バッファオーバーフロー攻撃に備える【前編】
「バッファオーバーフロー攻撃」の仕組みとは? 何が危険なのか?
メモリ領域の脆弱性「バッファオーバーフロー」はどのように悪用され、どのような危険性をはらんでいるのか。対策のために知っておくべきバッファオーバーフローと、それを悪用した攻撃の裏側を解説する。
悪用されると企業に深刻な打撃を与える恐れがある脆弱(ぜいじゃく)性の一つが「バッファオーバーフロー」だ。「バッファ」とはデータを一時的に格納するメモリ領域を指す。バッファの容量を超えるデータを格納しようとすると、バッファからデータがあふれる。この現象がバッファオーバーフローだ。バッファオーバーフローが発生すると、システムやプログラムはあふれたデータをバッファ領域外のメモリ領域に格納し、その領域のメモリ内容を破損または上書きする恐れがある。
バッファオーバーフローは決して新しい脆弱性ではない。長年にわたって存在し、仕組みもよく知られている。にもかかわらず、バッファオーバーフローを悪用した攻撃を防ぐことは簡単ではない。攻撃者はバッファオーバーフロー攻撃によってWebアプリケーションを侵害し、企業LANの乗っ取りなどの深刻な被害をもたらす恐れがある。
攻撃の仕組みを理解することは、防御への第一歩だ。バッファオーバーフロー攻撃によってWebアプリケーションが危険にさらされるのを防ぐためには、何をすればよいのか。以下で対策に役立つ開発時と稼働開始後のベストプラクティスを紹介しよう。
攻撃者が悪用する2種類のバッファオーバーフロー
バッファオーバーフロー攻撃を仕掛ける攻撃者は、脆弱なWebアプリケーションを標的にする。攻撃者は脆弱性スキャンツールを使い、バッファオーバーフロー攻撃が成功しそうな脆弱性があるWebアプリケーションを見つけ出して攻撃を仕掛ける。
攻撃者が悪用するバッファオーバーフローは、主に以下の2種類に分類できる。
- ヒープベース
- プログラムが動的に確保するメモリ領域「ヒープ」でバッファオーバーフローを発生させる
- スタックベース
- エンドユーザーの入力データなど、プログラムの関数呼び出しに関連するデータを格納するメモリ領域「スタック」でバッファオーバーフローを発生させる
このうちヒープベースのバッファオーバーフローは悪用が困難であり、攻撃者はスタックベースのバッファオーバーフローを悪用することが一般的だ。スタックベースのバッファオーバーフロー攻撃では、攻撃者はスタック内でバッファオーバーフローを発生させて正当なデータを上書きし、プログラムに不具合を生じさせようとする。
スタックは、プログラムが関数を呼び出した後に戻る「戻り先アドレス」を格納する。攻撃者はバッファの容量を超える入力データによってバッファオーバーフローを発生させるとともに、この戻り先アドレスを入力データ内の悪意あるコマンドを格納したアドレスに置き換える。スタックでバッファオーバーフローが発生すると、プログラムは部分的にクラッシュしてしまう。プログラムは関数の戻り先アドレスを参照し、そこに処理の流れを戻すことで回復を試みる。ところが戻り先アドレスは悪意あるコマンドのアドレスに置き換えられているため、システムがこの悪意あるコマンドを実行してしまう。
このときプログラムは、自身の実行が続いていると誤認識する。攻撃者が標的のWebアプリケーションを通じて立ち上げたコマンド実行ウィンドウは、標的のWebアプリケーションと同じ権限の下で動作する。これにより、攻撃者はコマンド実行を通じてシステムを制御できるようになり、ファイル破損、データ改ざん、個人情報窃取といった行動が可能になる。
他にも以下の要素を悪用するバッファオーバーフロー攻撃がある。
- 整数オーバーフロー
- プログラミング言語で定められた整数の最大サイズを上回る計算結果となった場合に起きる脆弱性だ
- Unicode
- 半角英数字や記号などを含む128文字の文字コード「ASCII」(American Standard Code for Information Interchange)を想定しているバッファに、別の文字コードである「Unicode」の文字を送信し、バッファオーバーフローを発生させる。UnicodeはASCIIに含まれないギリシャ文字や漢字などの文字を含む
- フォーマット文字列
- データ出力の形式を指定する文字列のことを「フォーマット文字列」と呼ぶ。「printf」「sprintf」などフォーマット文字列を利用するデータ出力関数に未検証データを渡す処理がプログラム内にあれば、それが悪意あるコマンド実行を招く可能性がある
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