医療業界の「HCI」導入事例【前編】
コロナ禍で施設拡大が頓挫、窮地の医療機関をNutanixの「HCI」はどう救ったのか
米医療機関Delaware Valley Community Healthは、施設拡大に取り組む最中にCOVID-19の危機に直面し、計画変更を余儀なくされた。ピンチを乗り越える鍵はNutanixのHCIだったという。HCIがもたらしたメリットとは。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)に伴い、さまざまな組織がテレワークに切り替えるために奔走せざるを得なくなった。こうした中、失敗が許されないプレッシャーに直面した組織が医療機関だ。
遠隔医療、テレワーク、医学研究などさまざまな分野で、医療ITに関わる人は変革の一助となるべく懸命に取り組んだ。その一例が、米国ペンシルベニア州の医療機関Delaware Valley Community Health(DVCH)と、医療クラウドベンダーAIMES Management Servicesだ。DVCHもAIMESもHCI(ハイパーコンバージドインフラ)を導入してサービスを提供している。
本稿はDVCHの事例を取り上げ、コロナ禍に伴う事業計画の見直しとHCI導入を同機関がどう乗り越えたかを紹介する。
医療機関のCIOが抱く「恐怖」を和らげたHCI
米国フィラデルフィア地区にある8カ所のプライマリーケア(初期診療)施設の遠隔医療を支援するために、DVCHは考え方を転換する必要があった。DVCHの最高情報責任者(CIO)であるアイザイア・ナサニエル氏は「当初、緊急医療施設(アージェントケアセンター、注1)の開設などの事業拡大を支援するためにHCIの導入を決めた」と述べる。
※注1:米国の医療制度におけるアージェントケアセンターとは、命に関わるほどではないが当日中の応急手当てが必要なレベルのケアを提供する医療機関。医療費は救急治療室(Emergency Room)を利用するよりも比較的低額になる傾向がある。
DVHCは従来のプライマリーケアや内科、小児科、検眼、産婦人科、メンタルヘルス(行動医学)、オピオイド依存症の投薬支援治療に関する事業を補完するために、9番目の施設を展開する計画だった。計画はCOVID-19によって中断した。他の医療機関と同様に、DVCHも患者を診察するための手段を変える必要があった。遠隔医療を実施し、2020年3月中旬から従業員310人の75%が持ち回りでテレワークを開始した。
ナサニエル氏によると、DVHCは2020年5月からアージェントケアセンターを開設する準備を進めてきた。COVID-19のパンデミックが発生し、急な方向転換が必要になったことは「CIOである私にとって、恐ろしいことだった」と同氏は振り返る。「最高経営責任者(CEO)は『私たちはこれに対処できるのだろうか。職員を出勤させることも、患者を迎え入れることもできない』と言っていた」(同)
DVHCが進めてきたNutanixのHCI導入作業は、この時点で既に落ち着いていたので「前に突き進むことができた」とナサニエル氏は述べる。DVCHの8施設のうち2施設にあるデータセンターには3ノードの「Nutanix NX」シリーズのクラスタを設置していた。DVCHはハイパーバイザーをVMware製品からNutanixの「AHV」に変更することで、ライセンス料金を年間7万ドル削減した。
バックアップソフトウェアは専業ベンダーHYCU製のものを使用し、WANを経由してデータセンター間でデータを複製している。Nutanix製HCI専用のバックアップソフトウェアを利用することで、DVHCはこれまで前4時間以上かかっていたバックアップ時間を30分に短縮できた。「有用だった」とナサニエル氏はこのバックアップソフトウェアを評価する。
2020年3月後半は米国疾病管理予防センター(CDC:Centers for Disease Control and Prevention)のガイドラインに従って、DVCHは施設への立ち入りを全面的に禁止した。個人用保護具を入手してから、同年4月に小児科診療を開始した。ナサニエル氏によれば、DVCHが2020年3月に実施した遠隔医療は2600件だった。通常の1カ月当たりの目標である3200~3500件と比較するとわずかに下回った程度だった。
電子カルテ(EMR:Electronic Medical Record)をNutanixのHCIに移行したところ「オンライン診療でビデオ通話ができるほどに性能が向上した」とナサニエル氏は述べる。全体的には、1日で9台のサーバをNutanixのHCIに移行させたという。医療従事者と患者とのビデオ通話に関する設定は1週間以内に完了した。切り替え後の薬剤管理システムは15秒で処方箋を発行できるようになった。以前は3~5分を要していた。
DVCHは、これからもテレワークを続けたい職員のためにNutanixのDaaS(Desktop as a Service)である「Xi Frame」の導入を検討しており、2022年までに2施設への導入を計画している。「国全体で新たな日々の始まりを考え、新常態を模索している。われわれは職員全員がテレワークを選択できるようにしようとしている。Xi Frameがあれば全員にテレワーク環境を提供できる」(ナサニエル氏)
DVCHは4施設にCOVID-19の検査体制を整備し、1日に約100~125件の検査を実施している。「今のシステムなら24時間以内に結果が得られる。以前の3層アーキテクチャでは実現できなかっただろう」とナサニエル氏は語る。
後編はAIMESのHCI導入事例を紹介する。
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