LangChainで始めるLLMアプリ開発【前編】
「LangChain」入門──プロンプト、ツール、チェーンで始めるLLMアプリ開発
生成AIを活用したアプリケーション開発が本格化する中で、LLMと外部システムをどう連携させるかが重要な課題となっている。この課題を解決する有力なフレームワークとして注目されているのが「LangChain」だ。
生成AIをベースにした高度なAIアプリケーションを開発するには、多様なデータセットと大規模言語モデル(LLM)を連携させることが不可欠だ。とはいえ、標準化された方法でLLMから各ツールやデータにアクセスするよう制御する機能を実現するのは簡単ではない。
生成AIを活用したアプリケーションの開発を支援するオープンソースのフレームワーク「LangChain」を使えば、生成AIを外部のツールやデータソース、API(アプリケーションプログラミングインタフェース)と連携させ、より高機能かつ動的なAIアプリケーションを構築することが可能になる。LangChainは、LLMの操作やAPIとの統合のデファクトスタンダードとなっている。対象のLLMが従来のソフトウェアとやりとりするための重要な仲介役を担う。
2022年に登場して以来、LangChainは急速に進化してきた。本稿では、LangChainの主要な機能と特徴を踏まえながら、このツールを使ってAIアプリケーションをどのように開発できるのかを紹介する。
LangChain理解の肝:プロンプト、ツール、チェーン
LangChainを使えば、AIモデルを外部のソフトウェアやAPI、データベースなどに接続できる。これによって情報を取得したり外部システムに指示を出したりすることで、AIアプリケーションはより実用的な処理を担えるようになる。LangChainには、「プロンプト」「ツール」「チェーン」という3つの構成要素がある。
プロンプト
LangChainのあらゆる処理は「プロンプト」を中心に展開される。プロンプトとは、生成AIがタスクを実行する際の“指示文”や“問い”であり、AIアプリケーションの起点となる要素だ。
シンプルなLLMの活用であれば、基本的なプロンプトだけでも実装できる。だが、過去のやりとりやコンテキスト(文脈)を記憶する「メモリ」の追加、プロンプト内容の動的な変化への対応といった高度なユースケースでは、プロンプト設計が複雑になる。
LangChainはこうした複雑さに対応するため、「プロンプトテンプレート」と呼ばれる仕組みを用意している。これは、開発者が動的な入力を埋め込める再利用可能なテキスト構造であり、プロンプトの柔軟なカスタマイズや再利用を可能にする。
ツール
LangChainにおける「ツール」とは、LLMのタスクを構成する個々のモジュールのことだ。これらのツールを組み合わせて接続することで、より複雑で実用的なAIアプリケーションを構築できる。ツールは、後述する「チェーン」の構成要素としても使われる。
LangChainは、あらかじめ利用可能なさまざまな組み込みツールを提供しており、これらを使ってLLMの処理能力を拡張できる。代表的なツールには以下のようなものがある。
- Tavily Search API
- LLM用に設計されたリアルタイム検索エンジン。外部情報を即座に取得して活用できる。
- Python REPL(Read-Eval-Print Loop)
- Pythonコードを1行ずつ入力してその場で実行できる標準機能。計算処理やロジック検証に活用される。
- SerpAPI
- Googleなどの検索エンジン結果をAIアプリケーションに統合できる。
- Wolfram Alphaプラグイン
- Wolfram Researchが提供する計算知識エンジン「Wolfram Alpha」と連携し、数学的な推論や高度な情報処理を実行できる。
チェーン
LangChainにおける「チェーン」とは、複数の処理ステップ(リンク)を連結したワークフローのことを指す。それぞれのリンクには「ツール」や「プロンプト」などが割り当てられ、あるリンクの出力が次のリンクの入力として渡されていく。つまり、直列的な処理の流れを構築できるのが特徴だ。
最も基本的なチェーンは、プロンプトテンプレートとLLMインスタンスを結び付けたシンプルな構成となる。一方、より複雑なチェーンでは、複数のユーティリティーツールや外部APIを組み合わせて、段階的に情報処理を行いながら目的の結果を導き出すような高度な制御が可能になる。
LangChainでは、以下の3種類のチェーンが提供されている。
- 汎用(はんよう)チェーン
- 他のチェーンを構築するための基本構成を担う。再利用性が高く、柔軟な設計が可能。
- ユーティリティーチェーン
- 複数のツールを組み合わせて一連の処理を自動化するために使用される。
- 非同期チェーン
- 複数の処理を並行して実行し、効率的なパフォーマンスを実現する。
高度なチェーン活用とRAGの実現
汎用チェーンでは、プロンプトテンプレートが入力データをフォーマット(整形)し、LLMに渡す役割を担う。その派生であるトランスフォームチェーンは、入力に変換処理を加えた上で、別のチェーンやLLMに受け渡すことで、より精緻な出力を導く。
