ベンダーや資格団体が認定する認定資格を取得することで、自身の持つITスキルの一部を証明することができる。ただし認定資格は万能ではない。
ITに関する認定資格を取得することは、向上心の証明になる。例えばデジタルマーケティング企業のJellyfish Groupでクラウドトレーニング担当シニアディレクターを務めるマーク・クランプ氏は1990年代末に、ミュージシャンとしてのキャリアを断念した後で、ITのキャリアを追求しようと決めた。
クランプ氏は夜間学校に通い、休日は集中講義に出席し、ベンダーの認定資格に合格し、ITの仕事に就いて経験を積んだ。それから20年以上がたった今でも、同氏は学位を持っていない。「この業界で仕事をするためにコンピュータサイエンスの学位は必要ない」と同氏は言い切る。今は多様なオンライン学習サービスがあり、学位がなくてもスキルを身に付けることができるからだという。
Webサイトデザイン代理店のRKWOでアカウントマネジャーを務めるシャノン・ウィルクス氏は「当社はコンピュータサイエンスの学位または認定資格を持っている人材を採用する」と語る。ただし「認定資格の取得者を積極的に選ぶ傾向がある」と明かす。
独学で認定資格を取った人の方が「一般の学卒者よりもずっと望ましい」とウィルクス氏は語る。同氏はIT人材の採用に携わった経験を踏まえ「独学の方が人は向上心を発揮し、仕事量の管理も自主的にできるようになる」と主張する。
認定資格は「サイバーセキュリティのような変化の激しい分野で、IT担当者のスキルを証明するのに役立つ」と、臨床検査キットを手掛けるHome Access HealthのIT担当バイスプレジデント兼セキュリティ責任者、パム・ニグロ氏は語る。ニグロ氏はIT専門家の国際団体ISACA(Information Systems Audit and Control Association)のボードディレクターを務めている。
ISACAの調査レポート「State of Cybersecurity 2020」によると、「サイバーセキュリティ分野の最近の学卒者は、就業する準備がよくできている」と答えた回答者は、全体の27%にとどまる。「サイバーセキュリティ分野の求職者が適任かどうかを判断するときに考慮する要素は何か」という質問に対し、回答者が挙げた上位3つの要因は、サイバーセキュリティの実務経験、資格、実地トレーニング経験だった。
オンライン認定資格の取得は自主的に取り組む必要があり、それが大きなハードルになる。認定資格のためのオンライン学習プログラムは総じて、専門家や経験者とやりとりしながら学習できるように作られていない。そのため「学習の過程で複雑なトピックを消化し、背景とともに理解するのが難しい」とクランプ氏は分析する。
ITサポートを手掛けるGuardian Computerに勤務するチャールズ・アンドルーズ氏は「認定資格は、取得者がスキルを実務に活用できることを証明しない」と指摘する。Googleが提供する「Professional Cloud Architect」のようなクラウドサービス認定資格の取得は、各クラウドサービスのツールと機能、実装について、強力な知識基盤を持っていることを示す。ただし認定資格取得の有無だけでは、例えばトラブルシューティングのスキル水準は分からない。
コンピュータサイエンスの学位と同様に、こうした認定資格は実務経験の代わりにはならない。
次回は、コンピュータサイエンス学位のメリットを説明する。
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