「AI会話」の進歩を見る【前編】
今後5年で営業メールの相手はAIのチャットボットになる
今後5年以内には、自然言語処理や深層ニューラルネットワーク、会話機能を備えた「人工知能」(AI)が、あらゆる業務アプリケーションに普及するだろう。
「人工知能」(AI)のチャットボットはまだ当たり前のものにはなっていない。だが、これから5年以内には、セールス担当者からのメールが人間以外のものから発信される確率はかなり高くなるだろう。
例えば、カスタマーサービスを自動化するソフトウェアに関心を持ったとする。あなたはベンダーのWebサイトへ行き、連絡先情報を入力してソフトウェアのライブデモに申し込む。すると、セールスアシスタントからメールが届き、さらに詳しい情報はいらないかと言ってくる。
返信しないでいると、次の日もセールスアシスタントからメールが来る。その翌日にもメールが来て、再三のメールをわび、笑顔の顔文字まで付いている。あなたは少し申し訳なくなり、この人間的で根気強いセールスアシスタントに返信する。ところが、このセールスアシスタントは人間ではなく、実はチャットボットなのだ。
このようなシナリオは、既に「Conversica」などのバーチャルアシスタントプラットフォームによって現実になっている。今はまだ広く普及していないが、5年以内には、顧客が関心を示した商品やサービスについてメールを送ってくる送り主がAIのチャットボットとなる確率はかなり高い。顧客の意図を認識して自然な会話を模倣する技術の進歩はそれくらい目覚ましい。
事実、AIは近年急速に進歩しており、米調査会社Gartnerは、2020年までに自然言語処理や深層ニューラルネットワークや会話機能を備えたAIがあらゆる新商品に浸透すると予測している。
他のアナリストたちもこの予測に同意する。IBMの「Watson Conversation API」やGoogleの「Cloud Natural Language API」などのプラットフォームが登場して開発が可能になったおかげで、画像認識、機械学習、AIチャットボット、音声認識など、AIと呼ばれる範囲に含まれるテクノロジーは、急速にあらゆる業務アプリケーションに普及することが予想できる。
「これから5年以内には、あらゆる業務アプリケーションがスマートアプリケーションになるだろう。そうなったら、スマートでないアプリケーションを誰が使うだろうか」。米調査会社IDCで認知システムとコンテンツ解析のリサーチディレクターを務めるデイブ・シャブメル氏はそう話す。
AIへの期待、擬人化の落とし穴
まだ遠い未来の話のようなAIが間もなくあらゆる製品に組み込まれるというと、驚くかもしれない。だが、AIの種は既に多くの業務アプリケーションに根を伸ばしており、アプリケーションのエコシステムに深く根付く日は近い。
AIの現状に関するウェビナーを最近主催したGartnerのバイスプレジデント、トム・オースティン氏によると、AIの基礎技術である深層ニューラルネットワークと画像認識や音声認識、自然言語処理を組み合わせ、適切に構築した分析モデルにデータを投入すれば、効率的なコンテンツ分類が可能になるという。
とはいえ、『スタートレック』に登場する“データ”のようなアンドロイドが手に入るわけではない。それは企業がAIに求めるべきものとは違う。オースティン氏によれば、そうしたSFファンタジーに影響された一種の「擬人化」幻想のせいで、AIとその能力に関する誤った期待が広がっているという。「魅力的な話を作り上げ、成功談ばかり話して失敗談を隠す」ようなAIの宣伝には要注意だ。
「AIは自分で考えはせず、常識もない。自己認識もなければ意識もない。そういうことを吹聴して回る人がいたら、あなたをだまそうとしているか、事実を十分に理解していない」とオースティン氏はウェビナーで述べた。
実際、AIを提供すると言いながら人工知能という言葉を誤用したり、漠然とした意味で使ったりしているベンダーも多い。IDCのシャブメル氏によれば、現実にアプリ開発者が始めているのは、従来のルールやヒューリスティクスの代わりに、自動データ収集や慎重なデータ投入によって構築した機械学習統計データモデルを使うことだという。この変化によってアプリケーションは一層スマートになる。
「以前は“このイベントが発生したらこれを実行”と指示するルールセットが必要だった。そうしたルールやヒューリスティクスではなく、的確なデータで構築したデータモデルに基づくアプリケーションは、学習による自己修正が可能だ。そうすることによってシステムはどんどんスマートになり、うまくいかなそうな部分を予測する能力を高めていく」(シャブメル氏)
後編では、GoogleとIBMの新しい会話プラットフォームがどの程度の進化を遂げているのかをお伝えする。
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