2015年、加速するデータセンター関連企業の再編(後編)
iOS提携を組んだAppleとIBMが提供する“App Storeでは見つからないアプリ”とは?
2015年、サーバ企業とストレージ企業の大規模な合併と買収が行われる年になると予測する専門家がいる。大手ベンダーである米IBMや米Apple、新興企業である米Violin Memoryなどの動向、注目製品を紹介する。
データセンター向けハードウェア、ソフトウェア、サービス市場のベンダーの格付けは絶えず変化している。米ボストンの451 Researchによる「Technology M&A Outlook Report」(テクノロジー分野のM&A展望リポート)では、2014年はテクノロジー分野の合併と買収の総額が4390億ドルに達したが、2015年もその勢いが衰えることはないと予想している。
前編「データセンター向け製品ベンダーガイド、2015年に合併/買収する企業は?」に続き、専門家が注目しているデータセンター向け製品と企業を紹介する。ベンダーのロードマップを知りたい場合も、ビッグデータがもたらすボトルネックを解決するための新しいテクノロジーを探している場合も参考にされたい。米TechTargetのアナリスト、メインフレームの専門家、Linuxのトレーナーなどのプロフェッショナルが、お勧めする注目すべき企業である。
IBMのロードマップで明らかになった重要な次のステップ
米IBMには期待していないという人もいるが、同社が絶望から立ち上がって革新を巻き起こすなら、今後数年は非常に面白くなるだろう。
IBMは長い歴史のある大手IT企業で、他社にはまねできない豊富なハードウェア、ソフトウェア、サービスを提供している。だが、安価なマイクロチップや分散コンピューティングの台頭などを始めとするITを取り巻く状況の変化によって、IBMの地位は試されている。そして、その状況は2015年も続くだろう。
レイオフ、クラウドコンピューティングに関する問題、悪化の一途をたどる収益報告による大きなプレッシャー、米GLOBALFOUNDRIESへの半導体事業の売却など、IBMは苦境の真っ只中にいる。そのため、IBMは赤字路線をさらに突き進むことが予想される。
このような苦難の下で策定されるIBMのロードマップは、同社の顧客にとって憂慮すべき結果を招く恐れがある。IBMは、世界中のほとんどの大企業のコンピューティングのバックボーンとなっている。メインフレームの質やセキュリティ、可用性を損なうようなことがあればビジネスにおいて致命傷となる。
IBMのロードマップによって、他のメーカーがメインフレームのプロセッサを製造できるようになるのだろうか。それとも、メインフレームコンピューティングを競争に耐え得る製品にするために積極的な対策に打って出るのだろうか。ただ、x86サーバでは経済的な「IBM z Systems」が実行されるようになるかもしれない。
あらゆる面からDCIMにアプローチするFuture Facilitiesの製品スイート
英ロンドンに拠点を置くFuture Facilitiesは、製品分野で2015年に勢いを増すことが予想されるデータセンターソフトウェア企業だ。
データセンターインフラ管理(DCIM)市場には、あらゆる種類のデータセンター企業がひしめき合っている。ハードウェアとソフトウェアのラインアップが豊富な大企業、特定の技術を専門とする新興企業、データセンターの予算分野に進出しようとしている境界ソリューション企業、そしてそれらの中間に位置付けられる企業全てだ。
Future Facilitiesは数あるDCIM企業の1つだが、DCIMの問題にあらゆる面で適切な対応をしているように見受けられる。Future FacilitiesはDCIMが単なるITの問題や設備管理の問題にとどまらず、ビジネス上の懸念にもつながっていることを理解している。
Future Facilitiesは予測モデリングテクノロジーに基づくソフトウェアスイートを提供し、DCIMの役割を拡張しようとしている。企業はデータセンターの設計段階から同社の「6SigmaDC」を統合して使用できる。また、運用設備に追加して、利用可能なキャパシティーを測定したり、電力消費を追跡したり、電力節約の効果を予測したりすることもできる。
この変化の激しい市場で、同社は米Nlyte、仏Schneider Electric、米Emerson、IBM、米CA Technologies、米BMC Softwareという競合と十分に渡り合うことができる。だが、DCIM市場のメーカーや製品は出入りが激しく、消滅した企業もある。例えば2014年には米Power Assureが姿を消している。
低コストで信頼性と耐久性を実現したViolin Memoryのフラッシュアレイ
米カリフォルニア州サンタクララに拠点を置くViolin Memoryは、その創造性からオールフラッシュアレイ市場において2015年に注目すべき企業の1つだ。
Violin Memoryはクリティカルなビジネス情報とアプリケーションのストレージを管理するパフォーマンスの高いオールフラッシュアレイを提供している。
SSD(ソリッドステートドライブ)の低価格化が進み、ソフトウェアによって長いスパンでフラッシュの耐久性と信頼性が高まるにつれ、オールフラッシュストレージアレイの人気は上昇している。フラッシュストレージの応答時間はHDDよりもはるかに速い。大容量のHDDと少量のフラッシュをハイブリッドアレイに搭載しているベンダーもあるが、待機時間が重要なアプリケーションではオールフラッシュアレイに勝る選択肢はない。
Violin Memoryの「Flash Fabric Architecture」は最適化アルゴリズムをハードウェアに統合する。これはシリコンダイを最適化する独創的なアプローチで、同分野の競合との差別化要素となっている。Violin Memoryのフラッシュ製品は米Oracle、米Microsoft、独SAPの製品と互換性がある。オールフラッシュアレイのラインアップには、フラッシュタイプがMLCとSLCのプライマリストレージ「Violin 6000」、エンタープライズデータサービスソフトウェアが付属する「Concerto 7000」、Microsoftと共同開発した「Windows Flash Array」などがある。
Violin Memoryのオールフラッシュアレイは、ケーブル/配線メーカーの仏Legrandを始めとする企業、オーストラリア演奏権団体やオーストラリア録音権団体などの非営利団体が利用している。
OpenDaylight SDNの下に一致団結するデータセンター企業
2015年に注目すべき組織として、単一の企業以外に、同じプロジェクトに取り組んでいる複数の企業を紹介したい。
Linux Foundation主導で行われている「OpenDaylight Project」には業界のプロバイダーがメンバーとして名を連ねている。これは、SDN(ソフトウェア定義のネットワーク)に取り組むプロジェクトで、SDNに存在するプロプライエタリなコンポーネントの排除を使命としている。
Linux Foundationは共通の管理プラットフォームの構築と相互運用性の実現に取り組んでいる。米Brocade、Cisco、米Citrix、米Dell、スウェーデンのEricsson、米HP、IBM、米Intel、米Juniper、Microsoft、Red Hatはプラチナメンバーとして、VMwareなどの企業がゴールド/シルバーメンバーとして参加している。
Linux Foundationが2014年9月にリリースしたオープンソースソフトウェア「Helium」は、企業がSDNコンポーネントのスタックをオンデマンドで作成できるようにするためのものだ。また、オープンソースのクラウドフレームワークであるOpenStackとも統合する。
「OpenDaylight SDN」は単なるネットワーク関連の便利なテクノロジーでは終わらない。空き領域や電力消費、必要な人的リソースの細分化をもたらし、各コンピュータのネットワークと資産を再構成する。市場には無数のソリューションが存在するが、課題となるのが相互運用性だ。データセンターと、オープンなシステムを求めているその所有者が必要なものを提供すべくベンダーは試行錯誤している。OpenDaylightはメンバー企業と協力して、SDNのメインストリーム化に向けて大きく前進している。
IBMとAppleの提携から多くのメリットは得られるのか
2015年、警戒しながらも楽観視したいのはIBMと米Appleの提携によって生まれた「IBM MobileFirst for iOS」ソリューションだ。この意外な組み合わせは面白い化学反応を起こすかもしれない。だが、企業ユーザーにどのくらいメリットがあるのかは未知数だ。
IBMとAppleは2014年に100個のアプリを提供することを約束していた。にもかかわらず、提供されたのは10個でユーザーを落胆させた。だが、好意的な反応を示しているユーザーもいる。
「AppleとIBMにとって重要になるのは、提供するデバイスを、汎用的なPCの代替品ではなく、付加価値のある特定の作業専用アプリの集まりとして顧客に受け入れられることだ」と話すのは、米ニューハンプシャー州ハンプトンの調査会社Technology Business Researchでアナリストを務めるエズラ・ゴットヘイル氏だ。
