開示請求の増加と事案の複雑化によって、厚生労働省の情報公開事務は手作業による限界を迎えつつある。これに対し、厚生労働省はOracleのサービスを用いてAI活用システムを開発した。どのように現場を救うのか。
厚生労働省は、開示請求などの情報公開事務における作業負荷を軽減するため、OracleのクラウドインフラによるAI活用システムを導入した。従来は請求内容に応じた所管部署の選定や対象文書の特定、開示判断に向けた過去事例の確認、決定通知書の作成など、複数部署をまたぐ手作業の工程がかさみ、事務処理の早期化が喫緊の課題となっていた。
これらの課題を解決するため、厚生労働省は専用のAI活用システム「Ministry of Health, Labour and Welfare Organization AI」(MOA)を構築した。過去文書の意味検索システムを2026年4月に稼働開始しており、同年7月には対話型AIによる文書要約や回答案作成の支援機能を順次稼働させる計画だ。人手に依存していた定型作業を減らし、職員が法令に基づく判断や国民への説明責任を果たす業務に一層集中できる体制を整えた。
機密性の高い行政文書を扱う上で、厚生労働省はどのようにAIを安全に組み込み、業務プロセスを再構築したのか。
MOAは、情報の検索から文書作成までの一連の業務プロセスを段階的に最適化する構成を採用している。対象となる業務は、開示請求処理事務、審査請求処理事務、審理手続処理事務だ。
第1段階として2026年4月に稼働したのが「意味検索システム」だ。このシステムは、自動運用機能を備えたデータベースである「Oracle Autonomous AI Database」を中核とするデータ管理システムに、さまざまな形式の過去文書を格納している。ここに、データの意味合いや文脈を数値化して検索する「ベクトル検索」技術を組み合わせた。単なるキーワードの完全一致検索とは異なり、職員は自然言語に近い表現で検索ができる。これによって、類似する過去の前例や判断材料を迅速に参照することが可能になった。
第2段階では、2026年7月の稼働を目指し、企業向け生成AIサービス「OCI Enterprise AI」を活用した対話型AIシステムの構築を進めている。このシステムには、外部文書や蓄積された内部データを参照して回答を生成する技術「RAG」(検索拡張生成)が組み込まれている。蓄積された業務データを活用し、文書の要約や請求者に提示する回答案の作成を支援する仕組みだ。
利用者との接点になるユーザーインタフェース(UI)には、ローコード開発ツール「Oracle APEX」を採用し、現場の業務に適した画面をスピーディーに実装している。プログラムを自動実行する「OCI Functions」や、データを安全に保管する「OCI Object Storage」などの各種クラウドサービスを組み合わせ、蓄積、検索、生成AI連携、アプリ実行を集約したシステムを実現した。
行政機関が扱う情報公開関連文書には、厳格な情報管理が求められる。厚生労働省は、政府がクラウドサービスの安全性を評価・登録する評価制度「ISMAP」(政府情報システムのためのセキュリティ評価制度)に登録されたクラウドインフラ「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)に、MOA専用の独立したテナント領域を構築した。
セキュリティの設計においては、ネットワークの内外を問わず常に安全性を検証する「ゼロトラストセキュリティ」を採用している。インフラからアプリケーションまでの各レイヤーで対策を講じる多層防御の構成だ。
職員の利用に当たっては、多要素認証(MFA)に加えてアクセス元のIPアドレスを厳格に制限している。業務上の役割に応じた権限分掌によって、アクセス許可をきめ細かく制御する仕組みを設けた。通信や保存データの暗号化に加え、Oracle Autonomous AI Databaseが持つデータセキュリティ機能を活用し、重要文書を安全に管理できるシステム構成を確立している。
今回のAI活用システムの導入によって、過去文書の調査や回答案の整理といった時間を要する作業の大半が自動化される。ただし、AI技術はあくまで職員の知識活用と作業支援を担う補助手段だ。開示・不開示の最終決定や内容の審査は、引き続き担当職員が法令に基づいて厳格に実施する。
定型作業の合理化によって浮いた時間を、事案の精査や説明責任の履行に充てることで、行政サービスの迅速化と質の向上を図る狙いがある。今後は、情報公開事務において大きな負担となっている開示文書の「墨消し作業」(個人情報などの黒塗り処理)を支援する機能の追加なども検討されている。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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