そのメリットとリスク対策
企業向けシステムの“過激な高密度化”はここまで進んでいる
ストレージやサーバの高密度が著しい。注意深く計画を立てることで、コンピューティング密度の向上によるメリットを最大化し、潜在的なリスクを最小化することができる。
次世代データセンターではスペースの有効活用が進められるため、ITプロフェッショナルは先を見越してサーバとストレージの高密度化を実現するとともに、関連するリスクや問題を軽減しなければならない。
最新のデータセンターにはコンピューティング密度が大きく影響している。コンピューティングハードウェア、システムフォームファクター、ネットワーキング手法、仮想化、各種支援技術の継続的な進化のおかげで、わずかな物理スペースで従来に比べ格段に高いコンピューティング能力を提供できるようになっている。
コンピューティング密度の向上は、設備投資や電力コストの削減を可能にする。しかし、高密度化にはマイナス面もある。具体的には、管理上の問題が発生する可能性があることと、システムハードウェアへの依存が大きくなることだ。
高密度化の一途をたどるハードウェア
高密度化の影響は、サーバやネットワーク機器、ストレージデバイスなど、コンピューティングハードウェアの展開において顕著に現れる。
これまでのプロセッサの高密度化を考えると、シングル、デュアル、クアッドコアプロセッサに続いて、オクタコア(8コア)以上のモデルが登場している。例えば、米Intelの「Intel Xeon Processor E7-8857」は12コア、「Intel Xeon Processor E7-8880L」は15コアだ。米IBMの「IBM System x3850 X6」のような4ソケットサーバが後者を搭載すると、プロセッサコア数は最大60個となり、それらのリソースを数十台の仮想マシンに割り当てることが可能だ。米Dellの「Dell PowerEdge M620」のようなブレードサーバも、12コアの「Intel Xeon Processor E5-2695」を2基搭載でき、その場合のブレード当たりのコア数は24個となる。
こうした傾向はサーバメモリにも見られる。メモリモジュールの大容量化が進み、ラックサーバのメモリ容量は、メモリモジュールや機能(メモリスペアリングやミラーリングなど)に応じて128G~1Tバイト強(+数Gバイト)以上に増加している。ブレードサーバのメモリ容量は通常、ブレード当たり32G~64Gバイトと少な目だ。だが、同一シャーシ(エンクロージャ)に6台や8台、あるいはそれ以上のブレードを搭載すると、メモリの総容量は直ちに増加する。
ストレージも大容量化と高速化が進んでいるが、メモリとストレージの境界は曖昧になりつつある。フラッシュメモリがサーバアーキテクチャの構成要素として定着しているからだ。例えば、SSD(ソリッドステートドライブ)は現在、ハイパフォーマンスストレージティア(「ティア0」とも呼ばれる)として、従来のSATA(Serial ATA)/SAS(Serial Attached SCSI)ディスクインタフェースで使用され、100G~1Tバイトの容量を提供する。
より高いストレージパフォーマンスを目的に、米Fusion-ioの「ioDrive2」のようなPCIe(PCI Express)ベースのSSA(ソリッドステートアクセラレータ)デバイスがサーバに搭載されることもある。ioDrive2は、ユニット当たり最大3Tバイトのフラッシュストレージを内蔵する。また、ストレージのピークパフォーマンスが重要な場合、ITプロフェッショナルは、カナダのDiablo TechnologiesのDDR3フラッシュストレージモジュールのようなTバイトクラスのMCS(メモリチャネルストレージ)デバイスの利用を検討する。MCSデバイスは、メモリスロットを従来のDIMM(Dual In-line Memory Module)と共有するものだ。
データセンターハードウェアのこうした急激な進化は、必ずしもいいことずくめではない。例えば、ハイエンドメモリ用にライザーカードを追加すると、サーバのコストが上がり、パフォーマンスが低下してしまう。ブレードで非ローカルメモリを使う場合も、同様にパフォーマンスに悪影響がある。低速なバックプレーンを介してメモリアクセスが行われるからだ。
こうした潜在的なデメリットにより、システムパフォーマンスのボトルネックは、従来のCPUスケーリングの制限から、メモリやストレージの問題に変わることになる。データセンターの高密度化に伴い、リソースプロビジョニングポリシーは、ボトルネックの変化に対応できるように変更しなければならない。
