOpenFlowスイッチを集中制御する仕組みだ。
従来は複数のネットワーク機器に分散していた経路制御機能をOpenFlowコントローラーに集約することで、ネットワークの構成変更や管理を効率化する。また、1つの物理ネットワークに論理的なネットワークを複数構築することも可能だ。詳しくは後述するが、OpenFlowコントローラーはプログラムを追加することで独自機能を持たせることもできる。
OpenFlowが持つ4つのメリット
OpenFlowをうまく使えば、既存のネットワーク技術が抱える課題を解決できる。主要なメリットとして、「俊敏で柔軟な構成変更」「ネットワーク管理の簡略化」「リソースの有効活用」「容易な機能追加」の4点がある。以下、それぞれのメリットについて詳しく見ていこう。
メリット1:俊敏で柔軟な構成変更
一般的なネットワークの構成は、各ネットワーク機器を個別に設定することで1つのネットワークを構成しており、動的な変化を前提とした構成にはなっていない。
OpenFlowは、コントローラーが経路制御を一元的に担うことで、物理ネットワークを意識することなく、複数の論理ネットワークが構成できる(図2)。論理ネットワークごとに異なる機能やポリシーを割り当てたり、割り当てた機能やポリシーを動的に変化させるなど、柔軟なネットワーク制御が可能だ。
メリット2:ネットワーク管理の簡略化
現在のネットワークの課題の1つに、構成の複雑化や設定変更の困難さがある。構成や設定を変更するとなると、膨大な設定項目を変更するだけでなく、実機を使用した事前検証も必要になる。機器の数が膨大になれば、こうした作業負荷も増大する。
OpenFlowでは、機器の制御をOpenFlowコントローラーに集中させることで、複数のネットワーク機器の設定を一元管理できる。また、OpenFlowコントローラーに構成変更や機能追加のシミュレーション機能を持たせる動きもある。OpenFlowコントローラーが一元的に持つネットワークの経路情報や状態情報を利用してシミュレ―ションを実現する。シミュレーション機能は、実際の構成変更や機能追加前の挙動確認に役立つ。
メリット3:リソースの有効活用
サーバやストレージは仮想化技術の普及により、リソースのプール化やそれに伴うリソースの有効活用が可能になった。一方、ネットワークはこうした動きに十分追随できていないのが現状だ。アプリケーションやシステムに対する要求の変化に即応できるシステムインフラの構築に当たり、ネットワークがボトルネックになるケースも増えている。
OpenFlowは、OpenFlowコントローラーによる経路制御の一元管理によってネットワークリソースのプール化を実現する。ネットワーク機器の論理的な接続構成をOpenFlowコントローラーで自由に設定できるため、ネットワーク機器の機能や帯域などのリソースをサービスとして扱い、必要に応じて通信経路に組み込むことができる。OpenFlowスイッチだけでなく、ファイアウォールやロードバランサのようなアプライアンスのプール化も可能だ。
メリット4:容易な機能追加
従来のネットワーク機器の大半は、標準化された機能やベンダーが独自実装する機能しか利用できなかった。ユーザー企業が機能追加をベンダーに要求しても、即座に搭載されるわけではないし、そもそも搭載されない可能性もある。機能追加のための開発環境を備えるネットワーク機器も一部存在するが、まだ一般的とはいえない。
OpenFlowでは、OpenFlowコントローラーのAPIやSDKを公開することで、ネットワーク機器を制御する機能をプログラムとして追加できる(図3)。OpenFlowコントローラーに追加した機能は、OpenFlowコントローラーが管理するネットワーク全体で利用可能だ。ネットワークアーキテクチャをプログラムで制御するという、SDNの概念を端的に示す機能だといえる。
OpenFlowの経路制御方法
OpenFlowと従来のネットワーク機器との違いが顕著に表れるのは経路制御の手法だ。OpenFlowでは、パケットを制御ルールと実施すべき処理の定義をまとめた「フローエントリー」に従って処理する。複数のフローエントリーの集合を「フローテーブル」といい、OpenFlowコントローラーはOpenFlowスイッチにフローテーブルを配布することで経路情報を設定する。
フローエントリーは、以下の3つの要素で構成される(図4)。
- マッチフィールド:処理対象のパケットを特定するためのルール
- アクション:パケットの処理内容
- カウンター:共通のフローエントリーで処理されたパケット数などの統計情報
マッチフィールドは、パケットの送信元や宛先のIPアドレス、TCPポート番号といった識別子の組み合わせとして定義する。定義した条件にマッチしたパケットに対して、アクションで定義した処理を実行する。
フローエントリーによるパケット処理の概要は次のようになる。例として、ポート1とポート4の間でパケットを送受信させる場合を考える。この処理は、「ポート1で受信した場合は、ポート4に転送する」と指示するフローエントリーと、「ポート4で受信した場合は、ポート1に転送する」と指示するフローエントリーをOpenFlowスイッチに登録することで実現できる。“ポートXで受信した場合”という条件がマッチフィールドに該当し、“ポートYに転送する”という処理の方法がアクションに該当する。
ネットワーク経路を変更する際は、OpenFlowコントローラーでフローテーブルを書き換えて、OpenFlowコントローラー配下の各OpenFlowスイッチに反映させる。こうした特徴により、柔軟な経路設計が可能になる。
OpenFlowコントローラーとOpenFlowスイッチが、OpenFlowプロトコルを使ってやりとりする主な内容を以下に示す。
- 状態監視
- OpenFlow機器のネゴシエーション(機能やバージョンの確認など)
- フローテーブルで処理方法が定義されていないパケットのOpenFlowコントローラーへの転送
- フローテーブルの追加、変更、削除
- カウンター(統計情報)の収集
以上、SDNの主要な要素であるOpenFlowが持つメリットと経路制御の仕組みを解説した。新しい技術であるOpenFlowは、できることとできないことが正確に理解されているとはいえない状況であり、事実と期待が入り混じった状態にある。SDN/OpenFlowに対する捉え方や期待も日々変わっているのが現状だ。
後編では、OpenFlowの導入を検討する企業に向け、製品化の状況や導入時の注意点、OpenFlowと既存ネットワークをどう使い分けるかといった指針を示す。
著者紹介
塚本広海(つかもと ひろみ) ネットワンシステムズ株式会社
エンタープライズ向けルータおよびサービスプロバイダー向けコアルータの製品担当として、技術評価、構築、提案に関わる。その後、テクニカルマーケティングに転向。ポリシーコントローラーやDPIおよび省電力サーバなどを担当し、現在はSDNを含めた次世代製品・技術の調査や提案、マーケティング業務を担当。2004年、Cisco CCIE Routing and Switching取得。
小瀬田 勇(こせだ いさむ) ネットワンシステムズ株式会社
ネットワーク運用管理システムの運用および開発担当として、技術評価および開発に関わる。その後、ユーザー認証システムの開発を担当後、メッセージルータやクラウド基盤製品などの立ち上げに関わる。現在はSDNを含めた次世代製品・技術の調査や提案、マーケティング業務を担当。
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OpenFlow/SDNで何が変わるか
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