クラウド移行でありがちな「失敗」とその防止策【後編】
“脱クラウド”に踏み切ったHR企業 原因は中途半端な「リフト&シフト」
アプリケーションをクラウドサービスに移行してもメリットが得られず、“脱クラウド”“オンプレミス回帰”に踏み切る企業と、クラウドサービスへの移行に成功する企業は何が違うのか。2社の事例を基に探る。
クラウドサービスの企業利用が広がる一方、クラウドサービスに移行したアプリケーションを再びオンプレミスのITインフラに戻す“脱クラウド”に踏み切る企業も存在する。「なぜ企業は“脱クラウド”“オンプレミス回帰”に踏み切るのか」に引き続き、事例を基に企業が脱クラウドを決断する理由と、クラウド移行に成功するための方法を考える。
リフト&シフトの“詰めの甘さ”が招いた想定外
HR(人事)関連ソフトウェアベンダーSilkRoad Technologyでシニアバイスプレジデントと最高情報責任者(CIO)を兼務するアシフ・マリク氏も、以前勤めていた職場でデータ分析アプリケーションをMicrosoftのクラウドサービス「Microsoft Azure」から自社データセンターに戻した経験がある。通信の遅延と、コストの増加が脱クラウドの主な理由だ。マリク氏はこのことから、クラウドサービスに関する洞察を得た。簡単に言えば「クラウドサービスは全てのアプリケーションに適しているわけではない」ということだ。
問題はアプリケーションをそのままの状態でクラウドサービスに移行し、その後クラウドサービスに適した形にアプリケーションを作り替える「リフト&シフト」方式を採用したことに端を発していたとマリク氏は考察する。
マリク氏によると、クラウドサービスへの移行の対象となったデータ分析アプリケーションは、インフラを複数のユーザー企業で共有するマルチテナント方式で運用できなかった。そのため仮想環境をコスト効率良く使用することもできなかった。分析データをオンプレミスのインフラから取り込んでいたことも、クラウドサービスでパフォーマンスが低下した要因だった。
こうした事態は「よくあることだ」と、コンサルティング企業Deloitte Tohmatsu Consultingでマネージングディレクターを務めるスコット・ブッフホルツ氏は指摘する。「クラウドサービスを単なる仮想データセンターのように扱い、クラウドサービスへの移行時にアプリケーションの運用の方法や手続きを変えないことが、移行失敗の要因になることがある」とブッフホルツ氏は言う。
アプリケーションの事前の評価が重要
郵便物の発送に使う郵便料金計器の最大手であるPitney Bowesは、一部のアプリケーションをクラウドサービスに移行した。これは2014年に始めた変革戦略の一環だ。移行をスムーズに実施するために、同社はアプリケーションを入念に評価し、現状のままクラウドサービスに移行できるもの、移行のメリットを得るためにはクラウドサービス用に最適化が必要なものを判断した。
Pitney Bowesで最高変革責任者を務めるジェームス・フェアウェザー氏によると、アプリケーションは以下の3つに大別できる。
- 現状のままクラウドに移行しても問題なく運用できるアプリケーション
- クラウドに適したアプリケーション構造にしてからクラウドに移行する必要があるアプリケーション
- クラウドに移行すべきではないアプリケーション
Pitney Bowesは綿密な計画を立て、セキュリティやコードの面から全てのアプリケーションを分析した。「こうして最適な移行方法を導き出している」とフェアウェザー氏は話す。同社はクラウドサービスへの移行を確実に成功させるために、コード変換の自動化ツールやGoogleのAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)管理ツール「Apigee Edge」といった新しいツールも導入している。
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
4
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
5
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
6
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
7
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
8
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
9
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
10
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー