熱過ぎず、冷し過ぎずない冷却方式
クールにコンピュータを冷やす――最新データセンターのからくりとは
従来型のデータセンターの冷却システムは、大量の電力と多額のお金を浪費する。会社のデータセンターの冷却システムも、そのような問題がないか見直す必要があるのではないだろうか。
従来のデータセンターでは、数台の精密空調装置(CRAC)が、フリーアクセスフロアに設けられた有孔パネルから冷却空気を送り出すことにより、コンピュータルーム内の全てのラックを適温に維持している。だが、これよりも効率的な方法がある。最新の冷却手法や冷却技術を利用すれば、投資を短期間で回収し、ランニングコストも削減できる可能性がある。
熱過ぎず、冷し過ぎず
まず、データセンターの温度設定が低すぎないかチェックする必要がある。
米暖房冷凍空調学会(ASHRAE)は2004年から、特定のタイプのデータセンターに推奨/許容される温度に関する調査を行っている。それによると、ハイエンド型データセンターの最高温度は、2004年の25℃から2008年には27℃に上がった。ASHRAEは2011年、数種類のデータセンターのタイプを定義し、その最大許容温度を45℃としている。
冷却コストを削減する最も簡単な方法は、CRACの運転台数を減らすことだ。ニーズとリスクのバランスを勘案して温度設定を高くしたデータセンターでは、冷却要求を大幅に削減できる。これはCRACの台数を減らせることを意味する。データセンターの中には、設置されたCRACユニットの半数の電源を切ることにより、電力コストとメンテナンスコストを削減できるところもあるだろう。
固定容量型CRACユニットの代わりに可変容量型ユニットを使用するという方法もある。可変容量型CRACユニットは、設定温度を維持するのに必要なだけの能力で作動する。CRACユニットは100%の能力で作動している状態が最も効率が高いため、可変容量型CRACユニットの中には部分負荷での作動に最適化されていないものもある。
標準的な固定容量型CRACユニットを100%の能力で作動すれば、熱慣性を上昇させることができる。これもコスト削減につながる冷却方式の1つだ。すなわち、データセンターを目標温度よりもかなり低い温度まで冷却した上でCRACユニットをオフにする。その後、データセンターの温度上昇を放置し、設定温度に達した時点で再びCRACユニットを作動させるという手法だ。
これらの方法は電力コストの抑制につながるが、データセンター全体を冷却する方式にはまだ無駄が多い。冷却空気の大半がIT機器の十分近くにまで流れてこないため、効果的な冷却が行えないのだ。
サーバラックの周囲にホットアイル(高温通路)とコールドアイル(低温通路)を適切に配置すれば、必要な冷却空気の量を減らすことができる(図1参照)。
向かい合うサーバラックに挟まれた空間は、ラック上の天井と両側のドアで囲われている。この閉空間に冷気が吹き込まれ、ブランクパネルによってラックから冷気が漏れるのを防ぐ。冷気はダクトを通じて機器の高温部に送られる。効果的にアイル部分を囲い込む方法としては、専門業者に委託するのが一般的だが、手作りで簡易的なシステムを作成することもできる。例えば、ラックの上にポリカーボネート板をかぶせて天井を作り、ポリプロピレンシートを両側のドアの代わりにする、といった具合だ。
排出された熱気はデータセンターの暖房や、ビル全体の暖房・給湯システムに利用することができる。
データセンター内の各ラックをそれぞれ専用の空間に閉じ込めるターゲット冷却方式の狙いは、冷気の量を最小限にすることにある。市販製品としては米Chatsworth Productsの「Chatsworth Towers」などがある。これは、19インチラックを収容した自立型システムで、冷却空気は床から天井に送られ、この冷気がデータセンター内の空気に一切触れることはない。
CRACを使わずに冷却する
優れた冷却効率を実現する手法は他にも存在する。気候条件によっては、運用温度の設定を高くし、外気を利用して冷却を行うことで、CRACユニットを不要にできる可能性もある。外気温度が25℃以下で、湿度が低いという条件があれば、機械的な冷却設備を使用しなくても、30℃で運用するデータセンターを冷却できる。
単に外気をダクトでサーバルームに引き込むだけでは、熱のホットスポットが生じたり、ほこりや汚染物質がデータセンターにたまったりする恐れがある。このような問題に対処するのが、「Kyoto Wheel」などの新しいデザインだ。
2つの部屋に区切られた空間の中で直径約3メートルの波型ホイールがゆっくりと回転する。データセンターからの熱気は、一方の部屋を通過するときにホイールの金属に熱を伝えた後、データセンター内に戻る。冷たい外気はもう一方の部屋に流れ、金属から熱を吸収した後、外に排出される。
