モバイルに適しているシステムとは
そのシステムのモバイル化は必要? 「モバイルファースト信奉者」が陥るワナ
IT環境のあらゆる面をモバイル化できるわけでない。また、モバイル化に適しているわけでもない。業務プロセスをモバイル化する前に、従業員がモバイル化を活用できるかどうかを判断する必要がある。
マルチデバイス対応企業システムの構成例
モバイル戦略について突き詰めていくと、最終的にはモバイルで改善できることやモバイル化がもたらす効率と生産性の向上へと行きつく。「特定のアプリケーションや業務プロセスにモバイル化が役立つのであれば、全てのアプリケーションやプロセスにおいて役立つはずだ」と考えると、モバイル化の波に飲まれやすい。
だが、実際のところモバイルはそう単純ではなく、全てをモバイル化することが必ずしも理にかなっているわけではない。モバイルのワークフローに統合すべきものとそうでないものを判断することは、モバイル化に欠かせない工程の1つだ。
モバイル化に着手することは難しくない。簡単にモバイル化できるものは数多くある。だが実際にモバイル化されるのは、せいぜいメール、予定表、連絡先くらいだろう。このようなアプリケーションは、スマートフォンやタブレットからアクセスできることが望まれている。この状況に基づいて、ほとんどの企業の戦略は、社内の業務やワークフローを確認し、特定の時点でモバイル化すべき要素を把握することが基本となっている。経費清算を例に説明しよう。従業員が月次で経費をまとめて申請しなくても、経費が発生した時点で報告書に記入できるように経費報告書をモバイル化するのは合理的な対応だ。
だが、モバイル化が容易であっても、モバイル化をすべきでないものもある。その基準は取り組むべき「作業」にある。例えば、米Adobe Systemsの「Adobe Photoshop」はタブレットで簡単に利用することができる。しかし、色の再現性や処理速度が問題になるときは、色補正機能を備え、ピクセル数の多い大画面のPCで作業をしたいと筆者は考える。画像編集者に尋ねると、そのほとんどはこのような環境でいつも作業を行うことを望んでいる。一方、現地で撮影を行うカメラマンは、モバイルデバイスで簡単に写真を編集できることを好むかもしれない。業務によって要件が異なるため、ワークフローは各種業務のニーズに適合していなければならない。
レガシーシステムをモバイル化すれば、投資に見合うだけの価値を得られるだろう。だが、それには多大な労力が必要になる可能性もある。まず、システムにデータアクセス用のAPIが用意されているかどうかを確認してほしい。APIを使用するモバイルアプリはいつでも作成できる。APIが用意されていない場合はシステムの使用目的を確認してほしい。そのシステムはモバイルワークフローに統合できるものだろうか。そうでない場合、システムは現状維持することをお勧めする。このような場合、モバイル化に時間と労力をどれほど費やしても目に見える利益は得られないだろう。
レガシーシステムをモバイルワークフローに統合できる場合は、アプリケーションまたはデスクトップの仮想化テクノロジーを使って、スマートフォンやタブレットでシステムを利用することが可能だ。期待するユーザーの効率と生産性の向上が導入コストを上回るなら、モバイル化は大成功である。だが、本当にユーザーがモバイル化による恩恵を受けるのかという点については必ず考慮してほしい。例えば、「Microsoft Outlook」はマウスで操作することを想定して設計された製品だ。タッチ操作向けのタブレット画面でOutlookがうまく動作しないことに企業が気付くまでにそう長くはかからなかった。簡単にタッチ操作用のインタフェースに変更できないシステムは綿密に調査してほしい。レガシーアプリケーションやシステムのモバイル化に投資した時間や資金を回収できない場合は、ワークフローに対処するより良い方法が見つかるまでアプリケーションやシステムは現状のまま使用することをお勧めする。
モバイル化とは、必要なツールを適切なタイミングでユーザーに提供する業務へのアプローチだ。ツールは、アプリまたはデバイスのどちらかに限定されるわけではない。従業員が業務を遂行できるように、2つが適切に組み合わされたものだ。インターネットにデバイスが接続されている時代のためのワークフローについて考え直したときに、モバイル化が必要な部分が見えてくる。PCが適している業務もあれば、タブレットやスマートフォンで行うのが理にかなっている業務もある。この2つをワークフローで併用することで、モバイルの威力が発揮される。
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