増員なきAI推進に悲鳴を上げる防衛現場
「最大の脆弱性は従業員」が8割 AI活用で深まるCISOの孤立と苦悩
攻撃への耐性に自信を深める一方、増員なきAI推進の重圧からCISOの8割近くが限界を訴えている。最大の脆弱性と警戒される従業員のAI利用に、疲弊する情シスが取るべき防衛策とは何か。
AIや新たな脅威への懸念が高まる中、大半の最高情報セキュリティ責任者(CISO)は2026年に自社が大規模なサイバー攻撃に見舞われると考えているのではないかと思うかもしれない。しかし、その予想は外れている。
Proofpointの調査レポート「2026 Voice of the CISO」によると、自社が深刻な攻撃を受けるリスクに直面していると考えるCISOの割合は61%で、2025年調査の76%から低下した。また、重大なデータ損失の報告も66%から53%に減少している。
だからといって、CISOの職務が楽になっているわけではない。企業はCISOに、セキュリティを確保しながらAIの全社的な導入を後押しするよう求めている。ProofpointでグローバルレジデントCISOを務めるパトリック・ジョイス氏は「AIはCISOの任務を根本から変えている」と指摘する。
本稿では、攻撃への耐性に自信を深める一方、最大の脆弱性と警戒される従業員のAI利用に疲弊する情報システム部門(情シス)が取るべき防衛策を解説する。
AIがもたらすもろ刃の優先事項
Proofpointの調査では、生成AIに対するCISOの不安が前年調査から18ポイント上昇して78%に達した。同時に、回答者の85%が従業員によるAIアシスタントや自動化ツールの利用環境を整えることを最優先事項として挙げている。
Epiphany Solutions GroupのCISOアドバイザー兼取締役であるアリッサ・ミラー氏は、TechTargetの取材に「大半のCISOは、社内システムだけでなく自社が提供する製品やソリューション全体で、AIの利用を積極的に拡大しようとする動きを目の当たりにしている」と語った。
EpiqのCISOやCDW、EY、Optivでセキュリティリーダーを歴任したミラー氏は、世間のAIに対する関心の高まりが情シスへのさらなる重圧になっていると付け加えた。
「AIが受ける注目がかつてなく高まっており、特に公表された大規模なインシデントには強い関心が集まっている。これまで抽象的に議論されていた脅威が、現実世界にもたらす影響が見え始めてきた。そのことがCISOの関心をかつてなく引きつけている」(ミラー氏)
対策の遅れと内部の脆弱性
サイバーレジリエンスへの自信は高まっているものの、調査対象となったCISOの半数以上(56%)が、自社は攻撃に対処する準備がまだ整っていないと回答した。
セキュリティリーダーはAIアシスタントだけでなく、コラボレーションツールやSaaSアプリケーション、クラウドストレージなど、日常業務で使うツールに潜むリスクも挙げている。
しかし、元IT運用リーダーで現在はAdaptivaのシニアソリューションアーキテクトを務めるデビッド・ソウダー氏によると、より深刻な問題は防御が突破されたときに発生するという。
「最大の問題は、企業がセキュリティ対策の統制には莫大(ばくだい)な労力を注ぎ込む一方で、防御が突破された後の対応計画がスカスカなことだ。完璧なセキュリティ対策は存在しない。攻撃が迅速化かつ高度化する中、企業はいずれ何かが防御を突破して侵入してくると想定しなければならない」(ソウダー氏)
サイバーセキュリティの最大の課題は、社内から生じる可能性がある。従業員を組織最大の脆弱(ぜいじゃく)性として挙げたCISOは全体の約5分の4(79%)に達しており、前年調査の66%から増加した。このため、セキュリティチームとIT部門の連携が重要な戦略となっている。
「効果的な協力関係は、優先順位の共有から始まる。セキュリティチームはどの脆弱性が最大の脅威となるかを特定し、それをIT運用部門に伝える必要がある。一方でIT運用部門は、不要な業務停止を招かずに、いつ、どのようにそれらの脆弱性を修正できるかという運用の知見を提供する」(ソウダー氏)
レポートで判明したその他の結果は以下の通りだ。
- 財務や規制面での影響拡大:報告されたデータ損失は減少したものの、規制当局による制裁(34%から40%に増加)や直接的な金銭的損失(27%から38%に増加)から受ける打撃は大きくなっているとCISOは指摘した。攻撃後の復旧コストやブランドの評判への損害も増加している
- 従業員への信頼低下:4人に3人以上(76%)のCISOが、従業員が企業の機密データを漏えいさせる形でAIツールを使用する可能性があると考えている
- 経営陣との連携改善と過度な負担:経営陣との関係性は改善傾向にあり、CISOの85%が自社の経営幹部と足並みがそろっていると感じている(2025年は64%)。しかし77%は、自身に向けられる期待が維持できない水準に達していると回答した
リソース不足への適応
これらの課題に拍車をかけているのがリソース不足だ。CISOの79%が、リソースや専門知識の大幅な増加がないままAI関連のリスクへの対処を求められていると回答した。
この負荷を管理するために、セキュリティリーダーは組織に適応し、社内で自動化ワークフローを活用する方法を見つけ出さなければならないとミラー氏は話す。
「AIを取り巻く脅威ばかりが注目され、SOC(セキュリティオペレーションセンター)やGRC(ガバナンス・リスク・コンプライアンス)チーム、セキュリティエンジニアリングチームが自らの効率と実効性をどう高めるかについては、ほとんど関心が払われてこなかった。チームが日々取り組んでいる退屈で反復的な業務を処理するための自立型AIエージェント機能を構築できれば、チームへの負荷を確実に最小限へ抑えられる」(ミラー氏)
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