「SaaSバックアップ」は軽視でいいのか【後編】
「Microsoft 365」や「Salesforce」のバックアップ対策が進まない本当の理由
企業がSaaSのバックアップ対策を十分に講じていない問題がある。それは決して製品が不足しているからではない。では何が問題なのか。
企業がSaaS(Software as a Service)のデータバックアップを軽視しがちな背景や理由を考えた中編「SaaSのデータ保護を『重視する企業』と『軽視する企業』を分ける“あの特徴”」に続き、後編となる本稿はSaaSのバックアップに利用できるさまざまなバックアップ製品を紹介する。
企業がSaaSのバックアップに本気にならない訳
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クラウドもバックアップは欠かせない
市場には、SaaSのデータを守るためのバックアップ製品が多数出ている。OwnBackupやOdasevaなどのベンダーはSaaSに特化したバックアップ製品を提供している。Cohesity、Commvault、Druvaといったデータ保護製品のベンダーも、サブスクリプション型のオフィススイート「Microsoft 365」(Office 365)や顧客管理システム「Salesforce」向けのバックアップ製品を手掛けている。
サードパーティー製品によるSaaSのバックアップにはさまざまな利点がある。例えば、CohesityのMicrosoft 365向けバックアップ製品はデータを30日以上保存できる。Commvaultのバックアップ製品「Metallic」は標準機能としてバックアップデータを無期限に保存する。MetallicはMicrosoft 365に加え、業務用アプリケーション製品群「Microsoft Dynamics」のデータも対象に含められるようになった。
CommvaultでMetallic部門のゼネラルマネジャーを務めるマノージ・ネイア氏は、「問題はSaaSベンダーから企業への情報提供が足りないことだ」と語る。同氏によると、SaaSベンダーがデータ保護の全ての責任を負うと考える傾向にあるのは、データ管理やセキュリティの担当者ではなく、「データ保護の現場から遠く離れた人」だと指摘する。
2021年6月に調査会社Dimensional Researchが発表した調査結果では、自社のデータ復元計画の詳細を把握しているCEO(最高経営責任者)はわずか8%だった。この調査は、バックアップベンダーArcserveからの委託を受けてDimensional Researchが実施した。調査に参加したのは従業員数100人~2500人の企業で技術採用の意思決定権を持つ709人だ。
Dimensional Researchの調査では他に、「CEOはデータ復元計画の詳細を把握しているが、実装を監督しているわけではない」と回答した企業が27%、「CEOはデータ復元計画の実施を指示しているが、詳細は把握していない」と回答した企業が58%だった。
ArcserveでCMO(最高マーケティング責任者)を務めるシュリダール・スブラマニアン氏はこう語る。「10年前なら、データ復元の責任はCIO(最高情報責任者)やCISO(最高情報セキュリティ責任者)に委ねられていた。しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)中にランサムウェア(身代金要求型マルウェア)が爆発的に増えたことによって、データ復元はCEOも含め、企業全体に影響する問題へと変わっている」。
ランサムウェア攻撃の経験がバックアップ導入を促す
企業が有する個人情報が、ランサムウェア攻撃によって盗まれたり、削除されたりする恐れがある。サイバー攻撃は企業の評判を落としてビジネスに悪影響を与える可能性も高い。そのため、CEOは従来の「事業拡大」「コスト削減」「利益の追求」だけではなく、新たに「データ保護」にも注目すべきだとスブラマニアン氏は説明する。「株主を意識するなら、データ保護は極めて重要だ」(同氏)
ランサムウェア攻撃対策とSaaSのバックアップは表裏一体の関係にある。Commvaultのネイア氏は、企業がMetallicを利用する最大の理由はランサムウェアのリスク回避だと説明する。
米TechTargetの調査部門Enterprise Strategy Group(ESG)の調査では、回答企業の約19%がSaaSのデータを失った原因として「社外からの攻撃者による悪意のある削除」を挙げている。「企業がバックアップ製品の導入を検討する本気度は、過去にランサムウェア攻撃を受けた経験があるかどうかにも関係している」と、ESGのシニアアナリストを務めるクリストフ・ベルトラン氏は分析する。
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