識者が語る「ERP製品選択の目」:矢野経済研究所 石塚 俊氏
ITシステムの運用管理、「企業は将来BPOを利用せざるを得なくなる」
コスト削減や業務の効率性向上を目的に導入されるBPO。データ量の増大や情報管理へのニーズから、企業はERPをはじめとするITシステムの運用管理ではBPOを利用せざるを得なくなってきているという。
企業の業務を外部の業者にアウトソーシングするBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)が広がりつつある。ERPパッケージを使ってこれまで社内で行ってきた経理や人事・給与などの業務もBPOの対象となる。ITシステムの運用管理を請け負うBPOは既に一般的なサービスで、ERPの運用管理でも選択肢となっている。2011年7月にBPO市場に関する調査結果を公表した矢野経済研究所の上級研究員 石塚 俊氏に聞いた。
同調査結果によると、2010年度の国内BPO市場の規模は3兆2932億円で、前年度と比べて4.3%の増加だった。矢野経済研究所は2008年度~2014年度の年平均成長率(CAGR)を3.7%と予測している。
BPO市場は2つのカテゴリに分けることができる。1つはIT系BPO市場だ。ITシステムやアプリケーションの運用管理を代行するサービスを指す。ITアウトソーシングともいわれる。もう1つは、間接業務系BPO。これまで企業内で行ってきた総務や人事、経理、福利厚生、電話対応などの間接業務を代行するサービスだ。矢野経済研究所では、営業や研究開発、販売などの直接業務部門が行っている業務のアウトソーシングも間接業務系BPOに含めている。
IT系BPOが伸びる理由
これまで国内のBPO市場を引っ張ってきたのはIT系BPOだ。「IT系BPOは専門性が必要。ITシステムを開発したベンダーやサービス事業者が運用も担うケースが多い」(石塚氏)。2010年度のIT系BPO市場は7.3%増の成長で、「順調に伸びている」。東日本大震災の影響でITシステムの運用管理を外部の業者に依頼する企業が増えることも考えられ、2008年度~2014年度のCAGRは6.1%の増加を予測している。
石塚氏はIT系BPOが成長している理由として、企業情報システムが扱うデータ量の増大やサーバ台数の増加、情報管理の重要性の高まり、そして東日本大震災の発生を受けた事業継続対策などを挙げた。特にデータ量は、企業の管理能力を超えるペースで増えていて「IT系BPOサービスを利用せざるを得なくなってきている」(石塚氏)。また、グローバル競争の激化で、企業は予算や人員のリソースを直接業務に集中させようとしている。結果的にITシステムの運用管理については「社外のリソースに頼る流れが出てきている」。
間接業務系BPOが成長する条件
一方、間接業務系BPOは低成長だ。2010年度は2.1%の微増。2011年度は0.2%減と矢野経済研究所は予測する。2008年度から2014年度までのCAGRは1.8%増の予測だ。2011年度の減少は、直接部門が発注するBPOが減ると見込まれるからだ。人事・給与や経理などの業務は企業の業績に関係なく発生する。そのためBPOの利用もそれほど増減することはない。BPOは長期間で契約することが多いこともあり、景気の影響は受けにくいのだ。一方、直接部門は景気の影響で予算が変動する。2011年度の間接業務系BPOの落ち込み予測は、この直接部門からの発注減少が要因だ。
今後、間接業務系BPOの成長で注目されるのは、企業のグローバル展開だ。企業が海外に子会社や販売、製造拠点を設ける場合、間接業務の立ち上げが障害になるケースが多い。現地の法規制や商慣習が分からず、人事・給与、経理などの業務を確立するのに時間がかかってしまうのだ。ERPを導入してもその設定には手間取るだろう。そのため海外進出企業ではBPOの利用が増えると予測される。IT系BPOと同様に間接業務をBPO事業者に任せることで、コア業務に集中するという構図だ。
日本企業はこれまで、グループ企業の間接業務を集約するシェアードサービス企業を設けることで、グループ全体の効率化を図ってきた。企業が海外進出する際にも、アジアシェアードサービスセンター、北米シェアードサービスセンターなどと、地域ごとにシェアードサービス企業を設けて間接業務を一括処理する企業が多い。
これらのシェアードサービスの活用が続けば、間接業務系BPOが本格的に使われることはないだろう。実際、国内の間接業務系BPOで最も利用されているのはコールセンター業務のBPOで、シェアードサービス化されやすい経理や人事・給与などのBPOは「伸びてもいないし、減ってもいない」(石塚氏)という。
ただ、グループ内のシェアードサービスで本当にコスト削減や効率化が進むのかという疑問も浮かぶ。「ホワイトカラー業務も競争がないとグローバルに勝てない。BPOの導入はホワイトカラー業務に競争を持ち込むことになるだろう。海外では既にそれが起きている」(石塚氏)。米国企業ではインドなど英語圏のBPO事業者に業務をアウトソーシングすることが多い。日本企業が厳しい競争環境にさらされるようになった場合、さらなるコスト削減を目的に間接業務系BPOの利用が拡大する可能性も出てくるだろう。
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