データセンターの空気ループは閉じられており、回転するホイールに熱を伝達する空気は少量なので、外気からデータセンターに取り込まれる粒子状物質や水分は極めて少量だ。ホイール自身も部分的にフィルターとしての役割を果たす。
Kyoto Wheelの冷却方式に用いられる低速ファンとモーターは、メンテナンスが容易で(ホイールの掃除とモーターの点検のみ)、電力消費も少ない。利用企業の多くは太陽光発電とバックアップ用のバッテリーを採用している。この方式の寿命は控え目に見積もっても25年である。
外気が冷たくなければ水がある
上記のような空冷方式とは異なるアプローチとして、水の蒸発に伴う冷却効果を利用した断熱冷却方式がある(図3参照)。
これは外気熱によって湿式フィルターから水分を蒸発させることにより、フィルターを通過させた空気を冷却させるという仕組みで、気候が温暖な地域にあるデータセンターに有効な方法だ。2室型のシステムなので、外気に含まれる汚染物質がデータセンターに入ることはないが、フィルターは定期的に清掃して粒子状物質を除去しなければならない。また、データセンター内のIT機器の結露を防ぐために、空気中の水分を調整する必要もあるかもしれない。
温暖な地域のデータセンターでIT機器を高密度に配置して高い熱プロファイルで運用するのであれば、直接水冷方式を検討すべきだ。米IBMは、スーパーコンピュータシステムの「Aquasar」と「Leibniz SuperMUC」で画期的な水冷方式を採用した。このシステムはポンプで水を追い出すのではなく、負圧でシステム周辺の水を吸い出すことによって、水と電気の接触という古くからの問題を解決した。水漏れが発生した場合には、水をデータセンターに押し出すのではなく、システム内に空気が吸い込まれるのだ。漏れが発生した箇所は高性能センサーによって素早く特定される。また、モジュラー構造なので、システムの残りの部分を動作させたまま修理することが可能だ。
IBMは冷却液として温水を使用している。これは奇妙に思えるかもしれないが、こうした直接冷却システムの場合、30℃以上の温水でもCPUなどの部品を規定温度範囲内に冷却し、排水の温度が45℃程度になるようにできる。高温の排水は熱交換器を通じてビルの給湯設備で利用できる。水冷方式はデータセンターの消費電力を約40%削減できるだけでなく、施設全体の運用に必要な電力の節減にもつながる。
さらに徹底した液冷方式として、完全浸漬システムがある。英Iceotopeや米Green Revolution Coolingなどの企業が提供しているシステムは、熱伝導性を有するが電気は通さない液体にサーバ全体(あるいはその他のIT機器)を浸した構造だ。これらのシステムは、数百個のコアを搭載したGPUサーバが高密度構成で作動する環境や、CPUを酷使する超並列コンピューティング構成などに適しており、各冷却槽当たり100キロワット以上の消費電力に対応できる。冷却槽の外観は、ラックを横置きに格納した容器のような感じだ。60℃の液温で作動する浸漬システムもある。
浸漬方式ではファンが不要となる。また、専用の冷却液は空気や水よりも冷却効果がはるかに優れているため、IT機器を高い温度で動作させることができ、また冷却液から熱を回収できる。
クールにいこう
これらのシステムは、さまざま運用形態や環境条件でデータセンターの機器を冷却するのに用いられる主要な方式だが、いずれもモニタリングが不可欠だ。
そこで必要となるのがデータセンターインフラ管理(DCIM)だ。熱センサーや赤外線検出器は、データセンター内の既存のホットスポットマップを作成するのに役立つ。また計算流体力学(CFD)解析を行って、さまざまなシステムに対して冷却空気の流れや温度を変えるとどうなるかという「what-if」シナリオをシミュレーションできる。
DCIMを導入して継続的モニタリングを実施すれば、ホットスポットを素早く特定し、必要に応じてシステムの作動速度を下げる、電源を切る、あるいはシステムを入れ替える、といった対処が可能になる。ホットスポットが突然出現した場合、IT機器の故障が差し迫っていることを示している可能性が高い。故障が起きる前にその兆候を発見できれば、システムのアップタイムと可用性の向上につながる。DCIM分野のベンダーとしては、米Emerson、独Siemens、米Nlyte、英Romonet、米Eatonなどの企業がある。
データセンターの冷却に時代遅れの手法を採用するのは、お金の無駄遣いに他ならない。新しいガイドラインに従い、データセンターを効果的に冷却するための新しいアプローチを検討して、コストの削減とメンテナンスの簡素化を実現していただきたい。
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