ライフサイエンス企業のCIOが描く成長戦略【第5回】
製薬企業にITの新風を吹き込む、次世代のCIOがやるべき4つのこと(1/3 ページ)
製薬企業のIT部門に求められる役割は大きく変わりつつある。ビッグデータ、人工知能(AI)、デジタルデバイスといった新技術をビジネス戦略に取り入れるCIO(最高情報責任者)の役割も見直す必要がある。
連載について
本連載では「ライフサイエンス企業におけるITの現状と課題」をテーマに、ライフサイエンス企業の中でも特に製薬業界でのIT事情を紹介する。「制約された環境下におけるプロモーション」「情報プラットフォーム」「CIO(最高情報責任者)やIT部門の役割と展望」といった切り口で解説する。
これまでの連載
第1回「製薬企業のIT部門は販促活動の環境変化に備えよ――知っておくべき技術トレンド」
第2回「製薬企業の営業・マーケ部隊をITで支援する2つの方向性とは?」
最終回の本稿では、連載第4回までに紹介したようなビジネスモデルやテクノロジーの戦略策定、実行、推進を担う製薬企業の情報・通信・デジタル部門のリーダーの役割と責任、そして組織体制の在り方にスポットを当てる。
IT部門の役割の変化――第3世代の「ファーマIT」とは
近年の製薬企業において情報・通信・デジタル部門に求められる役割は大きく変わりつつある。そこで、製薬企業の情報・通信・デジタル部門の役割(以下、ファーマIT)の変化を第1世代、第2世代、第3世代の3つに分けてみる。
第1世代のファーマIT
2005年ごろまでのファーマITは、財務、会計、人事といったバックオフィスのIT化を主目的とする業務プロセス改革が主要な役割だった。この経営的視点での本質的な目的は、バックオフィス業務の自動化による効率化、すなわちコスト削減である。
第2世代のファーマIT
2005年ごろ以降は、こうしたバックオフィスに加えて、営業・マーケティング部門の販売促進を支援するシステム構築の役割が追加されてきた。顧客関係管理(CRM)やビジネスインテリジェンス(BI)といったシステムがこれに該当する。製薬業界におけるCRMは、医薬情報担当者(MR)の医師訪問計画、活動実績、医師プロファイル管理、売り上げの予実管理などを支援する。BIは、CRMで収集した情報や社内外のさまざまなデータを組み合わせて、製品別の営業テリトリーごとのシェア把握、MRや営業チーム・支店ごとのパフォーマンス管理、会社としての売り上げの予実管理などを支援する。バックオフィス業務の効率化から販売促進支援へのIT利用の拡大は、経営視点で見ると、コスト削減に加えて、売り上げ拡大支援へとその目的が拡大してきたことを意味する。ただし、ファーマITが依然コストセンターであるという位置付けは長く変わらなかった。
第3世代のファーマIT
近年、製薬業界においてもIT部門が直接収益を稼ぐ事業機会の兆しが見え始めている。きっかけとなった要素には、ビッグデータの実用化や人工知能(AI)の新興、スマートフォンなどを代表とするデジタルデバイスの進化などが挙げられる。さらにはHIPPA(米国における医療保険の相互運用性と説明責任に関する法令)や個人情報保護法などの法整備が進んできたことにより、医療情報の潜在価値を実事業化しやすくなってきたことも背景にあると考えられる。ファーマITが直接収益を稼ぐ時代が来るということは、IT部門は、コストセンターからプロフィットセンターに転換するということであり、経営からIT部門に求められる内容は大きく変わる。
当然、第1世代から第3世代へファーマITの役割が変化するに伴い、ファーマITのリーダーが担う責任範囲も変化する。
図1のように、世代と共にファーマITの責任範囲は大いに拡大している。従って、IT予算も増加しているが、その予算でカバーすべきシステムの対象部署やプロジェクトの数も増えている。ファーマITが第2世代レベルの製薬企業でも、責任範囲の広範化により多忙を極めている。しかし多忙にかまけて、自社がどのように「第3世代のファーマIT」へ進化していくかという戦略構築と確実な実行を怠ってはいけない。戦略的に予算配分をし、第2世代から第3世代に飛躍できるかどうかは、ファーマITのリーダーの戦略的能力に左右される。そこで第3世代のファーマITのリーダーの職責を念頭に考察してみよう。なお、以降の文で情報・通信・デジタルを担当する1つまたは複数の部門の責任を担うファーマITのリーダーを意味する一般用語として「CIO」という言葉を便宜的に使わせていただく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
ライフサイエンス企業のCIOが描く成長戦略
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
4
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
5
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
6
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
-
7
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
8
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
9
LLMの「過学習」、正しく説明している文章はどれ?
-
10
レガシー基幹システムをSAPに統合 山善が突き止めた「標準化と個別最適」の境界線
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー