企業での利用に利便性と課題をもたらす
「iPhone 6」「iOS 8」のビジネスユーザーだけが使える“至れり尽くせり”の新機能
米Appleの「iOS 8」「iPhone 6」「iPhone 6 Plus」は、機能やセキュリティ、IT部門による制御が向上している。しかし、それらに付随する課題も抱えている。
米Appleの最新のデバイスとOSは、パスコードによる保護、「Touch ID」、デバイス管理機能の拡張により、アップグレードを検討するに値するものとなっている。
米Appleがリリースしたばかりの「iOS 8」「iPhone 6」「iPhone 6 Plus」では、機能、セキュリティ、管理機能が向上しているが、幾つか課題もある。
デバイス管理とセキュリティの向上には、アプリ固有のパスコードによる保護、「Touch ID」の拡張、コンテンツ管理の新機能がある。これらの進歩は、ITユーザーから歓迎されるだろう。だが、IT部門は、これらの新機能をサポートするためにさまざまな取り組みを行わなければならない。また、ユーザーに課す制限についても判断が必要になる。これらの機能が組織にもたらす影響について理解を深めれば、新機能の受け入れ態勢を整えて新機能を最大限に活用できるようになる。
要となるのはセキュリティ
IT部門はiOS 8とiPhone 6のセキュリティに満足しているだろう。Appleは以前のバージョンのOSに搭載されていた機能をベースに、iOS 8とiOS 8デバイスに搭載されているアプリでデータ保護を強化している。例えば、「メール」「カレンダー」「連絡先」「メッセージ」などの標準アプリだけではなく、サードパーティー製アプリもパスコードで保護できる。また、S/MIME(Secure/Multipurpose Internet Mail Extensions)テクノロジーによって個別のメールの暗号化も可能だ。
iOS 8では証明書ベースの「シングルサインオン」(SSO)がサポートされている。つまり、使用するアプリを切り替えるたびに資格情報を再入力することなく業務アプリで認証を行うことができる。さらに、仮想プライベートネットワーク(VPN)への常時接続もサポートされている。そのため、何度もVPNに接続し直す必要はない。
AppleはiOS 8から、サードパーティーの開発者が作成したアプリにTouch IDを統合できるようにしている。「iPhone 5s」でTouch IDが初めて導入されたとき、その用途はiPhoneのアンロックと「App Store」での買い物に限られていた。だが、新しく公開されたTouch IDのAPIを使用すると、開発者は、Touch IDの指紋認証によるセキュリティ機能を活用する業務アプリを開発できる。
iOS 8搭載デバイスの管理
「iOS 7」のリリース以降、Appleにはモバイルデバイス管理(MDM)に真剣に取り組む姿勢が見られた。iOS 8では、多数の新しいITポリシーの導入によってMDMの機能が拡張されている。これらのITポリシーを使用すると、IT部門はデバイスを上手くコントロールできる。例えば、デバイスの名前をリモートで設定することができる。また、必要なときに機能を無効にしたり、データのワイプ/復元を行うことも可能だ。瞬時にアプリをロックすることもできる。さらには、ユーザーが独自の制限を有効にできないようにする機能もある。管理者向けに新しい監視機能も導入されている。この機能を使用すると、ユーザーが最後にデバイスをバックアップした日時を確認できる。
iOS 8ではデータ管理とコンテンツフィルターの機能が向上している。IT部門は「iCloud Drive」でドキュメントを開けるアプリを制御できるようになった(Appleは「iCloud」を拡張して、iCloud Driveと改名している)。また、「Safari」を使って企業のドメインからダウンロードしたドキュメントに対して、アクセスするアプリを制御することも可能だ。また、iOS 8搭載デバイスに電子出版物やPDFファイルなどのコンテンツをプッシュし、不要になったら削除できる。
これらの新機能を利用するにはMDMソフトウェアの更新が必要になる。ほとんどのMDMベンダーはiOS 8をサポートするための更新プログラムを提供しているか、更新プログラムを準備しているところだろう。MDMソフトウェアの更新プログラムが利用できるようになったら、IT部門は更新プログラムを適用して構成する必要がある。それからiOS 8とiPhone 6をサポートするために必要なあらゆる対策も講じなければならない。
米Microsoftの「Microsoft Exchange ActiveSync」を使用している場合、IT部門は追加の作業に対応することになる。具体的には、Exchange ActiveSyncの機能を利用するiOS 8の新機能についても準備を進める必要が生じる。例えば、iOS 8では「自動応答メッセージ」「不在設定」「空き情報」がサポートされる。これは全てExchangeの設定に影響する可能性がある。
データの共有と保存
iOS 8では、データの共有と保存が強化されている。また、「連係」機能により「iOS」搭載デバイスと「Mac OS X」搭載デバイスがシームレスに統合されるようになる。その1つが「Handoff」だ。この機能を使用すると、作業を開始したデバイスとは別のデバイスを使って、作業の続きを再開することが可能になる。例えば、iPhoneで書き始めたメールを「MacBook Pro」で仕上げることができる。「AirDrop」の機能も拡張されている。インターネット接続がなくてもiOS搭載のモバイルデバイスとMacの間でドキュメントの転送が可能になる。また、同じWi-Fiネットワークに接続されていれば、iPhoneとペアリングしたMacで電話をかけたり、電話を受けたりすることもできる。
連係機能からは、全面的にデバイスを統合するためのAppleの取り組みが見て取れる。だが、企業に対して十分な効果があるかどうかは分からない。IT部門は、これらの機能をロックダウンすべきか否かを判断しなければならない。ロックダウンが必要と判断した場合には、その手段を検討するという新たな課題に直面することになる。
iCloudも拡張されている。その主眼は、米Dropboxの「Dropbox」やMicrosoftの「OneDrive」などのサービスと歩調を合わせることにある。iCloud Driveを利用すると、Mac OS X、iOS 8、「Windows 7」搭載デバイスにある任意の種類のファイルを保存/取得/編集できるようになる。また、ファイルは全てのデバイスで同期される。iCloud Driveとの統合は、企業に新たなセキュリティの問題をもたらすかもしれない。だが、IT部門は、マネージドデバイスでiCloud Driveを使用不可にして、業務アプリがiCloud Driveを使用する方法をフィルター管理できるはずだ。
Apple PayとNFCテクノロジー
iOS 8とiPhone 6では「近距離無線通信」(NFC)のサポートが追加されている。これは「Apple Pay」という新しいモバイル支払いプラットフォームの構成要素だ。米国では既に22万を超える店舗がApple Payに登録している。Apple Payをサポートするため、iPhone 6にはセキュリティが確保された素子チップが搭載されている。このチップは支払い情報を暗号化して保存する役割を担っている。支払いプロセスでは各トランザクションの認証にTouch IDセンサーを使用する。デバイスが紛失または盗難に遭った場合には、全ての支払い処理を一時的に停止することが可能だ。
企業は、会社所有のデバイスで従業員によるApple Payの使用を許可するか否かについても判断を迫られるだろう。また、従業員がデバイスを使用しなくなったときに支払い情報を削除する方法についても検討しなければならない。
現時点では、NFCはApple Pay専用のテクノロジーとして搭載されている。Touch IDと同様、Appleは最終的にこの制限を緩めることが予想される。そのときが来たら、さまざまな可能性が広がるだろう。例えば、NFCは企業のIDカードに取って代わるかもしれない。名刺に埋め込まれているデータにアクセスしたり、製品ID(発送日や連絡先情報などあらゆる情報を含む)を読み取ったりする用途に使える可能性もあるだろう。ただし、このテクノロジーが利用できるようになる時期は明らかになっておらず、どの程度普及するかも未知数だ。
IT部門への注意喚起
iOS 8、iPhone 6、iPhone 6 Plusには、企業に恩恵をもたらす機能が搭載されている。また、セキュリティとデバイスの管理が強化されている。より多彩なアプリを柔軟に開発することが可能になった。非常に良い話に聞こえるかもしれないが、IT部門は、新しいテクノロジーに付いて回るあらゆる実装と管理について考慮しなければならない。また、iOS 8搭載デバイスで使用されるであろう新しいコンシューマーアプリの調査も必要だ。一見すると、iOS 8とiPhone 6、iPhone 6 Plusが大きな問題を引き起こすとは思えないかもしれない。だが、詳しく調べると、これらに順応するためにIT部門が対応すべきことは山積みしていることが分かるだろう。
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