パブリッククラウドを利用することでさまざまなメリットを得ることができるが、それでもクラウドからオンプレミスに回帰する企業が存在する。それはなぜか。
オンプレミスからクラウドへの移行が進むと同時に、クラウドからの撤退や、特定のアプリケーションをオンプレミスに戻す決断をする企業もある。よくあることではないとしても、クラウドからの離脱は、クラウドで苦労しやすいコストの調整をしやすくし、アプリケーションの管理を改善する方法になる。
「クラウドで動かすアプリケーションの規模と複雑さが増すにつれ、利用するクラウドの機能も増える」と話すのは、調査会社Amalgam InsightsでCEOと主席アナリストを兼務するヒョン・パク氏だ。利用する機能が増えると、比較的予測しやすいアプリケーションでさえ、コストが短期間で2倍、3倍に跳ね上がることがある。
企業は、さまざまな理由から“脱クラウド”戦略を検討する。コストが予測可能でも、複雑な要件を伴うアプリケーションの場合は、オンプレミスの方が管理しやすいことがあるとパク氏は話す。脱クラウド戦略は、特殊なアプリケーション向けに独自のハードウェアを選びたいと考える企業の関心を引くこともある。
「クラウドを利用する目的は、必ずしもインフラの導入コストの削減ではない。クラウドベンダーが用意する、アプリケーション開発に役立つ数多くの機能を活用したいためだ」。そう語るのは、調査会社Forrester Researchでアナリストを務めるナビーン・チャブラ氏だ。端的に言えばクラウドの方が、新しいアイデアをアプリケーションに素早く導入できる。
実際、調査会社のForrester Researchによると、クラウドを採用する上位6つの理由は次のようなものだという。
こうしたメリットを目的としていても、脱クラウド戦略が必要になることがある。ソフトウェア開発企業iTechArt Groupでシニアソフトウェアエンジニアリングマネジャーを務めるアレックス・ソコロフ氏はそう述べる。同社は、クラウド移行と脱クラウドの両方で企業を支援している。
ソコロフ氏によると、大企業がオンプレミスデータセンターの管理コストに見合う水準でITインフラを拡張する場合や、アプリケーションがクラウドで利用できないハードウェアを必要とする場合は、クラウドからオンプレミスへの回帰が必要になることがある。
加えてアプリケーションの構造が複雑な場合、クラウドのIT環境で遅延や障害を生む要因を見逃すことがある。Gartnerでアナリストを務めるブランドン・メドフォード氏によると、これはあらゆる業界のあらゆる規模の組織で起きる可能性があるという。
医療や金融といった業界のアプリケーションの場合、関連する法規制の変化も、クラウドからの離脱を検討する要因になるとメドフォード氏は述べる。
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