製品動向から技術動向まで
HCIのメリットを最大限に引き出す10のベストプラクティス
HCIのメリットを最大限に生かし、調達、導入、管理サイクルのさまざまな場面で活用できる10のベストプラクティスを紹介する。
ハイパーコンバージドインフラ(HCI)が登場した背景にある発想はシンプルだ。だが、HCIの多くのメリットを完全に生かし、落とし穴を避ける方法を知るのはまた別の問題だ。
HCIは、データセンターの従来型3層アーキテクチャを進化させたもので、それの代替にもなる。新たな企業が次々と市場に参入し、ITインフラ全てやその一部にハイパーコンバージェンスを利用する企業も増えるに伴い、HCIは進化を続ける。
そう遠くない昔にIT業界は、HCIを「コンピューティング、ストレージ、仮想化をコモディティハードウェアで密接に統合するソフトウェア中心のプラットフォーム」と定義した。この定義はここ2、3年で拡大され、変わってきている。NetAppやDatriumのような新しいベンダーが市場に参入したためだ。これらのベンダーが提供する製品はHCIの黎明(れいめい)期に草分け的存在だったベンダーの製品に比べて、ストレージ、サーバ、ハイパーバイザーの組み合わせが疎結合になっている。ここで言う「草分け的存在のベンダー」とは、Nutanix、Pivot3、Scale Computing、SimpliVity(現在はHewlett Packard Enterprise)、VMwareなどを指す。
定義される結合が疎密であることとは関係なく、基本的な前提とHCIのメリットは変わらない。HCIの目標はデータセンターの従来型3層アーキテクチャの欠点を克服することにある。その方法として、管理とスケーリングが容易なデータセンターアーキテクチャプラットフォームを利用して、柔軟性の向上と総所有コストの削減を実現する。とはいえ、HCIには独自の複雑さが伴う可能性がある。
以下に示す10の要素は、調達、導入、管理サイクルのさまざまな場面で活用できる幅広いベストプラクティスといえるものであり、HCIのメリットを最大限に生かすのに役立つだろう。HCIの利用方法は幾つかある。
- 統合アプライアンスを使用してHCIクラスタを導入する
- 新しいハードウェアを調達するか、古いハードウェアを再利用してソフトウェア中心のアプローチを取る
- パブリッククラウドのサービスとしてHCIを利用する
これらのどの方法を選ぶにせよ、HCIの利用で大きな飛躍を遂げるのに役立つヒントがきっと見つかるはずだ。
購入時のミスを避ける
HCIは、VDI(仮想デスクトップインフラ)とその他の特殊なニーズに対応するニッチなテクノロジーではなくなっている。だが、データセンターを従来型のアーキテクチャからHCIに移行する企業が増える中、多くの企業が購入時に以前と同じミスを繰り返している。HCIへの移行を準備するに当たって、購入担当者はHCIを購入/導入する際に犯しがちなミスを確認しておく必要がある。具体的には、管理、ストレージ、ネットワーク、アプリケーション、スケーリング、分析、ベンダーなどに関する間違いだ。その上で、同じ落とし穴に落ちないようにする方法を調査することも欠かせない
HCIはハイブリッドクラウドに適している
クラウドと同様、HCIは使うのも管理するのも比較的簡単だ。どちらも企業が最も合理的なペースで、CPUやストレージなどリソースのスケーリングを可能にする。HCIとクラウドコンピューティングにこのような類似性が存在するのは、どちらもその中核に仮想化があるのが一因だ。仮想化技術は、この2つのプラットフォームを企業の理想的な存在にしてくれる場合もある。仮想化技術がカバーできる範囲を広げて、ハイブリッドクラウドITアーキテクチャを導入しようとしている企業がその例だ。こうしたアーキテクチャは、具体的には、ローカルデータセンターとパブリッククラウド間でのワークロードの移動を可能にする。
HCIで不可欠な役割を果たすSDN
初期のHCIはソフトウェア定義のネットワーク(SDN)に関して足りない点があった。だがこうした状況は変わり、SDNテクノロジーはHCI環境に適したものになっている。その結果、IT管理者がHCIの導入を検討する際に、ソフトウェアを中心とするSDN層を組み込むことを考えるのが不可欠になっているほどだ。HCIはSDNが重大な役割を果たすようになっており、HCIでSDNテクノロジーを最大限に活用するように後押しされている。
「vSAN」の新機能
VMwareは2018年に「vSAN」をバージョン6.7に更新した。HCIソフトウェアのvSANは同社の「ESXi」サーバのローカルのストレージを共有仮想マシン(VM)ストレージへと変える。vSAN 6.7はエラー処理が改善し、ユーザーインタフェース(UI)が改良した。それにより、vSANは重要な追加ワークロードに適したストレージオプションになっている。強化された要素には、
- 新しいHTML5インタフェース
- より高速な再ビルドを実現する「Adaptive Resync」
- iSCSIベースのMicrosoftの「Windows Server」フェイルオーバークラスタリングのサポート
