規制は厳しく、市場は未成熟
「AI手術支援システム」に手術を任せられる日は来るか?
手術支援に人工知能(AI)技術を導入する場面は、現時点ではごく一部に限られている。だが「AI手術支援システム」は、治療の質を向上してリスクを低減する大きな可能性を秘めている。
人がより効率的にきめ細かい方法で作業できるように、人工知能(AI)技術を搭載したシステムが人を支援する機会が広がっている。AI技術を搭載した画像診断装置、診断支援ソフトウェアなどがその例だ。以前は人にしかできないと考えられていた作業が、AI技術の支援を受けられるようになってきた。こうした技術は「拡張知能」(Augmented Intelligence)として知られている。
手術の可否を判断し、治療を簡略化し、手技をサポートする
AI技術を使って手術を支援する「AI手術支援システム」は、拡張知能の注目すべき応用例だ。その名の通り、AI手術支援システムは外科医の第二の手や目となって手術を支援する。さらにロボット技術を活用した「手術支援ロボット」も医療機関に浸透し始めている。本稿は、手術の現場でAI手術支援システムや手術支援ロボットを使用するメリットと可能性を紹介する。
AI手術支援システムは、画像診断の際に異常所見を鑑別する場面で重宝されている。例えばリンパ節転移陽性のがんに関して、AI手術支援システムは検出率を向上させ、見逃しや見落としの件数を削減することで、人命救助に貢献する。AI手術支援システムを利用して最初の問題特定と手術部位を決定するプロセスは、治療を簡略化するだけでなく、そもそも手術が必要かどうかの判断を支援することもある。
人体の3D(3次元)医用画像を作成する際に、AI手術支援システムを使う場合もある。3D医用画像は、外科医の手術準備や、実際の執刀の際に正確な参照物になる。
不安を減らし、治療をより低侵襲に
切開に伴うリスクを低減する上で役立つのが、手術支援ロボットだ。手術支援ロボットは、高い正確性と高度な技能を実現する。手術支援ロボットを手術室に配備すれば、的確で高精度な技術を要求する術式も可能になる。その結果、医療ミスや合併症の低減につながる可能性がある。
手術支援ロボットが切開部位の縫合をしてくれることは、外科のパフォーマンス向上にもつながる。こうしたロボット手術は傷口を小さくでき、患者のダメージを少なくできる。切開部位が小さければ患部周囲の炎症も抑えられ、回復も早くなる。つまり、患者が回復するまでに病院と自宅で費やす時間が短くなる。
手術時の疲労を抑制
手術時の疲労は、処置が長時間にわたり複雑になるほど、全ての関係者にとって大きなリスクになり得る。手術支援ロボットを手術室に投入し、AI手術支援システムを組み合わせることで、外科医の負担を下げられる。その結果、医療従事者は元気を取り戻し、医療ミスも少なくなるだろう。
手術の際には、手術部位だけでなく他の臓器に負担が掛かることもある。AI手術支援システムがあれば、手術中の不慮の切開や交差汚染といった事故によって術者が他の臓器に損傷を与えるリスクを低減するのにも役立つ可能性がある。
AI手術支援システムを利用した手術は、大きな可能性を秘めている。だが多くの医療機関は、手術のリスクを重く見て慎重な判断をしようとしているために、AI支援システムの使用を厳しく規制している。このような規制から、AI手術支援システムの成熟度はまだ初期段階にあるのが実情だ。
現時点において、認可された「自律型のAI手術システム」は存在しない。認可を受けている一部のAI手術支援システムは、いずれも人に逐一情報を提供することが必須になっている。今後の数年で、AI技術は医療現場にさまざまな改善をもたらすだろう。高度な訓練を受けた医療従事者の「頼れる助手」という役割を果たすだけでなく、自律的に機能するAI手術支援システムの用途が増える状況を目にするのも夢ではないはずだ。
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社うるる] 「入札市場」攻略ガイド:効率的に落札するためのポイントを徹底解説 -
製品資料
[株式会社うるる] 入札情報に特化した「販路拡大」「効率化」のためのサポートツールとは? -
市場調査・トレンド
[株式会社うるる] 公共入札に成功する企業と失敗する企業の「5つの違い」 -
製品資料
[日本ビジネスシステムズ株式会社] 専門家が教える、Microsoft 365の「テナント統合/分離」を成功に導く秘訣 -
製品資料
[rakumo株式会社] Microsoft 365での情報埋没を防ぐ、社内ナレッジを資産化する情報ポータル活用
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
2
「Microsoft 365」が乗っ取られる MFAを破る“本物の画面”の恐怖
-
3
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
4
Claude利用8割のGMO、AI人材の評価軸が「トークン管理」に変わった
-
5
AI導入が失敗する“真犯人”は現場のマニュアル 7割が陥る「標準化」のわな
-
6
被害額は過去最高額 それでも「サイバー犯罪者が捕まらない」3つの理由
-
7
「テザリング依存」に潜む落とし穴 “遅いVPN”を解消するネット構築術
-
8
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
9
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
10
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
5
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
6
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
7
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
-
8
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
9
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
10
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー