企業はどう考える?
得か損か、意見分かれる「Office 365」の定額課金
定額課金で提供される「Microsoft Office 365 ProPlus」。そのメリットを評価する声が聞かれる一方で、従来のOfficeとの違いに戸惑うユーザーもいるようだ。
米Microsoftの稼ぎ頭である「Microsoft Office」がクラウドベースの競合製品の攻撃的な価格設定、そして変更に消極的なユーザーの鈍い反応という2つの影響を受けている。そんな中、Microsoftは2013年3月、サブスクリプション提供のみのOfficeアプリケーションスイート「Microsoft Office 365 ProPlus」をリリースした。
SaaSが普及している現在、サービスとしてデスクトップスイートを提供することは決して特別なことではない。だが、Microsoftに限っては大胆な決断といえる。1年以内にユーザーベースのかなりの割合がサブスクリプションベースのOffice 365 ProPlusにアップグレードしなければ、Windows 8搭載のデスクトップおよびモバイル端末、中でもSurface Proタブレットの普及がさらに遅れる可能性があるからだ(参考記事:徹底レビュー:「Surface Pro」が勝ち取った意外な高評価)。
注目されるのは大企業ユーザーの動向だ。Officeはビジネスの隅々にまで入り込んでいる製品であり、企業ユーザーは長年利用してきた購入、展開、サポートの方法を変えることに消極的だ。また、数千本のライセンスの切り替えに伴う費用を考えると、大半の企業は疑念を抱かずにはいられないだろう。
米ITコンサルティングファーム、CSCのITアーキテクト、マイク・ドリップス氏は、「これは興味深いモデルだが、ユーザーが頭を切り替えるのは大変だ。実際にコスト面でのメリットがあるとしても、それが実現されるまではかなりの時間がかかるだろう」と話す。
「サブスクリプションベースのOffice 365 ProPlusの1ユーザー当たりの年間料金を考えると、SaaS(Software as a Service)を購入する見込みが高いのは大企業ではなく中堅・中小企業だ」と見るユーザーもいる。
ユーザーは変更を受け入れるか
コスト以外にOffice 365への移行を阻む要因として考えられるのは、Officeアプリケーションは企業に深く根付いており、多くの企業ユーザーが、Officeを中心に基本のビジネスプロセスを開発していることだ。
Windowsライセンスを専門とする米コンサルティング会社Pica Communicationsで主席コンサルタントを務めるポール・デグルート氏は、「非常に快適に使えるだけでなくOfficeを基に業務を構築するなど、Officeを便利に運用できる手段を開発したという点では、Microsoftはたいしたものだ」とコメントしている。
また、コスト意識の高い顧客が、既存のオンプレミス版のOfficeを長く使い続けていることも、Office 365 ProPlusが受け入れられるか分からない理由の1つだ。顧客が既存のOfficeを使い続けるのは、既存のエンタープライズアグリーメント(EA)によって、Officeソフトウェアの永続ライセンスを取得しているため。つまり、顧客はソフトウェアを所有しており、毎月利用料金を支払う必要がない。このEAに、魅力的な料金でソフトウェアの次バージョンへのアップグレードを保証するMicrosoftのソフトウェアアシュアランス(SA)プランを追加している企業も多いが、最近では、SAの必要性を問う声も聞かれる。
「SAを保有している顧客には、既にOffice 2013のライセンスが付与されている。従って、既存のEAを更新した場合、実質的には、Office 2016という全く未知の製品に対する権利を購入することになる」とデグルード氏は説明する。
一方、サブスクリプションプランは、1回の支払いで永続ライセンスが付与されるプランと比べて使用を中止することが難しくなる。このため、Microsoftにとって顧客をつなぎ止め、継続的な収入を確保できる可能性が高くなる。
Apple、Googleにも対抗
大企業ユーザーをSaaSモデルに移行するのは現実に難しいとしても、Office 365 ProPlusがうまくいけば、Microsoftはキャッシュフローを確保できるだけでなく、米Appleや米Googleに対抗していくために、Windows 8ベースの端末にとってぜひとも必要なカンフル剤になる可能性がある。
米451 Researchのアナリスト、カール・ブルックス氏は、「デスクトップ製品の売り上げはここしばらく頭打ちになっているため、Microsoftは巨額の収益を維持する手段を必要としている。突然、低コストで有効な代替製品が現れない限り、これは繰り返し収入をもたらす重要な収入源になるだろう」と話す。
さらにブルックス氏は、「新しいサブスクリプションプランは、古いバージョンのOfficeを使用している数百万社の企業ユーザーにアップセル(上位商品販売)を仕掛ける、より有意義で今までにない手段になる」としている。
ユーザーの懸念に対して、Microsoft役員は、「IT担当者がサーバ側とデスクトップ側のOfficeを手動でインストールする必要がないため、長い目でみればコストの節約になる、また、1ライセンスのみで最新の各種ソフトウェア更新プログラムが自動的に配布されるので、生産性も向上する」と答えている。
MicrosoftのOffice部門担当ジェネラルマネジャーのジュリア・ホワイト氏は、「以前は、全ての生産性機能を利用するには、SharePoint Serverを展開し、Exchange Serverを展開し、Lync Serverも展開して、さらにOfficeクライアントを展開する必要があった。しかもそれらは全て最新バージョンでなければならない。そんなことができるユーザーは限られていた。今は1サブスクリプションを購入するだけで、そんな面倒な処理は全てお任せだ」と説明する。
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