Microsoft Azureスマート解説【第2回】
IaaSとの違いは? Microsoft AzureのWebサイト実行基盤を解説
Webサイトの実行基盤をPaaSとして提供する「Microsoft Azure Webサイト」。インフラやミドルウェアの煩わしい設定をクラウド側に任せることで、ユーザーは開発に専念することができる。
「Microsoft Azure Webサイト」は、Web上にサイトを公開するためのPaaS(Platform as a Service)サービスである。このサービスを利用することで、ユーザーはWebサーバを構築/管理することなくWebサイトを公開できる。システム開発の高速化とコスト削減につながる。
Microsoft Azure Webサイトの概要
Microsoft Azure Webサイトとは、Webサイト/Webアプリケーション(以降、総称してWebサイトと呼ぶ)の実行基盤を提供するサービスである。
ユーザーは本サービスで稼働しているWebサーバ(IIS:Internet Information Services)に、Webサイトを配置・公開することができる。WebサーバはMicrosoftによって管理され、稼働率99.9%が保証されているため、ユーザーはIISなどのWebサーバソフトウェアのインストール、設定、管理、監視、さらにOSへのパッチ適用など、煩雑な業務から開放される。多くの場合、ユーザー自身が管理するより、高稼働率と高いセキュリティを得られるだろう。ユーザーはインフラのことを考える必要がなくなり、開発に専念できるため、サイトの品質向上が期待できる。
本サービスの最大の特徴として、無料で利用可能なモードが提供されている点が挙げられる。Webサイトには「無料」「共有」「基本」「標準」の4つのサイトモードが用意されている。無料モードでは利用制限があるが、無料でWebサイトを公開することができる。
ランタイムにはASP.NET、Java、PHP、Python、Node.jsが提供され、さまざまなWebサイトを配置することができる。Webサイトの配置はFTPまたはWeb Deployで行う。また、TFSやGit/GitHubなどのソースコード管理ソフトウェアと連携してデプロイすることも可能である。
管理ポータルでは、CPU負荷、リクエスト数、HTTPサーバエラー数、HTTPクライアントエラー数などの稼働状況を確認することができる。また、自動スケール機能によって、あらかじめ指定したスケジュールまたは稼働状況に応じて自動的にスケールアウト(サーバ増減によるパフォーマンス調整)することも可能だ。
Microsoft Azure Webサイトを利用することで、大幅な運用コスト削減および開発速度向上を実現する。
Microsoft Azure Webサイトを使用するメリット
従来、Webサイトを公開する場合、まずサーバマシンを購入し、それに関連するネットワーク設計が必要になる。その後、Webサーバソフトウェアをインストールして、セキュリティを考慮して適切に設定する。サーバが稼働した後は、正常に稼働していることを監視し、適宜、OSやミドルウェアのアップデートなどの管理を行う。
これに対して、「Amazon EC2」を代表とするIaaS(Infrastructure as a Service)を利用する場合は、サーバマシンを使いたいときに使いたい分だけ利用できるようになる。しかし、Webサーバソフトウェアのインストール、設定、監視、管理はユーザー自身が行うことが求められる。そのため、結局は相応の運用コストを掛けざるを得ない。
Microsoft Azure Webサイトサービスを利用すれば、こうした課題を解決することができる。サーバマシン購入やネットワーク設計などのハードウェアに関することも、Webサーバソフトウェアのインストール、設定、監視、管理などのソフトウェアに関することも、クラウドベンダーであるMicrosoftが管理してくれる。そのため、運用コストを十分に削減することができる。
PaaSを使用するという選択
システムの稼働環境を実装する手段として、現在ではオンプレミス、IaaS、PaaSの3つの選択が考えられる。どれを選ぶべきか一概には言えず、システムの特性に応じて選択するべきである。以下に各稼働環境の一般的なメリット/デメリットを説明した図および表を記す。
| 稼働環境 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| オンプレミス | ハードウェアレベルから全て選定することができるため、柔軟なシステム構成が可能 | ハードウェア/ソフトウェア全域の管理が必要となるため、高い管理コストを要する |
