データセンター効率化ツールを活用
NASAがITシステムを刷新、その先にある理想像とは
米航空宇宙局(NASA)は現在、組織を挙げたITシステムの刷新プロジェクトを推進している。その先に見据えるシステム像について、NASAのプロジェクト担当者の話を紹介しよう。
米航空宇宙局(NASA)では目下、ITシステムの刷新が進められている。デボラ・ディアス氏はこの取り組みにおいて、いまだかつて誰1人として踏み込んだことのない領域に立ち入ろうとしている。NASAの副CIOとして、同氏はデスクワーク中心の職員や移動の多い職員の間にユニファイドコミュニケーションを提供し、さらには自動化されたセルフサービス式のポータルを介して標準化されたITサービスを提供するための取り組みを指揮しているのだ(関連記事:OpenStack実用化への勢い ~NASAは開発から使う立場へシフト)。
「IT Integrated Infrastructure Program(IP3)」という名称で呼ばれるこの取り組みは、NASAで実施されるITプロジェクトとしては過去最大の規模であり、組織を挙げてデータセンターの効率化に取り組もうという姿勢の表れでもある。
「われわれは統合だけでなく仮想化についても考えており、地熱空間マッピングを使って電力フットプリントを把握することなども考えている。単にデータセンターの数を減らすだけでなく、コンピューティングリソースをより上手に活用しようと計画している」と同氏。
ディアス氏の指揮の下、NASAはこの12カ月間で既にデータセンターの32%を統合した。これは、執行部が当初2015年の目標に掲げていた数字だ。そして同氏は現在、NASAが2015年までにデータセンターの66%を統合できると予想している。
「われわれは局所的な革新を組織全体に広める必要性を認識している。従来のシステムは断片化され、カスタマイズされ、データが別々のデータベースに格納された中央集約型のものだったが、われわれはそこからの脱却を図っている。NASAのインフラとサービスは今後、組織全体にわたって統合され、標準化されたコラボレーティブなものになっていく」とディアス氏。
この使命を果たす上で不可欠なのは、エネルギー使用をはじめ、各種の重要な基準の測定を支援する「データセンターインフラ管理」(DCIM)ツールだ。NASAはPower AssureのDCIMソフトウェアを使って、電力消費や容量レベルなどのデータを測定している(関連記事:データセンターのさらなる省電力対策が注目されたグリーンIT&省エネEXPO)。
DCIM市場が拡大の見通し
ディアス氏のようにデータセンターの効率化を目指すデータセンター責任者には難題が山積みであることから、最近はDCIMツールの採用が進んでいる。DCIMツールはPower Assureの他にも、IBMやVMware、あるいはViridity Softwareといった新興企業など、十数社のベンダーが手掛けている大きな製品カテゴリだ(関連記事:システム管理ツールを制するものがデータセンター市場を制す)。
調査会社のIDCによると、データセンターの電力および冷却コストは2005年の250億ドルから、2010年には450億ドル近くにまで増加する見通しという。そうした見通しを背景に、調査会社のGartnerは「DCIMツールの売上高は2014年までに60%増加する」と予想している。
ディアス氏と同様、DCIMツールは全体を大局的に捉えることができる。これは、従来さまざまな部門が個別に管理していた機能を1つのリポジトリにまとめることによって実現するものだ。従来であれば、例えば、電力や冷却も含め、物理的な空間は施設部門が管理し、光ファイバーや銅ケーブル、LAN、WAN、SAN(Storage Area Network)はネットワーク部門が管理し、メインフレームやサーバ、ストレージはシステム部門が稼働を管理していた。
DCIMツールを使えば、データセンターのスタッフは全ての要素を一度に把握できる。そうした可視性は、オペレーションの混乱や消耗を減らすのに役立ち、また「チーム間に透明性が確保されたフラットな組織がITとビジネスの変革にとっていかに有効か」を示す一例にもなる。
ただし、いったんDCIMの資産データベースが構築されれば、完全かつ正確なリポジトリを維持できるよう、全ての部門が変更管理のベストプラクティスに従う必要がある。さもなければ、システムが使用されなくなり、DCIMデータベースの価値は低下することになるだろう。大半のDCIMベンダーは、ワークフローを迅速化してデータベースの正確さを維持できるよう、そうしたプロセスの促進ツールを提供している。
データセンター効率化は出発点
統合型インフラを適切な管理ツールで補強することで、NASAはパブリッククラウドインフラやモバイル端末を採用しやすくなるはずだ。ディアス氏もそれを望んでいるという。
「モバイル端末とユニファイドコミュニケーションが統合されれば、もはや個人がどのデスクに座っているかは問題でなくなり、いかにして、いつでもどこからでもデータにアクセスできるようにするかが問題になってくるだろう」と同氏は言う。
一方、そうしたコミュニケーション能力の飛躍的な前進は、計り知れない量のネットワークトラフィックを生み出すことになるはずだ(関連記事:帯域幅管理に難題を突きつけるYouTubeやFacebook)。そのため、この取り組みにはDCIMツールだけでなく、データの重複排除などの機能も含める必要がある。
「帯域幅の問題を解決できれば、われわれはまだ今は存在していない新たなパラダイムへと大きく躍進することになるだろう」とディアス氏は言う。
実際、NASAの一部の機関は目下、AppleのiPadを導入してデスクトップPCを排除できないかを検討中という(関連記事:「戦略後回しで取りあえずiPad導入」──米企業のタブレット導入動向調査)。「人々のキーボード離れが進み、タッチパッドに慣れた人が増えている。iPadは教育にも適しているし、仮想会議もサポートする」とディアス氏。
例えば、ディアス氏はケニアを旅行中に仮想会議に参加することもできたという。「グローバリゼーションは起きた。この先、ユニファイドコミュニケーションが提供してくれる可能性を生かせるかどうかは、世界にかかっている」とさらに同氏は続けている。
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