医療業界の「HCI」導入事例【後編】
医療クラウドベンダーが「HCI」で実現したインターネット分離手段とは?
英国の医療クラウドベンダーAIMESは、インターネット分離する手段として「Health Cloud」というクラウドサービスを提供している。そのインフラとして採用したのが「HCI」だ。Health Cloud登場のいきさつを紹介する。
前編「コロナ禍で施設拡大が頓挫、窮地の医療機関をNutanixの『HCI』はどう救ったのか」に続き、後編となる本稿は、英国の医療クラウドベンダーAIMES Management ServicesのHCI(ハイパーコンバージドインフラ)導入事例を紹介する。
HCIで実現したインターネット分離手段とは
医療分野向けクラウドサービスには高度な規制要件が要求される。AIMESは自社の医療分野向けクラウドサービス「Health Cloud」を構築するために、2015年に初めてHCIを採用した。同社の事業開発責任者であるグレン・ロバート氏は「より信頼性の高い、より効率的なシステムをもたらす、次なる最良の何かを発見するため、常に奮闘している」と述べる。
AIMESが導入したのはPivot3のHCIだ。AIMESは、研究者が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連の問題にテレワークで取り組むためのサービスを展開できるよう、HCIでインフラを増強させた。
「私たちはこの危機の中でステップアップし、新しいサービスを提供しようとしている」とロバート氏は語る。AIMESはVDI(仮想デスクトップインフラ)をサービスとして提供し、医学研究者にテレワークの手段として活用してもらう考えだ。
AIMESの顧客は英国国民保健サービス(NHS)所属の医療機関だけでなく、インターネット経由で接続する商用データセンターもあるため、規制上の要件は2通り存在する。そのため2種類の異なるシステム構成でストレージやネットワークを運用している。ロバート氏の説明によると、AIMESは医療業界向けサービスに専用のネットワークを利用している。
NHSは、専有するネットワークの利用に関して厳密なルールを課している。NHSのネットワークを利用できるのは、承認を受けたエンドユーザーのみであり、全員が既知のエンドユーザーだ。一方でインターネットは誰もが通信できるため「無法地帯であり、非常に厄介だ」(ロバート氏)。
ロバート氏のチームはこの問題に対処するために、NHSのネットワークとインターネットに同じ装置を直接接続することはできないようにして、それぞれに別の利用ルールを設定することにした。こうした「インターネット分離」を実現する手段としてAIMESが開発したのが、前述のHealth Cloudだ。
Health Cloudは規制の厳しいネットワークと規制のないネットワークに対して、異なる装置を使ってアクセスできるようにする。Health Cloudを利用すると、外部の研究者はNHSのネットワークに直接接続しなくてもNHSの情報にアクセスできるようになる。一方で臨床医はNHSのネットワークを通じてデータを閲覧できる。「それぞれを狭い範囲に隔離し、保護している」とロバート氏は説明する。
AIMESはPivot3のHCIを利用してHealth Cloudのシステムを構築した。インターネットに接続しているSAN(ストレージエリアネットワーク)は隔離した状態で管理している。同社は2015年ごろにPivot3製HCIの使用を開始し、現在は同社のHCIアプライアンスを5台運用している。VMwareのVDIソフトウェア「VMware Horizon」も導入した。
こうして医学研究者向けに新しいVDIサービスを提供できるようになり、AIMESは顧客のニーズに応じて提供できるリソースを1つ増やしたことになる。このサービスの顧客には、急性期医療機関や大学病院、研究機関の研究者などがいる。
ロバート氏は「現在の医療IT市場は、控えめに言っても『挑戦』以外の何者でもない」と話す。前編に登場した、米国ペンシルベニア州の医療機関Delaware Valley Community Health(DVCH)の最高情報責任者(CIO)であるアイザイア・ナサニエル氏も評したように、今や「挑戦」が医療ITの新常態(ニューノーマル)になりつつある。
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