IaaSの枠を超えたサービスがAWSから次々に
クラウドの“勝ち組”Amazonに浮上するベンダーロックインの懸念
2013年11月に実施されたAWSのカンファレンスでは、新しいデータストリーミングサービスの提供やデータベースおよびデータウェアサービス機能の拡充などが発表された。そんな独走状態のAWSにユーザーからは不安の声も。
米Amazon Web Services(以下、Amazon)は2013年11月中旬、クラウドサービス群「Amazon Web Services」(AWS)の新サービスと既存サービス強化を多数発表した。だが、AmazonがAWSの拡充を進めれば進めるほど、より多くのIT担当者が有力なライバルを探すようになっている。市場における選択肢を確保するためだ。
Amazonの発表内容は次の通り。(1)新しいデータストリーミングサービス「Amazon Kinesis」、(2)「Amazon Relational Database Service(RDS)」でのPostgreSQLデータベースのサポート、(3)データウェアハウスサービス「Amazon Redshift」によるリージョン間でのスナップショットの自動コピー、(4)ハイパフォーマンスコンピューティング用の2つの新しいインスタンスタイプ。
Amazonは現在、シンプルなIaaS(Infrastructure as a Service)にとどまらないさまざまなクラウドサービスを投入し、AWSのラインアップの拡大を続けている。同社が2013年11月中旬に米ラスベガスで開催したカンファレンス「AWS re:Invent」の参加者は、数多く発表されたAWSの新展開に強い関心を示した。だが、その一方で、今後、AWSと競合サービスとのギャップが広がり、自社がベンダーロックインに陥る可能性も認識していた。
市場では、IaaSサービス間で仮想マシン(VM)を移動できるソリューションも提供されている。だが、Amazon RDSのような高度なサービスでは、ワークロード全体を他のプラットフォームに移動するのは非常に困難だろう。
「これは、われわれにとって間違いなく大きな懸念材料だ」と、米南西部のデータセキュリティ会社で技術およびイノベーション研究開発チームのマネジャーを務めるローレント・カスティーリョ氏は語った。そのために同社は、クラウドインフラスタックのPaaS(Platform as a Service)層については、「AWS Elastic Beanstalk」サービスに代わる選択肢を探しているという。
PaaS市場には、AWSの代わりに使えるオープンソースの強力な選択肢があり、米Pivotalの「Cloud Foundry」や米Red Hatの「OpenShift」がその例として挙げられると、カスティーリョ氏は語った。
それでも、ベンダーロックインはAWSのほとんどの顧客にとって、極めて重大な問題にはまだなっていないと、米Forrester Researchのアナリスト、ジェームズ・スタテン氏は指摘する。しかし、「顧客はいずれ岐路を迎えるだろう」と同氏は見る。
「使用量と料金の増加を背景に、彼らは5年以内にこの問題に頭を悩ませるようになるだろう」とスタテン氏。「今はどのみち乗り換え先がないため、顧客としてはロックインされている感じはあまりしない」
注目を集めたAmazon Kinesis、RDSのPostgreSQL対応
Amazonの新しいKinesisサービスは、re:Inventの参加者の間で注目度が高かった。Kinesisは、ストリームデータをリアルタイム処理する。何十万ものソースからの1時間当たりTバイトクラスのデータを保存、処理できる。ソースの例としては、Webサイトのクリックストリーム、マーケティングおよび金融トランザクション、ソーシャルメディアのフィード、ログ、メータリング(使用状況測定用)データなどがある。
「Kinesisについては、必ず詳しく見ていくつもりだ」と、米大手広告代理店のインフラオペレーションディレクターは述べた。「ストリームデータを簡単に扱えるようにするツールはどれも、われわれがデータウェアハウスを拡張するときに役立つだろう」
スタテン氏は、Kinesisは、Forrester Researchの顧客の間でも人気のサービスになるだろうとの見方を示した。
「顧客と話したところでは、顧客のほとんどは何らかのストリーム分析を行っている」とスタテン氏。「Kinesisは、米Autodeskのような企業にとって便利だろう。CADアプリや3Dレンダリングツールをクラウドに移行しようとしているからだ」
また、RDSでのPostgreSQLデータベースのサポートは、待望されていた機能だ。この機能のニュースは、re:Inventの基調プレゼンテーションの聴衆から喝采を浴びた。発表の際にそれほど反響があったのはこの機能だけだった。
さらに、データウェアハウスサービスのRedShiftでは、リージョン間でスナップショットが自動的にコピーされるように設定することが可能になった。この機能は「Cross-Region Snapshots」と呼ばれる。スタテン氏は、この機能も、顧客の以前からの要望に応えたものだと語った。
「顧客はこのコピー作業を自分で行っていたが、もうその必要はない」(スタテン氏)
Amazonは、これらを発表した前日にもDaaS(Desktop as a Service)プラットフォーム「Amazon WorkSpaces」を発表している(関連記事:「Amazon WorkSpaces」が実現する“夢のデスクトップサービス”)。
ハイパフォーマンスコンピューティング用の新インスタンスタイプ
re:Inventでは、「Amazon Elastic Compute Cloud」(Amazon EC2)で通常よりも高いパフォーマンスが得られる2つの新しいインスタンスタイプも発表された。
その1つである「C3」は、「コンピューティング最適化」インスタンスファミリーに属しており、このファミリーの既存のインスタンスタイプである「C1」および「C2」を上回る高いCPUパフォーマンスを提供すると、Amazon幹部は述べた。C3の中で最も大規模なインスタンスである「c3.8xlarge」は、32個のvCPU、60GバイトRAM、2台の320GバイトSSDという構成で、時間単価は2.40ドル。
C3とともに発表された新インスタンスタイプ「I2」は、従来のインスタンスタイプよりも高いIOPS(1秒間のリード/ライト回数)パフォーマンスを提供する。I2の中で最も大規模なインスタンスである「i2.8xlarge」は、32個のvCPU、244GバイトRAM、8台の720GバイトSSDという構成だ。このインスタンスは、ランダムリードが35万IOPS、ランダムライトが32万IOPSとされている。だが、I2のサービス開始時期や価格はまだ発表されていない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
4
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
5
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
6
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
-
7
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
8
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
9
LLMの「過学習」、正しく説明している文章はどれ?
-
10
レガシー基幹システムをSAPに統合 山善が突き止めた「標準化と個別最適」の境界線
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー