成功するテレワークの条件とは【前編】
テレワーク成功の鍵は生産管理、従業員の95%が在宅勤務の「オンライン秘書」に学ぶ(2/2 ページ)
新しい時代を生き抜くための組織づくりに必要なのは、新しい文化とルール
業務を効率化するための最短ルートは「従業員間の距離を縮めること」だと中川氏は言う。担当者同士が近くにいて、顔を見ながらやりとりする業務の進め方が効率的だと考える人は少なくないだろう。中川氏もこうした考え方には同意しつつも、従業員と従業員の距離間を気にすることのない組織作りを進めている。
中川氏は「物理的・心理的な距離を埋めるのはデジタル化だ」と考えている。例えばITによるコミュニケーションを例に挙げると分かりやすいだろう。同一空間で顔を合わせた付き合いでは、ジェスチャーや態度、表情といった非言語コミュニケーションができ、人と人は短時間で多くの情報を読み取って意思疎通することができる。だが物理的に距離が離れていても、ITによる遠隔コミュニケーションの数を増やせばハンディは埋められる、と中川氏は語る。「隣の部屋にいても数百キロ離れた場所にいても、多量のチャットで濃密なコミュニケーションを取っていれば、隣で会話しているのと同じぐらい親密な心理的距離感を保てます」(中川氏)
生産性が可視化できていれば、たとえ見渡せる距離に全員がそろっていなくても、管理者は会社組織として受注できる業務量を正確に把握できる。キャスターがこれを実現できているのは、起業の段階から「リモートワークありき」で事業を設計したからこそだ。
リモートワークの孤独感を解消する、企業文化とルール化の重要性
組織がリモートワークを安定的に続けるための大事な要素は「文化とルール化」だと中川氏は語る。リモートワークを特殊な働き方として扱うのではなく、「当たり前の前提」と見なすこと。これが中川氏の考える、キャスターの文化だ。そして、それを支えるためのルールが「チーム制で案件を担当すること」なのだという。
「チャットを中心としたオンラインコミュニケーションだけでは情報量が少なく、お互い疑心暗鬼になることがあります。顧客と従業員の関係でも、従業員同士の関係でも同様の問題が起こり得ます。距離が離れているので、疑心暗鬼になるのは仕方がありません。働いている姿が見えないのですから。しかし、その問題を無視するのではなく、疑心暗鬼になることを前提にした組織作りをすることで、多様な働き方を受け入れられるようになります」(中川氏)
疑心暗鬼になることを前提にする、とはどういうことだろうか。それは“見えない(見える場所にいない)”という不安を否定するのではなく、不安になることを前提に組織を作ることだという。だから、キャスターの従業員はチーム制で案件を担当し、互いに不安を解消しやすい環境を作っているのだ。キャスターの組織体制には、そうした中川氏の考えが反映されている。
例えば子どもの体調不良などの理由で急な休暇を取りがちなスタッフでも、チームで仕事に当たっていれば、チーム内のフォローで安定したパフォーマンスを発揮できる。チームは多様な働き方の受け皿になる上に、チームの結束が生まれることで相談しやすい関係や環境を作り出しているのだという。
「将来的に生産人口が減っていく少子高齢化社会の日本においては、最適な労働環境を模索し、会社という概念を再定義しなければなりません。キャスターはそうした再定義から生まれた、これまでの常識とは全く違う会社組織です」と中川氏は自信を見せる。生産人口が減り、新大陸に踏み出さざるを得ない日本の企業には、そうした再定義をするチャンスが訪れているのだと中川氏は言う。先駆者として新しい世界を見せ、最初の一歩を用意することが、中川氏の取り組みだ。中には変化についていけない組織もある可能性がある。用意された一歩を生かして、新しい時代の生き残り方を模索する側になるか、淘汰(とうた)される側になるか。それは一人一人の判断に委ねられている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣 -
製品資料
[サイボウズ株式会社] AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
4
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
5
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
6
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
7
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
8
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
9
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
10
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー