物理キーボード派にお勧め
徹底レビュー:正方形ディスプレーの変わり種スマホ「BlackBerry Passport」への率直な感想
BlackBerryの新しい主力機種「BlackBerry Passport」は、正方形のディスプレーや物理キーボードの搭載など、他に類を見ない特異性を持つスマートフォンの変わり種だ。
最近のスマートフォンは、どれも同じようなデザインに見える。長方形の平板で、前面全体が画面になっている。大概は物理キーが1つ付いている。スマートフォンの電源を入れるまで、はっきりした違いは分からない。
しかし、カナダBlackBerryの「Passport」は他のスマートフォンと異なる。同社の新しい主力機種であるPassportはユーザーの目にとまった瞬間に強い印象を残すだろう。型破りな正方形のディスプレーとスリムになった物理QWERTYキーボードを備えているという点で、Passportが他に類を見ないスマートフォンであることは紛れもない事実だ。
問題は、この特異性が使い勝手の良さにつながっているかどうかである。本稿では、Passportがどれほど実用に耐え得るかを検証する。
構造とデザイン
はっきり言ってPassportのデザインは使いづらい。不自然な形のディスプレーを中心に構成されており、幅が広すぎる。既成概念にとらわれないBlackBerryの取り組みを評価する人もいるだろう。だが、ユーザーにメリットが何もない取り組みは無駄でしかない。残念ながらPassportに対する取り組みは無意味と評価せざるを得ない。
BlackBerryは、正方形のディスプレーによって表示や操作を向上しようとしている。ただし、最近のメディアのほとんどは、縦長のレイアウトか16:9のワイドスクリーンに対応した形式で提供されているのが実情だ。ワイドスクリーン形式対応のメディアは、スマートフォンを横向きにするだけでコンテンツが横長の形で表示される。そのため、Passportのような形のディスプレーが必要になることはほとんどない。Passportのディスプレーは平均より幅が広く、コンテンツは16:9ワイドスクリーンではなく真四角の「フルスクリーン」で表示される。
Passportはスマートフォンとしてはサイズが大きい。片手では操作できず両手で操作しなければならないことが多い。また、サイズは128(高さ)×90.3(幅)×9.3(厚さ)ミリでポケットに収まらない。かなり不便なサイズなので、かばんに入れて持ち運ぶのが無難だろう。
とは言うものの、Passportの構造品質はすばらしい。非常に薄く、196グラムと少し重さはあるが、その重さがスマートフォンのしっかりとした感触に貢献している。背面にはゴム加工が施されているため、指紋が付きやすい、だが、滑りにくいというメリットがある。また、エッジとキーの行間に施された金属のアクセントによって、高品質で洗練された外観になっている。
ディスプレー下部の物理QWERTYキーボードは別として、Passportのレイアウトについて特筆すべき点はない。電源/スタンバイボタンとヘッドフォンジャックは上側面、音量調節と消音/一時停止を行う3つのボタンは右側面にある。左側面にはボタンや端子はなく、下側面には2つのスピーカーとmicroUSB充電端子が配置されている。スピーカー音は甲高く耳ざわりに感じることがある。カメラも期待通りの場所に収まっている。前面カメラの位置は本体の右上隅、背面カメラは本体の上中央だ。
残念ながら、バッテリーを取り外すことはできない。だが、背面パネルには取り外せる小さなカバーがある。そこにはnano-SIMスロットとmicroSD拡張端子が配置されている。
ディスプレー
一風変わったアスペクト比率であるにもかかわらず、Passportに搭載されている4.5インチディスプレーの品質はすばらしい。1440×1440の解像度と452ppiのピクセル密度により、画像だけでなく文字も鮮明に表示される。Passportのようなビジネス向けデバイスでは、画像よりも文字がはっきり表示されることが重要になるだろう。色彩は鮮やかな部類には入らないが、Passportで利用する主要コンテンツがメディアでないことを考えれば、十分満足できるレベルだ。ディスプレーはグレアの問題に特に上手く対応しているわけではない。だが、明るさを最大に設定すればある程度見にくさを緩和することはできる。
構造のセクションで評価したように、特殊な画面の形を採用するという取り組みはほぼ無意味だった。幅の広い正方形のディスプレーでドキュメントが快適に読めるというBlackBerryの主張は理解できなくはない。だが、上述の通り従来の形のスマートフォンを横向きにすればワイドスクリーン形式にできる。この点を考えれば、正方形のディスプレーは決して必要なものではない。それから、もう1つ指摘しておきたいことがある。グラフやスライドショーを除く、ほとんどのドキュメントは縦方向のレイアウトになっている。つまり、従来の形のディスプレーの方がドキュメントの閲覧には適している。
さらに、このような特殊な形のディスプレーでは反対側の端にある項目をタップするのが困難だ。そのため、このディスプレーが活躍する機会は多くない。また、最近はワイドスクリーン形式で提供されている動画が多い。そのため、快適な状態で動画を鑑賞することはできないだろう。ワイドスクリーン対応の映画(アスペクト比率16:9)を標準型のテレビ(アスペクト比率4:3)で見たことはあるだろうか。Passportで動画を再生した場合は、基本的にそのような状態になる。
キーボード
物理キーボードに関してBlackBerryは依然支配的な立場にある。その理由は、物理キーボードを搭載しているスマートフォンメーカーがほとんどないことにある。だが、これは取るに足らない問題だ。とは言うものの、物理キーボードはBlackBerryの強みである。Passportにも高品質なキーボードを搭載して、仮想キーボードよりはるかに優れた入力操作を実現している。
ただし、Passportに搭載されているキーボードは、あらゆる点で通常のBlackBerryキーボードと異なる。Passportのキーボードはハイブリッド型だ。物理キーボードにあるのはアルファベットのキー、スペースキー、バックスペースキー、エンターキーのみ。それ以外の数字、記号、句読点などのキーは、全て画面下部の仮想キーボードに表示される。最初はこのレイアウトに少し違和感を覚えるかもしれない。だが、しばらくすると自然に使えるようになるだろう。
キーボードには、もう1つ便利な機能がある。それはPassportのキーボードが静電容量式で、タッチ操作に対応していることだ。キーを押さない程度にキーボードの上を指で軽くなでると、スワイプがジェスチャとして認識される。そのため、キーボードを使用して、ドキュメントやWebページを快適にスクロールできる。必要な操作は、キーボード上をスワイプするだけだ。この機能により、キーボードからディスプレーに手を移動する手間が最小限に抑えられる。
このオプションの機能は非常に素晴らしい。だが、オートコンプリート機能の使い勝手はあまり良くない。予測変換候補として表示された単語を下から上に向ってスワイプするとその単語を選択してテキストに追加できるという機能だ。何度か試してみたが、機能するようには思えなかった。最後まで手動で入力した方が時間を節約できるだろう。
パフォーマンス
PassportはBlackBerryの新しい主力製品である。そのため内部仕様はそれ相応に強力だ。米Qualcommの「Snapdragon」(2.2GHz、クアッドコア)、「Adreno 330 GPU」、3GバイトのRAM、32Gバイトのオンボードストレージを備えている。また、ストレージはmicroSDで拡張できる。
これら全ての構成要素が驚くほど素早く滑らかな操作性に貢献している。ゲーム、マルチタスク、Webサーフィンなどで動作のもたつきや待ち時間が生じることはない。これはあくまで米TechTarget編集部の意見だが、「BlackBerry 10 OS」は、どのデバイスでもWebサーフィンの動作が非常に軽快だ。また、通話音質がクリアであることも指摘に値するだろう。詳細については後述するが、テスト通話は全てVoIPで行っている。
バッテリー持続時間
Passportのバッテリー持続時間は非常に優秀だ。ただし、詳しい説明に入る前に断っておきたいことがある。テストに使用したPassportに付属のSIMカードには不備があった。本来はnano-SIMを使用するが、microSIMが誤って同梱されていた。そのため、VoIPによる通話品質テストを含め、テストはWi-Fiネットワークのみで行うことになった。データネットワークと断続的に接続して常時電力が消費されることがなかったため、バッテリー持続時間が大幅に伸びている。
1回の充電で3日間使用できたという結果については、接続の点を差し引いて理解してほしい(バッテリーの持続時間は、ほぼぴったり72時間だった)。データネットワークとの接続がなかったとしても、バッテリーの持続時間が優れていることに変わりはない。高い負荷を掛けても、これだけ長い時間にわたって使用することができている。テストでは、20分の動画鑑賞、6通のメール送信、30分強のWebサーフィン、5分のVoIP通話および米DataVizの「Docs to Go」アプリで簡単なメモ作成を行った。
データネットワークとの接続がなかったことを考慮して2日間差し引いても、高い負荷を掛けた状態でPassportは1回の充電で24時間使用できる計算になる。やはりバッテリー持続時間は十分だといえる。3450 mAhのバッテリーパックは取り外せないが、余裕で1日使うことができる。
ソフトウェア
BlackBerry 10 OSについては、よく知られている点に関する説明は割愛したい。だが、重要な点はPassportでも変わっていない。それは「BlackBerry Hub」が便利な機能だという点だ。ここに全てのメッセージと通知がまとめられている。ジェスチャによるUIのナビゲーションも、相変わらず素早く直観的だ。
Passportには最新プラットフォームのBlackBerry OS 10.3が搭載されている。そのため、「BlackBerry Assistant」や「BlackBerry Blend」などの新しい魅力的な機能が利用できる。BlackBerry Assistantは、米Appleの「Siri」、米Googleの「Google Now」、米Microsoftの「Cortana」などのような音声アシスタント機能のBlackBerry版だ。一方、BlackBerry Blendは米Appleが「iOS」と「Mac OS」に用意している機能とよく似ている。この機能を使用するとWi-Fi、モバイルネットワーク、USBなどで接続したデスクトップPCやタブレットなどのデバイスから、スマートフォンの全コンテンツにリアルタイムでアクセスできるようになる。具体的には、メッセージ、ドキュメント、メディア、連絡先などのコンテンツだ。
残念ながら、Passportにはお決まりの欠点もある。それは、BlackBerry 10のアプリとソフトウェアのラインアップがあまりにもお粗末であることだ。多くの開発者にとって、普及率が低いOS用のアプリを作成することに価値はない。また、BlackBerryのアプリストア「BlackBerry World」には、あるアプリが用意されている。そのアプリの目的は、ユーザーがBlackBerry 10に欲しいアプリをリクエストすることだ。これはアプリが不足している状況を物語っている。
組み込みのソフトウェアに関しては、ブロートウェア(システムリソースを大量に消費する重いソフトウェア)は比較的少なく、不要なソフトウェアは最小限に抑えられている。連絡先、電卓、地図、メディアなどの基本的なアプリは、もちろんインストールされている。最初からインストールされているその他のアプリのうち特筆すべきは、米Amazonの「Amazon Appstore」、Docs to Go、米Facebookの「Facebook」、米Twitterの「Twitter」、米LinkedInの「LinkedIn」、米Evernoteの「Evernote」、米Foursquareの「Foursquare」、米Boxの「Box」および米Adobeの「Adobe Reader」だ。
カメラ
BlackBerryのカメラは期待値を上回ったためしがない。Passportに搭載されている1300万画素のカメラも、これまでとほぼ同じだ。輪郭はくっきりと写り、逆光でも撮影に大きく失敗することはない。だが、少し色が過度に飽和して見えることがあり、写真の細部にノイズが見られることも多い。
写真アプリには、カスタマイズのオプションが用意されておらず、理想的なものとは言い難い。例えば、ホワイトバランスやシャッター速度などを手動で調整する設定がない。TechTarget編集部はHDRモードのパフォーマンスをかなり高く評価している。だが、このモードで撮影した画像が現実離れしすぎていると感じる人もいるだろう。
結論
Passportに対するBlackBerryの意気込みは素晴らしい。複数のリスクが内在しているにもかかわらず、新しいものを生み出そうとしている。現在のスマートフォン市場では、このような取り組みはあまり見られないため、称賛に値するだろう。だが、残念ながらPassportが身をもって証明したのは「特異性を目的とした特異性は用を成さない」ということだけだ。
BlackBerryは、ソフトウェア面に多くの課題を残している。特殊なフォームファクターを採用することで、潜在顧客を遠ざける結果となっている。なぜ、BlackBerryは、ポケットに入らず片手で操作しにくい幅広なスマートフォンを作ったのだろうか。Passportの形とサイズは、多くのデメリットの原因になっているが、明確なメリットは見当たらない。
Passportには欠点があるものの、OSなど優れた点も多数ある。そのため、このデザイン上の欠陥は残念でならない。ディスプレーの品質は高く、タッチ操作に対応したキーボードも素晴らしい。また、バッテリー持続時間に至ってはピカイチだ。だが、Passportには致命的な問題がある。それは、このように不便な正方形のディスプレーと衰退しているBlackBerryを採用したことに対する正当な理由付けがないことだ。今後も、そのような理由付けを行うことはできないだろう。
長所
- 洗練された多機能キーボード
- 頼りになるバッテリー持続時間
- 高品質の構造とディスプレー
短所
- フォームファクターとアスペクト比率が基本不便で無意味
- BlackBerry 10のエコシステムとアプリのラインアップには相変わらず不満が残る
- 平凡なカメラ
BlackBerry Passportの基本的な性能は良い。だが、BlackBerry 10の脆弱なエコシステムと特殊で不便な構造という問題がある。
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