“第2のBlackBerry”にもなりかねない
「Google Glass」イメージアップ大作戦は成功するのか?
米Googleのウェアラブル端末「Google Glass」は、プライバシー保護の面で世間から痛烈な批判を受けている。その強い風当たりを和らげるため、同社は新たな一手で勝負に出た。
米Googleは「Glass at Work」というプロジェクトを進めることで、“スマートグラス”がコンシューマー市場で直面している問題点を打破する狙いだ。企業を対象としたこの新しい試みによって、現場の作業員や製造業者、エンジニアは、両手をもっと自由に使えるようになりそうだ。
GoogleのGlass at Workは、ウェアラブル端末「Google Glass」の対象を一般消費者から企業へ移す新しいイニシアチブである。
Glass at Workでは、Google Glassの業務用アプリを開発するパートナーを認定する。エンタープライズの分野で人気の高い業務用製品を作っている企業が参加することによって、さまざまな作業を簡単にし、従業員の生産性を上げるようなアプリの開発が期待される。
Googleが視野を広げようとするのも不思議ではない。同社がいかに社会の認識を覆そうとしても、Google Glassに対する世間の風当たりは依然として強い。レストランでは使用が禁止され、装着者は他人から罵声を浴びせられる。劇場で映画を録画しようとしたと疑われて、米連邦捜査局(FBI)の捜査員に職務質問されたGoogle Glassユーザーもいた。Google側も、不作法な「glasshole」(グラスばか)にならないための注意事項を発表した。
世間におけるイメージには明らかに問題がある。
Google Glassの問題点
Google Glassに対する批判の矛先の多くはプライバシーの問題に向けられている。簡単に盗撮や無断録音、録画ができてしまう可能性を不安視する声は多い。装着者本人も、Google Glassの機能をフル活用したければ、自身のプライバシーをかなり犠牲にする覚悟がいる。
プライバシーの問題は、Google Glassの業務利用においても重大だ。意図的でないとしても従業員同士が互いにスパイし合うことが簡単になってしまう。個人的な会話の中で機密情報が話題に上ったとき、Google Glassを装着していたとしたらどうだろうか。記録する気があろうとなかろうと、それが可能な機能があることは無視できないだろう。
だが、問題はプライバシーだけではない。企業にとってはセキュリティも重要事項だ。Google Glassは機密情報を漏えいしやすい手段になり得るだけでなく、ウイルスやハッカーの入り口にもなる。現在のようにセキュリティ機構が欠如した状態は多大なリスクとなる。
また、Google GlassがIT部門の既存の管理インフラにどのように適合するかも未知数だ。まだ開発の途中であり、どんなサポートが必要になるかも明らかになっていない。IT部門は、会社のリソースを守りながらGoogle Glassを管理する方法を見極めていく必要がある。
Google Glassの業務利用を認めると、法律上の問題が起こることも考えられる。例えば、Google Glassによって作業者が注意散漫になったり、作業に危険が及んだりした場合だ。Glassの使用が原因で従業員(装着者本人とは限らない)が業務中に負傷した場合、労災補償などの問題に発展する可能性もある。従業員がGoogle Glassを装着して社用車を運転したり、就業時間内に車を運転したりして事故を起こした場合、重大な賠償問題につながりかねない。
Google Glass自体にも課題が残る。バッテリー持続時間が短く、推定稼働時間が3時間以下という点はよく指摘されている。1500ドルという価格は高過ぎるという意見も多く、それは業務用としても同じことだ(ただし、実際の価格は確実に下がると思われる)。極小インタフェースと限られた処理能力という条件下での操作性も課題の1つだ。また、ファッションの観点からあまり身に着けたくないものになると、最大限に活用しようとしない従業員も出てくるだろう。
Google Glassの利点
Google Glassには課題も多いが、仕事に役立つ可能性は大きい。
ケーブルテレビ会社から救急隊に至るまで、現場で作業する人がウェアラブル端末を利用すれば、両手を使う作業を中断することなく情報の送受信ができる。音声コマンドと簡単なタッチ操作1、2回で、作業対象から目を離すことなく、さまざまな情報を確認したり、複雑な手順を1ステップずつ進めたりできる。
Google Glassには、同僚との話し合いやデータの送受信、重要な情報へのアクセスといった業務プロセスを効率化できる可能性もある。両手が自由になるので、デスクから離れた場所でも説明書や他の端末を持ち歩かずに作業できる。現場で回路図を参照したり、作業の完了を確認するために写真を撮ったりすることも可能だ。
GoogleのGlass at Workの恩恵を受けられそうな業界として製造業も考えられる。製造設備の状態を監視して応答するアプリがあると便利だ。例えば、技術者が設備の状態を確認したり、アラートに対応したり、緊急時に操業を停止したりできる。部品や製品を識別するアプリもあるといい。
Google Glassでは、AR(拡張現実)も実現可能だ。例えば、エンジニアは分厚い設計図や仕様書を持ち歩かなくても、建物の中を歩くだけでどこに電気配線やエアダクトがあるか見える。後で共同作業を行うために、それらにハイライトやタグを付けることも可能だろう。
Glassイニシアチブ
Google Glassは一般ユーザーを念頭に開発が始められたものの、幾つもの業界がいち早く参画に乗り出している。当然ながら、この活動の最前線にいるのは、現場で働く従業員を抱える企業だ。だが、広く普及するまでの道のりは長い。APIプラットフォームもまだ確立していない現時点では、企業もメガネ型端末の開発に多大な投資をしたがらない。また、このような端末には画面サイズをはじめとする制約がある。開発者はどのようなデータをどのように表示するか、慎重に選ぶ必要がある。
とはいえ、企業側はGoogle Glassを真剣に考えており、Googleも企業向けに真剣だ。Googleは同社のGlass at Workプログラムによって、企業がGoogle Glassとその可能性を研究することを支援する。Glass at Workプログラムは、Glass認定パートナーに企業向け製品とサービス(技術サポートなど)の提供を認可することで、この活動の促進を目指している。
Googleにとってのリスクといえば、一般消費者がGoogle Glassをジャックハンマーや聴診器のような専門性の高い業務ツールと見なし、自分の使うものではないと思い始めることだろう。スマートフォンが「BlackBerry」や「PalmPilot」の業務利用から始まったことを考えれば、GoogleのGlass at Workが同じ道をたどると予想されることも不思議ではない。ただし、BlackBerryやPalmPilotと違い、Google Glassは一般消費者を念頭に開発されているため、業務利用に対応するには、これからやるべきことがまだ多く残されている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
“攻撃者優位”なサイバーセキュリティ、全ての「穴」をふさぐ方法とは? -
製品資料
実際に悪用される脆弱性は4%前後 優先的に対処すべき脆弱性を把握するには? -
製品資料
HubSpotの機能を拡張する法人データ活用法 -
製品資料
面倒で非生産的な「名寄せ」作業 高精度&高効率に実施するには? -
製品資料
名刺管理には「その先」がある 成果のでない営業活動から脱却する秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
ISMSの“コンサル丸投げ”が招く数千万円の無駄 NTTドコモビジネスの脱出劇
-
2
「VMware離れ」は本当か 3000社がVCF 9にかじを切った現実的な理由
-
3
仮想化環境の死角を“未知の脅威”が狙う時代――新たな敵をどう見破るか?
-
4
なぜ人はいるのにDXが進まない? ライオンも直面した“老害”レガシーシステム
-
5
「Microsoft 365」が乗っ取られる 跡形もなくMFAを破る手口
-
6
ただなのに「12時間以内の復旧」も要求 無償OSSに商用レベルを求める企業の末路
-
7
AI全部入り「Microsoft 365 E7」に企業が二の足を踏む訳 移行意向はわずか4%
-
8
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
9
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
10
SESや多重請け案件の“負のループ”を脱却、中小のシステム開発会社を救う策
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
2
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
3
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
4
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
5
コスト分析で見る「デバイス復旧」の代償 損失額から導きだされた投資戦略とは
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
「結局、一部の人しか使わない」 AI活用が業務に定着しない根本的な理由
-
8
Macの安全神話は崩壊? 最新の脅威動向から見えた攻撃のトレンドと有効な対策
-
9
3分で分かる経理DX 富士通が約20%の業務効率化を実現した方法とは
-
10
ランサムウェア攻撃を“二重の防御構造”で防ぐ、クラウド型基幹システムの実力
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー