徹底比較! スマートフォン向け生体認証方式【後編】
iPhoneのカメラやマイクが認証手段に? 手軽にできる「音声/顔認証」
スマートフォンの機能を生かせば、生体認証を手軽に実現できる。「音声認証」「顔認証」はその最たる例だ。これらの利点と課題を紹介しつつ、指紋認証を含めた3方式を比較する。
前編「Androidを指で守る、『指紋認証』はスマートフォンの必需品となるか」では、スマートフォンにバイオメトリクス認証(生体認証)が必要な理由を整理し、主要な3つの生体認証方式の中から「指紋認証」について説明した。本稿では、残りの「音声認証」「顔認証、虹彩/網膜認証」について、そのメリットとデメリットを解説する。
音声認証
音声認証は、ユーザーの声と、事前に録音しておいたサンプルとを照合してユーザーを認証する。マイクは全ての電話機に付いているので、特別なハードウェアは必要ない。音声認証は、会議やプレゼンテーションなど、スマートフォンに向かって話し掛ける行為が適切でない場面では適さない。
米PhoneFactorは、あらゆるモデルのスマートフォン向けに多要素認証を提供している。ユーザー名とパスワード、暗証番号の入力に加え、パスフレーズ(認証のための文字列)をユーザーに話してもらい、事前に録音しておいた声紋と一致するかどうかで認証する。同社のソフトウェアは顧客拠点のサーバで実行する形式であり、携帯端末向けのソフトウェアを開発する必要がない。ソフトウェア開発キット(SDK)も提供しており、パートナー各社がPhoneFactorを他のサーバアプリケーションと組み合わせることも可能だ。
イスラエルのPerSayを買収した米Nuance Communicationsも、ユーザーにパスフレーズを繰り返してもらうことによって認証する製品を提供している。さらに同社は、パスフレーズを要求せず、ユーザーの音声を数秒間モニターして、その声が事前に録音されたサンプルと一致するかどうかをチェックする製品も提供済みだ。ソフトウェアは全て、顧客拠点のサーバで実行する。
| メリット | 追加のハードウェアが不要 |
|---|---|
| デメリット | 大きな声を出せない場所での利用には不向き |
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顔認証、虹彩/網膜認証
顔認証は、スマートフォンのカメラで撮影した写真を、事前に撮影しておいた登録ユーザーの写真と照合して認証する。カメラはほぼ全てのスマートフォンに搭載されているので、幅広い顧客が利用できる生体認証方式でもある。ただ、暗い場所でスマートフォンを使うことが多い顧客には適さないかもしれない。
顔認証用のアプリケーションは、AndroidやBlackBerry、iPhone、Windows Phone向けに多数存在する。例えば米AnimetricsやフィンランドのVisidonがさまざまな製品を提供している他、VARやSIerがネットワークアクセスソフトウェアとの統合のために利用できるSDKもある。
虹彩/網膜スキャン技術は、まだコンシューマー向けには提供されていない。例えば、米BI2 Technologiesの「MORIS」は現在、米国の警察が利用している。
| メリット | 追加のハードウェアは通常は不要。多くのアプリケーションがある |
|---|---|
| デメリット | 暗い場所では十分に機能しない。スマートフォン所有者の写真を使って認証が破られたという報告もある |
多くの顧客にとって、セキュリティ対策はパスワードや暗証番号、セキュリティトークンで十分かもしれない。しかしそうではない場合、スマートフォンの生体認証は、単独で使っても、他の認証方法と組み合わせても、価値の高いデータとトランザクションの安全性確保に必要な安全性を強化してくれる。
認証方式の採用時には、自社に特有の条件と、スマートフォンを利用する環境を考慮しなければならない。従業員がアクセスしたり、スマートフォンにダウンロードしたりする情報を精査し、こうした情報が攻撃者にとって貴重かどうかを考える。例えば最高財務責任者(CFO)が発表前の四半期決算資料にWi-Fiホットスポットからアクセスできるような状況では、生体認証によるセキュリティの強化が必要になる。
ソリューションプロバイダーの立場で考えると、生体認証製品の導入支援は、付加価値ビジネスの重要なチャンスだ。だが全てのユーザー企業が生体認証への投資を必要としているとは限らない。会社の端末やデータにアクセスするための手順を増やしてしまい、従業員の負担を重くすることにつながりかねないからだ。ユーザー企業に対しては単純に、セキュリティが破られた場合の対応に掛かるコストについて考えるよう促すといいだろう。多くの場合、ユーザー企業はこうした分析をした結果、セキュリティの層を厚くするために生体認証への投資を決断する。
| 生体認証方式 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 指紋認証 | 指紋は人それぞれで異なることから、安全性が高い | 指紋認証を利用できるスマートフォンは現在のところ3機種のみ。またネットワークアクセスソフトウェアとの統合が必要 |
| 音声認証 | 追加のハードウェアが不要 | 大きな声を出せない場所での利用には不向き |
| 顔認証、虹彩/網膜認証 | 追加のハードウェアは通常は不要。多くのアプリケーションがある | 暗い場所では十分に機能しない。スマートフォン所有者の写真を使って認証が破られたという報告もある |
本稿筆者のデビッド・B・ジェイコブス氏は、マーケティング企業、The Jacobs Groupの代表であり、ネットワーク業界において20年以上の経験を持つ。最先端のソフトウェア開発を率いるほか、Fortune 500企業やソフトウェアベンチャーのコンサルティングも手掛ける。
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