中堅・中小企業のための“脱Excel”ロードマップ【第5回】
Excelへの未練を断ち切り“脱Excel”を成功させるBIツール選びの4カ条
“脱Excel”を目指してBIツールに乗り換えようと、いざ検討を始めたものの、「Excelならではの便利な機能」をついBIツールに求めてしまう――こんな悩みを解決するには、どうすればいいのでしょうか。
連載について
「Microsoft Excel」(以下、Excel)は、ビジネスにおいてなくてはならないソフトウェアとして、あらゆるビジネスシーンで長年広く利用されています。一方で、Excelがあまりにも普及してしまった“副作用”が少なからず見られます。ビッグデータブーム以降、ビジネスインテリジェンス(BI)ツールがデータ分析ツールとして再び注目を集めましたが、いざ導入しようとすると現場の反対を受け、思うように導入が進まないといった問題も見受けられるようになりました。
「なぜ、ビジネスの現場でExcelの利用がやめられないか」――本連載では、その理由を検証し、どのようなプロセスでBIツールの導入を進めていくべきかについて解説していきます。
BIツールは百花繚乱(りょうらん)
検索エンジンでBIツールについて検索すると、ここ数年で急激に販売されているBIツールが増えていることが分かります。昨今のクラウド化の波に乗ってクラウド形式で提供するBIツールもあれば、オンプレミス型のBIツールも健在です。スマートフォンやタブレットの普及に伴い、分析結果をスマートフォンやタブレットから閲覧する機能を持つBIツールも増えています。
このように提供形態に違いはありますが、BIツールの基本ともいえるKPI(重要業績指標)を見やすく表示するダッシュボード機能、ドリルダウンやスライシングも可能なクロス集計表や多種多様なグラフの作成機能といった機能は、ほとんどのBIツールが実装しています。一体どのBIツールを選ぶべきか、迷ってしまうことも多いのではないでしょうか。
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選択のポイント1: Excelの分析レポートをどこまで忠実に再現したいか
BIツールの導入を検討するとき、まず考えるべきは「現在使用しているExcelの分析レポートをBIツールでどう扱うか」です。
長年、Excelで分析レポートを作成していると、見る側からの要望や作成者のスキル向上などの理由で、分析レポートの構造が複雑化していきます。毎月の売り上げ推移を集計したレポートを例に挙げて考えてみましょう(図1)。レポートの作成当初は毎月の売り上げと利益、利益率のみを集計していただけだったはずが、「予算達成率が知りたい」「毎月の累積状況、四半期ごと、半期ごとの集計も欲しい」といった社内の意見や要望により、表の数や構成要素が増えていくことは珍しくありません。分析レポートの作成者もそうした希望をかなえつつ、分析レポートを1枚の用紙にきれいに収まるように、さまざまな工夫を重ねていきます。
従業員は、このように長い間、修正を積み重ねてきた分析レポートを見慣れているため、BIツール導入によって分析レポートの構成が変わってしまう場合、従業員が抵抗感を覚えることは想像に難くありません。また分析レポートの作成者も、さまざまな工夫を施して作った分析レポートに愛着があり、BIツールに移行した後もそのまま使用してほしいという気持ちを強く持っているものです。
一方で、図1のような、1行ごとに集計する項目が異なる表を作成できるBIツールは、それほど多くありません。BIツールで作成できる表は、Excelのピボットデーブルのように、ドリルダウンによって詳細な項目の集計を簡単に見ることができるように作られており、表のコンセプトが異なるからです。
前述の売り上げ推移レポートであれば、
- 売り上げをドリルダウンすると製品別の売り上げが表示される
- さらにドリルダウンをすると、拠点別の売り上げが表示される
といった形式ならば、BIツールで簡単に作成することができます。こうしたBIツールの表も使いたいが、どうしてもこれまで使用してきたExcelの表もBIツールでも使用したいという要望があるのであれば、Excelの分析レポートの構成を再現できる機能を持ったBIツールを選択する必要があります。
選択のポイント2: Excelならではの便利な機能を、どこまでBIツールに求めるか
「BIツールは、Excelで普段使用している機能よりもはるかに便利な機能を実装しているはず」と思っている人は珍しくありません。しかしExcelの機能を使いこなしていればいるほど、BIツールでは実現が難しいようなExcelの機能を使っていることがあります。
例えばExcelではグラフを作成する場合、グラフの結果に近似曲線を合わせて表示することができます。売り上げの推移を見る場合に、対象期間内で大まかな傾向(増加傾向にあるのか、減少傾向にあるのか)を可視化してくれる便利な機能です。しかし全てのBIツールが、同様の機能を実装しているわけではありません。またExcelではテキストオブジェクトを使って、自由な位置に分析結果に関するコメントを付けることができますが、BIツールのコメント機能はExcelほど自由度がない場合があります。
こうした機能は必ずしもデータ分析の基本機能というわけではありません。しかしExcel使用時には便利に使っていたこともあり、利用する側にとっては必要不可欠な機能ということもあり得ます。Excelで使い慣れた機能がBIツールにも用意されているかどうか、もしくは用意されていても、利用する側にとって満足できる機能かどうかを確認することで、BIツールの選択肢を絞り込むことができます。
選択のポイント3:BIツールの機能のうち重点的に使いたい機能は何か
企業がBIツールで実現したいニーズとして、次のような要素が挙げられます。
- 分析結果をリアルタイムに閲覧したい
- 従業員の階層別に閲覧できる分析結果を分けたい
- 部署ごとに個別で実施している分析を統合したい
- 今までより高度な分析をしたい
BIツールはまさに、このようなニーズに応えるツールであり、どのBIツールもこのようなニーズを満たす機能は十分に備えています。一方で、BIツールは他の製品との差異化を図るため、それぞれ強みを持っています。ダッシュボードやグラフが美しく見やすいなど、視覚効果に強みを持っていたり、表の作成手順が直感的で初心者にも分かりやすかったり、高度な統計解析機能を実装していたりと、さまざまです。このようなBIツールごとの強みを、BIツールを導入して実現したいニーズと照らし合わせ、ニーズの実現を容易にするような機能を備えているBIツールを選択肢として検討するとよいでしょう。
選択のポイント4:導入を決定する前に、必ず操作感や機能を試してみる
1~3の「選択のポイント」からBIツールの選択肢をある程度まで絞り込めたら、必ずBIツールの操作を実際に試してみることをお勧めします。BIツールを提供しているベンダーは、動画などを活用して、Webサイトで自社のBIツールの特徴や使用感を分かりやすく紹介しています。だからといって、実際に自社のデータで使用した場合に本当に、機能や性能が自社のニーズを満たすかどうかは、BIツールを操作してみないことには分からない場合もあるからです。幸いにもBIツールを提供するベンダーの多くは、ハンズオンセミナーを開催したり、体験版を提供したりと、実際にBIツールを触って試すことができる施策を実施しており、導入前にBIツールを試す環境は整っています。時間の許す限り操作を体感し、不明点があれば、都度ベンダーに確認することで、導入後に「本当にやりたかったことが実はできなかった」と判明するような事態を防ぐことができます。
検討時は、分析担当者以外の意見も聞いてみる
BIツールの導入を検討する場合、普段からExcelで分析業務を担当している従業員が検討メンバーになるケースがほとんどでしょう。BIツールの導入は、特に分析担当者の仕事に影響が及ぶ可能性が大きいため、分析担当者の意見は十分にくみ取る必要があります。これまでに挙げた4つのポイントも、分析担当者の視点に重点を置いています。
一方でBIツールを導入すると、これまで分析結果を見る立場だった従業員も、自分自身で分析できる環境が整うことになります。当然、従業員は自分で分析をするようになると思いたいところですが、これまでは分析担当者に分析を任せていた訳ですから、自発的に分析をするとは限らないのです。こうした状況が起こり得ることも想定し、BIツールを選ぶときには、これまで分析業務をしてこなかった従業員の意見も聞いておくことが重要です。
村山 聡(むらやま・さとし)
1971年愛知県生まれ、名古屋大学経済学部卒、中小企業診断士。
IT企業在職中に、単一業種においてキャリアを積んでいくことに疑問を感じ、どんな業界、職種でも通用する知識を得るべく中小企業診断士を取得。複数社を経て、現在の勤め先にて、コンサルタントとして、データを活用した業務効率改善に取り組む。
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中堅・中小企業のための“脱Excel”ロードマップ
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