IBMの競争上の優位は、新しいアプリの設計全体と各ユーザーの仕事に統合できることにあると、ゴットヘイル氏は見ている。IT部門は、デバイスにあまりコストを掛けることなく、企業のさまざまなデータストアに保存されたデータの価値だけでなく、デバイスを使用する従業員の価値そのものも高めることができる。
「頻繁に外出する従業員やクライアントPC以外のデバイスも多用する従業員にポータブルかつインタラクティブなApple『iOS』搭載デバイスを支給すれば、バックエンドの分析データを利用して企業の現状について深い洞察を得ることが可能になる。IBMとAppleはそれを経営幹部にアピールできる」(ゴットヘイル氏)
また、多くのエンドユーザー組織は社内のモバイルアプリに何度も同じ機能(ロケーションモジュールや「クリックしてSMSを送信する」モジュールなど)を開発することは求めていないという声もある。
だが、米サンフランシスコのLopez Researchでアナリストを務めるマリベル・ロペス氏は、多くの基本機能を備えつつ個人がカスタマイズする余地も残されているアプリを作成できるのは魅力の1つだと語る。AppleとIBMが共同で開発するiOSアプリがAppleの「App Store」で販売されることはないと同氏は考えている。これらのアプリはカスタマイズの自由度が高く、カスタマイズされたアプリには競争上の優位性があるためだ。
「競争上の優位性をもたらすアプリは5~15%になる。そのようなアプリをユーザーがApp Storeで見つけることは絶対にできない。AppleとIBMが開発できるのは、エンタープライズアプリストアで見かけるような、興味深く便利だが戦略的ではないアプリだ」(ロペス氏)
この新しいiOSベースのアプリが2015年に普及する鍵となるのは2015年1月中旬に発表されたIBMの新しいメインフレーム「IBM z13」だ。IBM z13は、Appleの「iPhone」や「iPad」のモバイルトランザクションに対応するよう高度に調整されており、1日に25億件ものトランザクションを処理することができる。
IBMがこれからリリースされるアプリに同社の「Watson」を適切に組み込めれば、音声テクノロジーの追加はプラスに働くだろう。だが、組み込みに失敗した場合はかなりの痛手になる。Microsoftなどの競合は「Cortana」を顧客/エンタープライズリソース管理製品と「Windows 10」に組み込んでいる。また、Appleは同社のビジネス向けの製品と連係するよう「Siri」をさらに進化させるだろう。
大手企業のアプリケーションストリーミングに対抗するNumecent
ソフトウェアテクノロジー企業である米Numecentは、アクセス元のデバイス本来の力を活用することでアプリケーションをストリーミングせずに中央のデータセンターから配信する方法を開発した。このアプローチは「クラウドページング」と呼ばれ、中央のデータセンターからサイズの大きなアプリケーションを米Googleの「Android」やAppleのタブレットに配信することができる。例えば、米Adobeの「Adobe Photoshop」や米Autodeskの設計ソフトウェアなどだ。
Numecentのクラウドページングテクノロジーでは、ユーザーのコンピュータで実行する仮想化済みのソフトウェアの指示を転送する。Numecentが仮想デスクトップを配信するアプローチでは、アプリケーションのパフォーマンスが向上すると同社は主張する。中央のデータセンターからデスクトップに配信されるアプリケーションに対する主な不満は、特に画像や動画が多いコンテンツでパフォーマンスが悪くなることだ。クラウドページングテクノロジーは、データセンターでアプリケーションをホストすることでセキュリティと一元管理を実現しながら、ネイティブアプリケーションに匹敵する読み込み時間とパフォーマンスを実現するように設計されている。
Numecentのクラウドページングサービスは、Microsoftの「App-V」やVMwareの「ThinApp」など大手データセンターソリューション企業のアプリケーションストリーミングと競合する。Numecentの製品ラインアップには「Native as a Service」(クラウドサービスとしてネイティブなアプリケーションを配信)のクラウドページングやクラウドページングソフトウェアスイートの「Application Jukebox」などがある。
Numecentの顧客は企業や通信会社、マネージドサービスプロバイダー、独立系ソフトウェアベンダーだ。Numecentのテクノロジーは、元は米国国防高等研究計画局と共同で開発されたものだ。
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