AIは使うほど磨かれていく
人工知能(AI)が顧客満足度を高める Microsoft、IBM、GoogleのAPIが組み込まれた世界はどんな姿?
顧客満足度を高めるために人工知能(AI)を活用する企業は少なくない。主要なAIはAPIを用意しており、「Siri」「Alexa」「Google Assistant」などのパーソナルアシスタントなどと連携して活躍の場を広げている。
モノのインターネット(IoT)の真価は、カスタマーエクスペリエンス(CX:顧客体験価値)を変革できる力にある。導入場所が家庭であれ、職場であれ、自動車内であれ、歩道を歩いている最中であれ、同様だ。近年、各種の組み込みセンサーが生成するデータは、CXの向上という形で、企業とその顧客に新たな変革をもたらしつつある。さまざまな業界でかつてない規模のコモディティ化が進む昨今、CXは製品を差異化し、顧客の購買行動を促進するための主要な要因となってきた。現代の企業はCX戦略を見直し、コストの最適化とCXの改善を目指す必要がある。最終目標は顧客忠誠心とブランド忠誠心の向上だ。
顧客エンゲージメント(顧客との結び付き)を深めるためには、CXを変革できるデータドリブンな機能を備えたテクノロジーが必要となる。そこで登場するのが人工知能(AI)だ。AIとは簡単にいえば、人間の知的な活動をコンピュータによってシミュレートする技術であり、企業にとってはさまざまな新しい可能性の源泉となる。AIはスケーラブルで、効率的で、人手で処理すれば膨大な時間を要するであろう繰り返しの処理を自動化できるからだ。企業はIoTの広範なデータ収集能力とAIのデータ処理能力を組み合わせることで、個々の顧客を的確に理解し、従来の受け身型の顧客サービスではなく能動的なCXを提供できるようになる。
こうしたAI活用型のCXはさまざまな形で具体化している。顧客サービスにAIを活用する事例としては、チャットbotやインテリジェントな音声操作システムの他、AIを使った翻訳サービスを提供したり、その場でパーソナライズしたデータを顧客にリアルタイムで提供したりするものがある。他に、バックエンド側のサービスにAIを活用して、CXを改善することも可能だ。例えば企業は顧客との間でやりとりするデータを機械学習で処理し、カスタマイズできる。
AIでCXを改善
AIは単独の技術ではなく複数の技術を組み合わせて実現する技術であり、さまざまな場面での応用が可能だ。CXの改善にAIを活用する方法を幾つか紹介する。
AIを自然言語処理に活用する
自然言語処理技術は、音声認識と音声合成を組み合わせ、AIを使って音声によるリクエストを理解する。音声認識は人が何を話しているかを理解するのに用い、音声合成は応答の作成に用いる。自然言語処理技術を使えば、自動顧客サービスやパーソナルアシスタントを通じて、CXに変革をもたらすことが可能だ。例えば企業は顧客サービスのプロセスを自動化し、顧客にAIアシスタントと話をしてもらうことで、あたかも人間のスタッフが対応しているかのように、顧客による飛行機の予約や各種の問題解決を手伝うことができる。自然言語処理を使用する代表的なパーソナルアシスタントには、Appleの「Siri」やAmazon.comの「Alexa」、Googleの「Googleアシスタント」などがある。
AIと機械学習を顧客サービスのカスタマイズや結果予測に活用する
機械学習は、さまざまな分野のリクエスト処理システムの訓練に活用できる。訓練をすれば、機械学習を利用したシステムはいずれ、顧客のニーズを理解したり、顧客とのやりとりをカスタマイズしたり、事前定義イベントに基づき特定のアウトカム(結果)を予測したりできるようになる。例えばオンライン音楽サービスであれば、顧客の視聴パターンと顧客が提供するデータを機械学習で処理し、ユーザーごとに新しい楽曲を選別してレコメンドできる。それが、より予測的な顧客サービスの提供につながる。インターネットに接続したデバイスであれば、デバイスの使用状況や製造現場のセンサーデータに基づき、車や機械などの異常を早期発見し、保守の必要性を予測できる。これは顧客サービスの差異化に役立つ。
AIを画像認識に活用する
AIは画像内から特定の物体を検知し、さまざまなアクションを実行できる。小売店であれば、店舗内にカメラを設置し、その映像を基に現状の買い物客数やレジ待ち行列の状況を把握することによって、混雑時にレジ係を自動的に補充し、精算にかかる時間を短縮するといったことが可能だ。店内の映像から、客の性別や年齢、体形などの属性を分析し、パーソナライズした服を提案するといったこともできる。
AIは、今日の企業が直面する全ての問題を解決できる万能薬ではない。だが現行のAIであれば、CXの変革という点で極めて効果的に活用できる。導入もそれほど難しくない。企業はモバイルデバイスやIoTデバイス、Webアプリケーションを介した顧客サービス用の既存アプリケーションに、AI機能を簡単に追加できる。
APIを使ってAI機能を追加する
既存のアプリケーションにAI機能を追加するのは、それほど難しいことではない。
企業やアプリケーション開発者はアプリケーションプログラミングインタフェース(API)を使えば、自社のアプリケーションにAI機能を追加することが可能だ。その場合、機械学習やデータ学習プロセスを担当するAI専用エンジニアやデータサイエンティストを雇う必要はない。
MicrosoftやIBM、Googleなど企業向けクラウドの主要ベンダーや多数の新興ベンダーは既に、クラウドサービスとして提供するAIを簡単に利用できるようにするAPIの包括的なセットを提供している。企業はこうしたAPIを既存アプリケーションに組み込むことで、視覚や音声、言語、会話などのサービスにAI機能を簡単に追加できる。IoTやモバイル、クラウド用アプリケーションの開発者は、アプリケーションからこのAPIを呼び出すだけで、AI機能を活用することが可能だ。例えば自然言語処理APIを使えば、自然言語で書かれた特定のリクエストに基づいてアクションを自動化したり、顧客との過去のやりとりから洞察を引き出し反応したりできる。
昨今、企業にはモバイルデバイスやIoTデバイスなど各種ソースから新たなデータが洪水のように押し寄せている。企業が今後、顧客中心型の独自のエクスペリエンスを提供するためには、既存アプリケーションにAI機能を組み込むAPIの追加が鍵となる。
CXの継続的な改善が可能に
今後AIは企業に広く採用されることが予想される。ただしITに精通した企業の顧客は既にAIの恩恵を受けている。APIなど開発者が使いやすいツールを通じてだ。例えばAIを活用して自動応答するチャットbotは急速に普及しつつあり、今ではEC(電子商取引)サイトにおける定番の顧客サービスの1つとなっている。
AIを適切に導入し訓練すれば、データをインテリジェントに処理するAIの能力は今後も継続的に向上し、自動化を加速させることになる。ひいてはそれがCXの改善につながる。システムが学習し課題に適応することで、より予測的でパーソナライズされたタイムリーな顧客サービスが可能となるからだ。この先、ますますデジタル化が進むこの世界に遅れずに付いていくためには、競争の激しい市場で差別化と技術革新を図るべく、AIなどの最新技術をCX戦略にどう活用すべきかを検討することが不可欠となるだろう。
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