法令も絡む、データセンターの最新事情
“冷却”だけじゃない 最新データセンター設備を取り巻く5つの論争
データセンターの入退室をカードキーで監視している企業はどのくらいあるのか。また、改造計画に「エコノマイザー」は含まれているのか。多くのデータセンター設備に見られる傾向と法令がもたらす懸念を解明する。
新旧を問わずデータセンターには、デザイン、構成、運用についてさまざまな選択肢がある。だが、その多くはトレードオフである。
新しい標準とベストプラクティスについては支持する人と非難する人がいる。また、潜在的な有害作用とROI(投資利益率)の低さはすぐ明らかになるとは限らない。建物に関する法令で義務付けられている基準であっても、議論の的になっているものがある。
「ホットアイルコンテインメント」(熱気の囲い込み)冷却方式のデザインと安全に関する懸念についての議論はなされて然るべきだろう。
1.適用除外が解除されるエコノマイザー
新しいデータセンターでは、ファシリティの拡張や単なる機器の入れ替えでも、建築部と検査官から、冷却システムに「エコノマイザー」と呼ばれるデバイスの設置を求められる可能性がある。エコノマイザーの設置は「ASHRAE 90.1 Energy Efficiency Standard」(米国暖房冷凍空調学会90.1エネルギー効率の基準)で規定されている。エコノマイザーは、屋外が寒いときに通常の冷却システムを迂回する冷却塔である。
だが、既存の全てのビルにエコノマイザーを設置することは論理的に不可能だ。米ニューヨークにあるエンパイアステートビルディングなど、大半の高層ビルではエコノマイザーを設置しようとした場合に問題が生じる。ビルに制限がない場合でも、長期的な省エネという観点では、特に改造のコストが見合わないだろう。
従来の冷却システムからエコノマイザーに切り替えるプロセスも問題になる。切り替えのプロセスにより、ミッションクリティカルなファシリティでは懸念が生じるだろう。
データセンターは2010年まで、建物のエネルギー効率要件を規定する「ASHRAE SSPC 90.1」の適用対象外となっていた。この適用対象外の解除は物議を醸した。その結果、規格委員会「ASHRAE SPC 90.4」が結成され、より現実的な省エネを実現するためのアプローチを策定することになった。この基準は少なくとも2015年まで公開されない。また監督官庁で採用されるまでには年単位の歳月を要するだろう。
ASHRAE SSPC 90.1にはごく限られた例外がある。データセンターの建築プロジェクトに関与している人は、管轄区域に最新の基準が適用されるかどうかを確認されたい。適用される場合には、計画への影響を調査することをお勧めする。
2.セキュリティ
セキュリティ違反の大半は、人間の不注意や不正行為に起因している。
データセンターの運営担当者は、手動による入退出を強制していない。そのため、多くのビルではカードキーが採用されている。だが、出勤時間/退勤時間の両方の記録にカードキーを使うことを強制しているデータセンターはめったにない。この方法では複数の人がキーを共有しようとすると、そのことが検出される。だが、緊急時に退出時間の記録を強制することはできない。危機的な状況で誰かを室内に閉じ込めることは法律で禁じられているからだ。ただし、多くの場合において、2つの操作を課すことはセキュリティの強化につながる。
PINコードの入力や生態認証(指紋認証、虹彩スキャンなど)によって、キーカードの誤用を防止しているデータセンターもある。2人のユーザーによる認証を義務付けると、同伴者がいなければデータセンターの資産にアクセスできなくなるため、セキュリティは強化される。だが、この方法は遅かれ早かれ実用的でないことが判明するだろう。ホットアイル/コールドアイルを監視しているカメラで侵入者を検出することは可能だ。だが、監視カメラで検出したときには侵入者は既にファシリティの中に入り込んでいる。遠隔で監視している暗証番号式の鍵をキャビネットの扉に設置するのは、セキュリティが厳重なファシリティの最後の砦となる。例えば、複数のテナントが利用しているコロケーションセンターでは、このような手法が用いられる。
データセンターのセキュリティ手法で最も大きな論争を引き起こしているのは入り口の出入管理だ。一般的に、この手法では入り口に2つのドアが用意されている。1つ目のドアが閉じるまで2つ目のドアを開けることはできない。また、人数計測システムによって、入り口の部分には一度に1人しか入れないようになっている。同じ目的を持った特殊な回転ドアを使用しているファシリティもある。データセンターでは大型の機器や複数の人の出入りがある。入り口の場所には十分なスペースを確保するか、ファシリティ内に入るためのセキュリティを下げた別の方法を用意すべきだろう。消防法では、緊急時にドアの施錠を速やかに解除することが義務付けられている。そのため、ほとんどの場合は別の非常時の脱出手段が必要になる。
3.電源タップの取替え
米Legrandの「Wiremold」などの電源タップは、さらに洗練された電力配分装置(以下、PDU)に取って代わられている。これはラックやキャビネットに収納されているデバイスに安定した状態で電源を供給することを目的とした措置である。今日のPDUには、電流引き込みの測定機能と温度/湿度の監視機能が搭載されている。また、キャビネットの扉に設置された暗証番号式の施錠も制御できる。最新機能は、各電源タップのコンセントのオン/オフを個別にリモートで切り替えて監視することだ。だが、この機能は必要なのだろうか。また、役に立つのだろうか。PDUは電源タップよりも高額だ。個々のコンセントのオン/オフを切り替える機能がもたらす価値はデータセンターによって異なるだろう。
データセンターは、個々のコンセントのオン/オフを切り替えることで、停電時にリモートでサーバのシャットダウン/再起動を行える。使用していないコンセントをオフにすると、未承認の機器が実行されることを防止できる。ただし、データセンターはインターネットに接続している。そのため、侵入者が重要な処理を実行しているサーバをシャットダウンする恐れとは常に隣り合わせだ。プライベートな内部ネットワークを使用できない場合、そのリスクはメリットを凌ぐ可能性がある。
個々のコンセントの電流引き込みを監視する機能は、フェーズのバランスを取る上で役に立つかもしれない。だが、多くの新しいコンピュータハードウェアでは、内蔵センサーからより多くの情報が提供される。また、大規模なデータセンターの全コンセントで生成されるデータ量は膨大だ。このデータを活用するには、堅牢なデータセンターのインフラ管理システムが必要不可欠である。
4.予防保守
予防保守も議論の的になるトピックだ。技術者が機器に対して何か作業を行うと問題が発生することがあるからである。だが、だからといって予防保守は不要ということになるのだろうか。
全ての機械設備や電子機器はいずれ壊れる運命にある。使えなくなることが分かっているなら、それに備えればよい。特に冗長なシステムがないデータセンターでは、予防保守は欠かせない作業だ。例えば、サービスレベルがティア1やティア2のデータセンターが、これに該当する。だが、ティア3やティア4のファシリティでも、事故による被害を最小限に抑えるために保守は必要だ。保守作業はITプロジェクトに合わせてスケジュールし、新しいサービス担当者については知識が豊富な社内スタッフが監督する体制を整えるのが望ましい。全てのレベルの問題にファシリティスタッフがすぐ対応できるような体制を整え、バックアップ/修復計画を整備することが肝要だ。
電力供給と空調設備が中断されることがないよう保守契約を結ぶことに加えて、サーバとスイッチのフィルタ清掃も保守作業に含める必要がある。赤外線スキャンを年1回実施すれば、熱を帯びている電気ケーブルを検出できる。そのようなケーブルを接続し直すことで、火災や突発的な事故を回避できる。
残念ながら、電撃防止エンクロージャには赤外線スキャンの窓が用意されているものは少ない。電力レベルによっては、アクセスパネルを開く前に、技術者が動きづらいアークフラッシュ保護服を着用しなければならないだろう。そのため、可能な限り赤外線スキャンの窓がある電子機器を設置することをお勧めする。
5.天井とのぞき窓
全てのデータセンターでオペレーションセンターからコンピュータ室をのぞける窓が付いている時代があった。だが、現在は大半の業務が別の場所で行われるようになっている。データセンターにオペレーションセンターが隣接している場合も、窓から見えるのは、ずらっと並んだキャビネットの裏側だ。窓は壁一面になければ、訪問者を監視する役目は果たさない。重要なものをくまなく見るには、ビデオカメラの方がはるかに役立つだろう。必要な場合は、訪問者に内部の様子を選択的に見せることもできる。
データセンターに天井がないことが一般的という時代もあった。低い位置に熱がたまっていたため、追加の消火システムが必要だった。天井は、熱風を空調の周辺に戻す流れを促すプレナム室の役割を果たしている。部屋の容量も制限されるため、ガス系消火システムにもプラスに働く。熱風を還気として使用する場合は、天井の材質とプレナム空間にあるものは、その粒子が空気中に入り込まないような作りになっていなければならない。また、床上げされていない環境では、天井が全ての頭上に設置するインフラで利用可能な縦空間を制限する。どの場合も、運用条件は美的条件に優先されるべきである。
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