「APIChain」のようなモジュールを使えば、開発者はLLMが外部データとやりとりするためのAPIを柔軟に設計できる。これにより、LLMを“外部連携可能なインテリジェントエージェント”として機能させることが可能になる。
ユーティリティーチェーンは、AIアプリケーションの機能拡張やタスクの自動化、動的コンテンツの生成に貢献する。これはLangChainの活発な開発コミュニティーに支えられ、進化し続けている。代表的なコンポーネントには以下がある。
- PAL(Program-Aided Language model)
- コードベースのリーズニング(推論)支援ツール。
- SQLチェーン
- データベースと連携し、自然言語によるデータ照会を可能にする。
- Bashチェーン
- シェルコマンドによるOS操作を統合する。
- API/リクエストチェーン
- 外部APIとの接続やデータ取得を担う。
開発者は、複数のLLMや外部データソースを組み合わせたマルチステップのワークフローをLangChainで構築できる。例えば、新製品リリースの準備に必要な文書作成や、複雑な問い合わせに対応するチャットbotなど、高度なアウトプットを目指すケースでは、さまざまなツールやエージェントが連携して処理を実行する。LangChainはその中核機能として、RAG(検索拡張生成)にも対応している。RAGは、外部データベースなどから取得した文脈情報をLLMに提供することで、いわゆる「ハルシネーション」(事実と異なる回答)の発生を抑制し、出力の信頼性を高める手法だ。
次回の後編では、LangChainを実際の開発環境に組み込む際の具体的な方法やベストプラクティスを紹介する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 世界のインサイト&ベストプラクティス
米国TechTargetの豊富な記事の中から、さまざまな業種や職種に関する動向やビジネスノウハウなどを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[サイボウズ株式会社] DXに必要な「Dスキル」「Xスキル」を持った人材を育成するには? -
市場調査・トレンド
[サイボウズ株式会社] データで見る、DXが「順調に進む企業」と「つまずく企業」の違い -
製品資料
[サイボウズ株式会社] 賛否が割れがちな「Notesからの移行」 新環境への移行を納得してもらうには? -
事例
[ServiceNow Japan合同会社] 農林中金に学ぶ内製開発 処理効率を約2倍に高めAI活用も加速させた方法とは? -
事例
[ServiceNow Japan合同会社] NTTグループのデジタル変革術、17万人が利用する決裁プロセス刷新の全貌
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
【基本情報技術者試験】「デュプレックスシステム」と「デュアルシステム」の違いは?
-
2
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
3
MS月例パッチが1000件突破 人手不足の情シスを襲う「月1回メンテ」の崩壊
-
4
サーバ約70台をAWSへ ヤナセが移行前にやった「通信要件の可視化」
-
5
脱VMwareの真実:データセンター大手がNutanixを選んだ「コスト以上の理由」
-
6
「Microsoft一択」で本当にいいのか 知らぬ間にライセンス費用が膨らむ真相
-
7
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
8
「VMware離れ」は本当か 3000社がVCF 9にかじを切った現実的な理由
-
9
AIインフラの理想形? 「5層のケーキ」を垂直統合するための近道とは
-
10
多品種小ロットの「手書き・配合ミス」を克服 キャニオンスパイスの食品工場DX
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
生成AIのハルシネーションを防止 回答精度を高めるセマンティックレイヤーとは
-
2
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
3
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
4
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
マンガで解説:「ゼロトラスト」「SASE」の必要性とメリット
-
7
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
8
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
-
9
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
10
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー