Amazon S3のセキュリティ問題
ユーザーのうっかりでデータ露出、Amazon S3の意外な落とし穴
クラウド事業者がデータとリソースの安全を守るため、どのような対策を講じているかを知ることは重要だ。その上で、IT部門も必要なセキュリティ対策を施す必要がある。
パブリッククラウドサービスを利用している企業が、データのセキュリティはクラウド事業者が守ってくれると思っているのなら、その企業がトラブルに見舞われるのは必至だ。
米TechTargetの2013年版Cloud Pulse調査によると、パブリッククラウドを採用しない理由としてデータセキュリティ不安を挙げた回答者は32%となり、2012年の36%に比べて減少した。
クラウド事業者は、業績と評判を左右する顧客のデータ保護に力を入れている。しかしIT部門はホスティング契約を結ぶ前に、クラウド事業者がデータとリソースの安全を守るため、具体的にどんな対策を講じているかを知ることが重要だと、米クラウド事業者Cetrom Information Technologyのクリストファー・スターク最高経営責任者(CEO)は話す。
最近では、「Amazon Simple Storage Service」(以下、Amazon S3)のユーザーがアカウントの設定を非公開ではなく公開に設定しただけで、データが露出してしまうことが発覚した。これは自社のデータのセキュリティに責任を持つことが、IT部門にとっていかに重要かを物語っている。
いったんクラウドに送ったデータは、実質的にコントロールを放棄することになる。そこでクラウドのデータセキュリティ問題を防ぐ手段として暗号化ソフトウェアが活用できると、米調査会社Gartnerのセキュリティアナリスト、ローレンス・ピングリー氏は指摘する。
ナノテクノロジーの開発・商業化を推進する米Novati TechnologiesのITディレクター、パトリック・メイヤー氏によれば、同社のデータはGoogleのGmailに送信する前に暗号化しているという。
「クラウドを利用するたび、自分ではコントロールできない幾つものデータセキュリティ問題に身をさらすことになる。例えばソーシャルエンジニアリング攻撃を受けたり、自分の知らない相手が、たとえ不注意にしても、そのデータにアクセスしているかもしれない。いったん自分の手を離れたデータに起こり得るリスクは最小限にとどめたい」とメイヤー氏。
Novatiでは2012年に電子メールサービスをオンプレミス型のMicrosoft Exchange ServerからGoogle Appsに切り替えた。Exchange Serverで想定される各種導入方法やOffice 365と比較して、Google Appsの方が大幅にコストを抑えられるという。
同社は米国防総省の契約企業と取引があり、米連邦法に従って、武器取引規制のITAR(International Traffic in Arms Regulations)順守が義務付けられていることから、データをクラウドに送る前にセキュリティ対策することが必要だった。
メイヤー氏が利用した「CipherCloud」は、暗号化ゲートウェイを通してNovatiのデータセンターからGoogleのサーバにデータを送信する。暗号化されてGoogleに保存されたデータは、オンプレミスで保存された暗号鍵がない限り、Googleも含めて誰も使うことができない。
「もし自分のコントロールが及ばないエンドポイントにデータが渡ったとしても、暗号化のおかげでわれわれのデータは守られる」とメイヤー氏は説明する。
Amazon S3のセキュリティ問題
こうした対策が必要なのは、最もセキュアなパブリッククラウドでさえも、セキュリティ問題に見舞われることがあるためだ。
Amazon S3の事例では、クラウドストレージアカウントが非公開に設定されていなかったため、2000近いバケットが公開された状態になっていた。
脆弱性診断を手掛ける米Rapid7の上級セキュリティコンサルタント、ウィル・バンデバンター氏のブログによると、約1260億のファイルの中には、自動車ディーラーの販売記録、従業員のデータスプレッドシート、暗号化されていないデータベースのバックアップ、モバイルゲーム開発会社のゲームのソースコードなどもあり、誰にでもアクセスできる状態になっていたという。
Amazon S3アカウントはデフォルトで非公開に設定されているものの、管理者の手で公開に設定したり、設定ミスの結果そうなることもある。今回のセキュリティ問題はAWSの不手際に起因するものではなかったが、多くのIT部門が、データセキュリティ問題の可能性を完全に認識しないままクラウドを使っていると、バンデバンター氏は解説する。
AWSは顧客に対し、アカウントが公開設定になっているため、ファイルにアクセスされる可能性があると電子メールを通じて警告した。同社の広報はさらに、設定ミスのあるファイルやバケットを前もって見つけ出すための対策をいずれ講じる予定だと話している。
ハイブリッドクラウドでセキュリティ不安に対抗
IT部門は、クリティカルなアプリケーションインフラをクラウドに置く上で、データ管理およびセキュリティ対策に関する事業上のニーズをコスト削減の可能性に照らして評価する必要があると、米ITソフトウェアベンダーSolarWindsのMicrosoft MVP(Most Valuable Professional)受賞者、ローレンス・ガーバン氏は言う。
全てのデータが暗号化を必要とするほど重要度が高いというわけではない。しかし大企業であれば、アプリケーション導入にハイブリッドクラウドモデルを使って、パブリッククラウドのセキュリティ不安に対応することもできる。
例えばアプリケーションのフロントエンドはパブリッククラウドでホスティングしながら、データストレージはオンプレミスのデータベースに残して、その2つの間をセキュアなデータパイプラインで結ぶ方法もあるという。
ガーバン氏は「これによってビジネスの前線では複数のデバイスやロケーションを通じたよりユビキタスなアクセスが提供され、IT部門はデータのコントロールを維持できる。データセキュリティ問題に対応しながら、ユーザーが望む柔軟性とアクセスを提供できるITのモデルはたくさんある」と指摘する。
この場合、大量のデータ転送に対応するために必要なネットワーク接続のセットアップと、ホスティングされる側のアプリケーションとデータベースの間の緊密な連係の確立が課題になると同氏は言い添えた。
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