ビジネスユーザー向けのツールが拡充
「地図+データ」は言葉の壁を超える、ロケーションインテリジェンス活用法
地理情報の活用はとりわけ新しいものではない。だが、「ロケーションインテリジェンス」(LI)と呼ばれる一般のビジネスユーザー向けの手軽なツールによって、新たな形で地理情報の活用が拡大している。
スイスに本部を置き、自然災害や人災の犠牲者を救援する国際人道団体、Medairの英国支部が最近実施した資金調達イベントでは、豊富なデータが盛り込まれた地図が、寄付を取り付けるのに大きく貢献した。
Medairのある職員は、英語が少ししか話せないフランス人のイベント参加者と話した。言葉の壁のために、Medairの活動を支援する意義を説明するのは難しかった。しかし、この参加者は、内戦が続くシリアからレバノンに逃げてきた難民の救援に、どれだけの費用や他のリソースが投入されているかというデータが図示された地図を見ると、その意義を理解した。
「データは相手の興味を引くように提示すれば、説得力を発揮してくれる」と、Medairの技術・イノベーション責任者を務めるロブ・フィールディング氏は語る。「寄付者にデータをそんな風に見せれば、すぐに話が通じる。『Microsoft Excel』の表ではそうはいかないだろう」
ロケーションインテリジェンス(LI)ソフトウェアに価値を見いだしているのは、援助団体だけではない。近年ではツールが使いやすくなったおかげで普及が進み、多くの企業が、位置情報(ロケーション)データで何ができるかを理解するようになっている。
故きを温ねて新しきを知る
マッピングデータの考え方は必ずしも新しくない。地理情報システム(GIS)は数十年前からある。ただし、従来はニッチな存在だった。特別な導入・運用トレーニングが必要で、一般企業が使うことはめったになかった。投資対効果が明確ではなく、ユーザーに専門的な知識やノウハウが要求されたからだ。しかし、ここ数年のビッグデータの爆発的増加に伴い、新しいデータタイプが大量に登場し、その多くは地理空間要素でタグ付けされている。企業は、この空間データをどうすれば活用できるかを知りたいと考えるようになっており、ベンダーはこの要望に応え、便利なツールを提供している。
「LIは、今ではよく話題になっているが、従来のGISを使うとなると、人々はおじけづいてしまうかもしれない」と、米AKRFのシニア技術ディレクター、ケネス・マック氏は語る。同社は、地方自治体に地域開発の影響について助言する環境コンサルティング会社である。
同氏は、従来のGISは学習の負担が大きかったと指摘する。ユーザーフレンドリーではなく、視覚的な訴求力も欠けていたという。しかし、今日のツールはもっと洗練されている。AKRFは、米CartoDBのWebベースのLIツールを使って、地理データを全社で共有し、プロジェクトの交通データをマッピングしている。マック氏は、このソフトウェアはJavaとHTMLを中心に構築されていると説明する。これは、ほとんどのプログラマーが開発作業に対応でき、フロントエンドのWebインタフェースが、技術に詳しくないユーザーにもなじみのあるフォーマットだということだ。
マック氏にとって、マッピングツールを使ってこうしたデータを可視化するのは当然の取り組みだ。
「われわれの仕事では、“ロケーション”は、従業員が扱う全ての情報の重要な入り口だ。そのため、従業員がビジュアルでないデータベースを検索したりすることなく、地図を出発点にできるようにしている」(マック氏)
使いやすいソフトウェアを目指すベンダー
米Forbes誌のForbes Insights部門が最近行ったLIソフトウェアのレビューでは、ベンダーの間で非技術系ユーザー向けツールを開発する動きが広がっていることが分かった。レビューのリポートをまとめたリンダ・ブレンディッシュ氏は取材に対し、「使いやすいツールを導入した企業では、ロケーションアナリティクスが全社的に浸透し、これまではこの分野とほとんど無縁だった従業員にも利用されるようになっている」と電子メールで述べた。その結果、こうした企業ではあらゆるレベルでより良い意思決定が可能になっているという。
リポートでは、「保険会社が加入者のリスクを郵便番号や地域単位で一括して評価するのではなく、LIを利用して加入者ごとに固有のリスクを評価している」ことや、「営業部門がLIによってターゲット顧客を選定したり、スタッフへの担当地域の割り当てを最適化したりしている」ことが説明されている。
「この技術は何が変わったのかといえば、より一般ユーザーに近いものになり、ユーザーフレンドリーになったわけだ」(ブレンディッシュ氏)
しかし、新世代のLIツールはまだ発展途上であり、クリアしなければならない課題もある。マック氏やフィールディング氏に加え、他のLIユーザーも「LIソフトウェアを従来のビジネスインテリジェンス(BI)ツールに接続するのは難しいことがある」と指摘している。機能が限られた既製のコネクタを利用するのに苦労したり、独自にコネクタを作成したりしなければならないかもしれない。
いずれにしても、今回取材したユーザーは、「LI技術には、分かりやすいメリットがあると思う。それは、ごく簡単にデータを可視化できることだ」と話している。
「ほとんどの人は地図を眺めるのが好きだ。人々は、できれば地図を見ながらデータを使いたいだろう。情報を可視化できる魅力的な方法だからだ」(マック氏)
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