| IaaS | ハードウェアレベルの管理を行わなくて済み、ソフトウェアレベルの設計を柔軟に行える | ハードウェアレベルの柔軟性に欠け、ソフトウェアレベル全域の管理が必要となるため、多少の管理コストを要する |
| PaaS | ハードウェアレベルからランタイムまでの管理をクラウドベンダーに委託するため、管理コストを抑えられる | ユーザーが決定できる範囲が小さいため、システム構成の柔軟性に欠ける |
Microsoft Azure WebサイトはPaaSに属するサービスで、クラウドベンダーが管理する範囲が広い。そのため、環境構築/システム開発を迅速かつ低コストに行うことができる。ユーザーがカスタマイズできる範囲は、オンプレミスと比較すると狭まるが、例えばランタイムには、ASP.NET、Java、PHP、Python、Node.jsと多彩な選択肢が用意されているなど、通常のシステム開発に必要な柔軟性は確保されているといえる。
運用コストを削減&開発速度を向上させるための多彩な機能
監視/アラート
管理ポータルでは、直近一週間のWebサイトのリクエスト数、CPU負荷、受信データ量、送信データ量、使用メモリ量、HTTPクライアントエラー数、HTTPサーバエラー数をグラフで確認することができる。また、各項目にアラートルールを設定でき、指定した上限値または下限値を超えた際に、指定したメールアドレスに通知できる。例えば、直近10分間に、HTTPステータスコード404(Not Found)が返された数が指定数を超えた場合、サイト更新時にリンク切れが混入した可能性を疑い、開発者にメールで通知するといった運用が可能になる。
自動スケール
自動スケール機能では、Webサイトの負荷状況またはスケジュールに応じて自動的にスケールアウトすることができる。負荷状況に応じたスケールアウトでは、CPU使用率に応じてインスタンス(サーバ)数を増減させる。スケジュールに応じたスケールアウトでは、平日の日中、平日の夜間、週末、指定した期間ごとにインスタンス数を増減させることが可能だ。
バックアップ
バックアップ機能を用いることで、サイトの設定、コンテンツ、関連するデータベースのバックアップを自動的に取得できる。また、バックアップ履歴から復元することも可能。これらの設定、操作は管理ポータルから行う。この機能によって、Webサイト運用で必須であるバックアップ作業を自動化する他、有事の際のリストアも安全に行い、運用コスト削減やオペレーションミスのリスク低減につながる。
ステージング環境
Webサイトサービスでは、ステージング環境を設定することができる。ステージング環境とは、Webサービスを本番環境に配置する前に一時的に試行するための環境である。本番環境とステージング環境はスワップ機能によってダウンタイムなしで切り替えられる。この機能により、ステージング環境で動作環境を行った後に、本番環境へと切り替える運用が円滑に実施できる。
ギャラリー
ギャラリー機能では、管理ポータルでの簡単な操作によって、あらかじめソフトウェアがインストールされている状態のサイトを作成することができる。例えばオープンソースソフトウェア(OSS)のCMSとして有名な「WordPress」や、EC構築パッケージである「EC-CUBE」がプリインストールされたWebサイトを無料で作成可能だ。これにより、サイト構築にあまり詳しくないユーザーでも、簡単に素早く優れたサイトを構築することができる。
Visual Studioとの連携
Microsoft Azure SDKを用いることで、管理ポータルにログインすることなく、Visual Studio上からWebサイトの作成・設定、発行プロファイルの取得、デプロイを行える。また、ログストリームに接続し、公開中のWebサーバのログ出力を確認でき、開発作業の円滑化が期待できる。
Webジョブ
Webジョブ機能は、Webサーバ上で任意のプログラムやスクリプトの実行を可能にする。プログラムはWindows実行ファイル(.exe)に対応。スクリプトはWindowsバッチファイル(.cmd, .bat)、PowerShell(.ps1)、bash(.sh)、PHP(.php)、Python(.py)、Node.js(.js)が実行できる。実行方法はオンデマンド実行、連続実行、スケジュール実行の3種類が提供されている。オンデマンド実行は、管理ポータルで実行指示を出したときにのみ実行される。連続実行は、作成時から処理を繰り返し実行し続ける。スケジュール実行では、指定した時刻に1度だけ実行するか、指定した期間で定期的に繰り返し実行するかを指定する。繰り返しの間隔は、1分~500日間隔まで指定することができる。また、月の特定日や週の特定曜日に実行させることも可能である。
Webサイトの4つのモード
Webサイトには「無料」「共有」「基本」「標準」の4つのサイトモードがあり、それぞれ料金体系や利用制限が異なる。各サイトモードの特徴と、利用シーンをまとめたものを以下に記す。
| サイトモード | 特徴 | 利用シーン |
|---|---|---|
| 無料 | ・無料でWebサイトを稼働させることができる ・リソースの使用制限を超えるとサイトが利用不可になる ・SLAが適用されない |
・アクセス数が非常に少ないサイト ・CPU処理/送信データ量が少ない静的サイト ・プロトタイプ開発やPOC検証時での利用 |
| 共有 | ・非常に安価でWebサイトを稼働させることができる ・リソースの使用制限が無料モードと比較して緩和されている ・SLAが適用されない |
比較的アクセス数の少ないサイト |
| 基本 | ・CPUリソースを専有できる ・比較的安価 ・SLA 99.9% |
アクセス数は多いが、変動が小さいため、自動スケールを行う必要がないサイト |
| 標準 | ・CPUリソースを専有できる ・運用コスト削減のための多彩な機能を利用できる ・SLA 99.9% |
企業系や大規模なイベントなど、アクセス数が非常に多く変動の予測が困難、または急増するタイミングが判明している場合に、自動スケールを用いることで処理能力を向上させることができるサイト |
各サイトモードの機能および性能をまとめたものを以下に記す。
| 機能 | 無料 | 共有 | 基本 | 標準 |
|---|---|---|---|---|
| 最大サイト数 | 10 | 100 | 無制限 | 無制限 |
| ストレージ | 1Gバイト | 1Gバイト | 10Gバイト | 50Gバイト |
| CPU | 共有 | 共有 | 専有 | 専有 |
| ギャラリー | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 監視/アラート | ○ | ○ | ○ | ○ |
| スケールアウト | × | ○(最大6共有インスタンス) | ○(最大6専有インスタンス) | ○(最大10専有インスタンス) |
| バックアップ | × | × | × | ○ |
| 自動スケール | × | × | × | ○ |
| Webジョブ | × | × | × | ○ |
| ステージング環境 | × | × | × | ○ |
| カスタムドメイン | × | ○ | ○ | ○ |
| カスタムドメインSSL | × | × | ○ | ○ |
| SLA | × | × | ○(99.9%) | ○(99.9%) |
日山 雅之(ひやま まさゆき)
株式会社FIXER Enterprise Cloud Unit クラウドエンジニア
学生時代に地元のITベンチャー企業にてプログラミングのアルバイトを行い、そこでプログラミングの奥深さに魅了され、スーパープログラマを目指す。大学院を卒業後、現日立システムズに入社し、App Bridgeシリーズの開発に携わる。その後、プログラミング技術をより高めるべく株式会社FIXERに入社。Microsoft Azureの虜になる。好きなサービスはクラウドサービス+キューストレージ。
【FIXER公式サイト】http://www.fixer.co.jp/
【cloud.config公式サイト】http://www.cloud-config.jp/
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
4
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
5
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
6
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
-
7
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
8
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
9
LLMの「過学習」、正しく説明している文章はどれ?
-
10
レガシー基幹システムをSAPに統合 山善が突き止めた「標準化と個別最適」の境界線
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー