GitHub調査で判明した重大リスク
GitHub上のMCP設定、8件に1件でAPIキー露出 情シスが今すぐ点検すべき盲点
AI活用を進める情シスに盲点だ。GitHub上のMCP設定の12%に認証情報が放置され、社内侵入や巨額AI費用負担の標的になっている。専門家が点検を促す深刻な実態と、取るべき緊急防衛策を明かす。
AIコーディングエージェントと社内ツールやデータを連携する標準仕様として、「MCP」(Model Context Protocol)の普及が進んでいる。だがその一方で、重大なセキュリティ上の盲点が生じている。
セキュリティ企業Hush Securityの調査によると、GitHubで一般公開されているMCP設定ファイルで、認証情報スロットのおよそ8件に1件の割合でAPIキーやパスワード、アクセストークンなどの機密情報がハードコードされていた。
MCPは本来、言語モデルが外部データベースや開発環境にクエリを実行する処理を効率化するオープン標準として策定された。現在ではエージェント型AIをつなぐ中核技術となっている。MCP設定ファイルは、AIコーディングエージェントでアクセスすべきツールや認証手順を指示する。そのため、企業の重要システムに足場を広げようとする攻撃者にとって価値の高い侵入経路となっている。
本記事では、深刻な実態と、取るべき緊急防衛策を明かす。
コピー&ペーストするだけで悪用できる脅威
調査会社Gartnerでアナリストを務めるキース・ガットリッジ氏は「CISO(最高情報セキュリティ責任者)は強い危機感を持つべきだ」と警告する。攻撃者がMCP設定ファイルを悪用する手順は、AIエージェントにコピー&ペーストするだけで済むと同氏は付け加える。「必要な操作はそれだけだ。技術的な知識は全く必要ない」(ガットリッジ氏)
研究チームは、十数種類以上のコーディングエージェントにまたがる約8万2000件の公開MCP設定ファイルを分析した。その結果、認証情報スロットの12%で認証情報が直接書き込まれている実態が判明した。これは、インターネット接続環境さえあれば誰でも容易に秘密情報を取得でき、関連するアプリケーションやサービス、データへの不正アクセスに悪用可能であることを意味する。ハードコードされた認証情報のうち24%は、有効期限がなく、かつ広範なアクセス権限を持っていた。これらはデータベースやワークスペースなどの企業資産に無制限かつ広範なアクセスを許可する。
Hush Securityの研究チームは「さらに深刻なのは、そのアクセス権限が人間ではなくエージェントに付与されている点だ」と報告書に記している。「MCPサーバはこのIDのもとで自律的に動作する。人間の介入はなく、権限を取り消すための人事異動プロセスも存在しない。誰が作成したかという記録すら残っていない場合が多い」(同チーム)
サイバーセキュリティリスク管理とAIを専門とする仮想CISO(vCISO)兼経営コンサルタントのマシュー・スミス氏は、MCP設定ファイル内の露出した認証情報が、機密データの窃取だけでなく、企業の費用負担によるAIトークンの大量消費にも悪用される恐れがあると警鐘を鳴らす。研究チームによると、GitHubの公開リポジトリでハードコードされていた認証情報には、AnthropicやOpenAIのAPIキーが含まれていた。
スミス氏は米TechTargetに、「この脅威は現実に存在し、すでに悪用されている。開発パイプラインを抱える企業のCISOにとって最重要の懸念事項であるべきだ」と語った。「攻撃者は自身のトークン消費を賄うためにAPIキーの入手に強い関心を寄せている。これらのキーは使い回され、組織に深刻な金銭被害をもたらす恐れがある」(同氏)
MCPのリスク低減に向けた対策
被害の大きさを考慮すると、CISOはすぐにでもMCPについてのリスクの露出状況を評価すべきだと専門家らは口をそろえる。
「これは『今すぐ対処すべき』問題だ」とGartnerのガットリッジ氏は指摘する。企業が公認・非公認を問わずAIエージェントを運用している場合、すでにMCP経由で社内システムと接続している可能性が高いという。「MCPのガバナンスに着手していなければ、すでに後手に回っている」(同氏)
Hush Securityの報告書で重要な指摘として挙げられているのは、現在の設定ファイルからハードコードされた認証情報を削除しても、Gitのコミット履歴からは消えないという事実だ。研究チームの調査でも、過去のバージョンのコード内に認証情報が残存している事例が確認された。「露出を完全に解消する唯一の手段は、提供元での認証情報のローテーション(再発行と無効化)だ」と同報告書は記している。
専門家らは、露出した認証情報のローテーションに加えて、CISOが以下の対策を講じるよう推奨している。
- MCPサーバ設定のハードコード変数の点検:認証情報スロットには安全な形式を採用する。例えば「${VAR}」のような環境変数展開や、クライアントネイティブのプロンプト入力、シークレット管理ツール、プレースホルダーなどを用いる
- MCPサーバへのアクセス管理:AIゲートウェイやMCPゲートウェイを導入するか、MCPアグリゲーターを活用する
- 検知能力の評価:導入済みのNDR(Network Detection and Response)基盤やエンドポイント管理システムが、未承認のMCPクライアントおよびサーバの利用を検知できるか確認する
- 最新版MCPへの移行:セキュリティ制御機能が追加された2026年7月28日付のMCP仕様を開発者が使用していることを確認する
AIセキュリティ企業Entの共同創業者兼最高技術責任者(CTO)を務めるブランドン・ディクソン氏は、今回の調査結果がCISOに2つのセキュリティ課題を突きつけていると指摘する。第1に社内のAIソフトウェア開発プロセスの保護、第2にユーザーがMCPサーバ経由でAIモデルに接続している特権リソースの把握だ。
「これは今すぐ行動を起こすべき警告だ」と同氏は述べる。「CISOがソフトウェアを承認したかどうかにかかわらず、社内ではすでにAIが使われている」(ディクソン氏)
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