- 改善されたメトロクラスタ導入
- ネットワークフェイルオーバーの高速化
などがある。これらの変更が加えられたことで、vSANは以前よりも幅広いユースケースに適したものになっている。
コンバージェンスとハイパーコンバージェンスの境界が曖昧になる
DatriumやNetAppなどのベンダーが導入する製品は、ユーザーがコンポーネントを個別にスケーリングできる。それにより、これまでコンバージドインフラ(CI)と定義されてきた製品と、HCIと定義されてきた製品との境目が曖昧になっている。Datriumの「Datrium DVX」は、仮想化向けの分離型永続ストレージアレイだ。一方、NetAppの製品は同社のスケールアウト「SolidFire」ストレージとESXiサーバを同じ筐体に組み合わせている。どちらも完全なHCIやCIと見なされることはない。だが、どちらもCIとHCIのメリットを提供する設計的な特徴を備えている。今後数年のうちに、HCIから学んだ教訓を斬新なアーキテクチャ構成に生かした多くのインフラ製品が他のベンダーからも提供されるようになると考えられる。
コンポーザブル、コンバージド、ハイパーコンバージド
コンバージェンスの概念はさまざまな形で市場に登場している。CIとHCIはもちろんだが、勢いを増している新種のインフラもある。それがコンポーザブルインフラだ。これら3つはいずれも同じ目標を掲げる。つまり効率化を実現し、コンピューティングリソース、ストレージリソース、ネットワークリソースの提供を容易にして、ワークロードも最適化することだ。ただし、各インフラはこうした目標を全く異なる方法で実現している。これら3種のインフラ全てについて裏も表も把握しておけば、自社に最適なアーキテクチャにたどり着きやすくなるだろう。
Red Hatが独自のHCIシステムを構築する
2018年にはRed HatがHCIの競争に参入し、「Red Hat Hyperconverged Infrastructure」をリリースした。これはオープンソースソフトウェア製品で、コモディティハードウェアを使った独自のHCIシステムの構築を可能にする。この製品は、DIY(自分で作る)のHCIを推進するために、「Red Hat Virtualization」「Red Hat Gluster Storage」「Ansible」「Red Hat Enterprise Linux」のようなRed Hatのテクノロジーを組み合わせている。その目標は、非常に高額になりがちな専用機器のコストやベンダーロックインを顧客が回避できるようにすることだ。
「Windows Server 2016」はHCIをサポートする
Microsoftは2018年に「Hyper-V」ハイパーバイザーベースのHCIをサポートする多数の機能を追加した。だが「Windows Server 2016」を使用してハイパーコンバージド化するには、多くの計画が必要になる。例えば、適切な物理プラットフォームを使用/構成し、仮想リソースを正しく構成していることを確かめなければならない。Hyper-Vを使用してWindows Server HCIを正常に導入し、コンピューティングリソース、ストレージリソース、ネットワークリソースを適切に仮想化するには、幾つかの手順を知っておく必要がある。そうしなければ、HCIのメリットを全て得ることはできないだろう。
HCIはプロセッサの脅威に弱い
2018年初頭、GoogleのProject Zeroチームは、Intel製、AMD(Advanced Micro Devices)製、ARM製のプロセッサに潜むセキュリティの欠陥を世界に向けて発表した。「Spectre」と「Meltdown」と呼ばれるこれらの脆弱(ぜいじゃく)性は、最新プロセッサの投機的実行を悪用することで、マルチテナント環境に非常に大きなセキュリティホールを作ることができる。こうした環境のテナントは、パスワードやクレジットカード番号などの機密データを相互に取得できる恐れがある。影響を受けるのはハードウェアだけではない。ホストでアプリケーションプロセスを実行するソフトウェア定義製品も同程度に脆弱となる。これにはハイパーコンバージドシステムも含まれる。このような製品はそれ相応の更新と対応が必要になる。
独自のツールや手法を要するHCIデータセキュリティ
ハイパーコンバージド環境のデータのセキュリティを確保するには、HCI自体と同程度に統合された包括的なアプローチが求められる。コントロールプレーン、データプレーン、管理プレーンのリソースを保護できなければならない。基盤となるコンピューティングハードウェア、ストレージハードウェア、ネットワークハードウェアの抽象化を、標準のセキュリティプロファイルや一連の共有サービスを用いてセキュリティを確保するという課題に、意欲的に挑戦することも必要だ。ワークロードが変わり続ける状況にあってもデータを保護する十分な柔軟性も欠かせない。HCIのデータを保護するに当たり管理者には課題が突きつけられる。だが、その対策に利用できる戦略も多数用意されている
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