「われわれは最近、ストレージティアにおけるIOPS(1秒間当たりのI/O数)の管理という新しい問題に直面した」と、米Reach IPSのITディレクター兼アドバイザリーボードメンバーを務めるティム・ノーブル氏は語る。ハイパーバイザーレベルでのシックプロビジョニングと、物理レベルでのシンプロビジョニングを組み合わせると、ストレージバッファの問題が発生するため、ストレージティアリングの変更が必要になったという。「書き込みバッファが満杯になると、アレイに接続された全システムがクラッシュしたり、リカバリを要求したりする」
高密度化にはこうした落とし穴もあるが、このトレンドの根底にある考え方は明快だ。それは、「高度なハードウェアと仮想化を組み合わせることで、小規模なハードウェアで膨大なワークロードを処理できる」というものだ。
「私は新しいデータセンターのスペックを詰めているが、1台のブレードシャーシで運用できそうだ」と、米銃器メーカーMagpul IndustriesのITディレクターを務めるクリス・ステフェン氏は語る。「このシャーシでは200台近くの仮想マシンが稼働し、LANとSANも全て1台のラックに収まるだろう。10年前には、同じデータセンター能力を確保するには2000平方フィート(約186平方メートル)近くのデータセンタースペースが必要だった」
帯域幅と接続性の向上
ネットワーキングの進歩も、データセンターの密度について検討する上で重要だ。イーサネットの速度は最大100Gbpsへと向上しているが、高速ギガビットイーサネット(GbE)規格を採用している企業はごく少数にとどまる。同規格は主に、非常に大規模なデータセンターのネットワークバックボーンに採用されている。「高速イーサネットへの移行はあまり見られない」とステフェン氏。「別のIT用途にお金を掛ける方が得策だからだ」
実際、ほとんどのデータセンターでは、広く普及した1GbEが個々のサーバで使用され続けており、サーバの接続性向上とネットワーク仮想化に重点が置かれている。例えば、IBMの「IBM System x3950 X6」のようなサーバでは、ネットワークアダプター用のスロットが2つ用意されており、4ポートの1GbEアダプターを2枚搭載した場合は、サーバ当たり8個の1GbEポートが利用可能になる。同様に、ほとんどのラックサーバはPCIeベースのマルチポートNIC(ネットワークインタフェースカード)を搭載できる。
サーバが多数の仮想マシンをホストする場合、通常は高速イーサネット規格のポートに移行するよりも、ネットワークポート数を増やす方が生産性は高い。マルチポートは、ネットワーク接続の単一障害点を排除することでサーバの弾力性を高める。各NICポートは一般的に、別々のスイッチに接続される。これにより、スイッチの障害によって特定のサーバの全ての通信が停止してしまうのを防ぐ。
また、複数ポートを束ねることで、特定のワークロードの帯域幅を広げることもできる。複数のNICポートによるフェイルオーバーも可能だ。これは、ポートやスイッチでネットワーク障害が発生した場合に、ワークロードが他の正常なポートを使用できるようにするというものだ。
SDN(Software Defined Networking)やNFV(Network Functions Virtualization:ネットワーク機能仮想化)も、データセンターネットワーキングの密度と管理に影響する。SDNは、スイッチングロジックとスイッチングポートを分離し、スイッチの動作を一元的に分析、制御、最適化することを可能にする。このため、ネットワークは実質的に、より効果的あるいは効率的なネットワークトラフィック経路を“学習”し、その経路に応じて動作するようにスイッチを構成可能だ。SDNのトラフィック最適化を適切に実装すれば、帯域分割を多用することなく、ネットワークをより有効に活用できる。
これに対し、NFVは仮想化を利用して、一般的なサーバやスイッチで複雑なネットワーク機能やアプライアンスをシミュレートする。NAT(ネットワークアドレス変換)やドメインネームサービス、ファイアウォール、IDS(侵入検知システム)/IPS(侵入防止システム)、キャッシングといった機能を提供できる。NFVの目標は、高価な専用ネットワークアプライアンスを通常のサーバベースの機能で代替し、そうした機能の迅速な展開とスケーラビリティを実現することにある。この目標が達成されれば、NFVは、クラウドなどのセルフサービス環境にうってつけの技術になる。
高密度化が進む相互接続ネットワークで最適なパフォーマンスを確保するには、ネットワークの速度や複雑さにかかわらず、構成が極めて重要になる。「サーバの構成とスイッチの構成にミスマッチがあると、困ったことにパフォーマンスの問題が発生してしまう」と、Reach IPSのノーブル氏は語る。ワークロードが高性能なサーバに移動し、ピーク要求時に追加リソースが必要になると、この問題は一段と深刻になる。
熱問題への対応
データセンターの高密度化に伴い、ホットスポットの発生や空調の不備による熱問題の増大が予想される。幸い、最新のデータセンターでは、発熱が深刻な問題になることはめったにない。主に、ここ数年進んできた電力の効率化と熱管理対策の融合のおかげだ。
1つの重要な要素が、最近のサーバやコンピューティングコンポーネントの設計改良だ。例えば、プロセッサは通常、最も熱いサーバコンポーネントだが、新しいプロセッサ設計とダイ製造技術により、コア数が増えても、プロセッサの温度は大体一定に保たれている。Intelの6コアプロセッサ「Intel Xeon Processor E7-4809」は、最大TDP(Thermal Design Power:熱設計電力)(※)が105Wで、15コアのXeon E7-8880Lも同じく105Wだ。しかし、クロック周波数がこれらより高い15コアの「Intel Xeon Processor E7-4890」では、TDPは155Wとなる。
※プロセッサの設計上の放熱量を指す
また、データセンターの稼働温度は上昇している。データセンターはカ氏80~90度(セ氏26.7~32.2度)およびそれ以上の温度でも稼働でき、その場合、機器の信頼性への大きな影響はない。より高い温度にも対処できるように、熱管理設計に基づき、現在ではサーバに熱センサーの他、各ユニットから熱を除去する強力な可変速冷却装置が追加されている。「ほとんどの高密度ハードウェアプラットフォームは、温度を低く保つため、ジェットエンジンのように装置から空気を排出する」(Magpul Industriesのステフェン氏)
サーバの熱を除去する機能は、仮想化と相性が良い。仮想化はサーバ台数を大幅に削減し、データセンター内の熱を帯びた空気の量を減らすからだ。さらに、米VMwareの「vSphere Distributed Resources Scheduler(DRS)」や「vSphere Distributed Power Management(DPM)」のような仮想化支援技術は、リソース需要に基づいてワークロードをサーバ間で移動し、不要なサーバをスタンバイモードにすることができる。
その結果、データセンターにおいて、消費電力が多い大規模な機械式の空調装置を使って、稼働中のハードウェアが大量に並ぶ広大なスペースを冷やす必要がなくなる。代わりに、少数の高度に集約されたシステムが、コンテインメント(暖気、冷気の囲い込み)および冷却のインフラ(例えば、ラック列間やラック内に設置される冷却ユニットなど)を有効活用するようになる。
だが、データセンターの設備改良やお粗末な設計上の選択は、予想外のホットスポットの発生につながる恐れがある。「ティア4のデータセンターを使っていても、冷却などの運用上のリスクを軽減するように適切に設計されている保証はない」と、Reach IPSのノーブル氏は語る。高密度化が進むデータセンターでは、適切な熱管理、電力の効率化、コンピューティングリソースの有効活用は、綿密なシステム監視とデータセンターインフラ管理技術によって保証される。
ライセンシング対策も進展
x86やARMプロセッサのようなハードウェアの機能進化が仮想化に利用されることで、データセンターはさらに高密度化が進むだろう。しかし、ITプロフェッショナルは、ハードウェアの密度と使用率が、ソフトウェアのライセンシングやメンテナンスの問題に制約されることに注目している。
「仮想サーバは多くのソフトウェアライセンスを使用する。仮想サーバは立ち上げるのが簡単で、使われていなくても長く残るからだ」とノーブル氏は語る。「しかし、使われているかどうかにかかわらず、ソフトウェアのメンテナンスとパッチングが必要なことに変わりはない」
データセンターの規模が拡大し、ワークロードの密度が上がっても、ライセンシングとパッチの問題は、ITスタッフによる仮想マシンのライフサイクルおよびパッチ管理作業を支援するシステム管理ツールで軽減できることが多い。
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