仮想ストレージと要件が異なる
破竹の勢いの「Docker」の弱点となり得る厄介な問題
米Dockerの「Docker」コンテナと仮想化はストレージに関して重複する課題を持っている。だが、全く同じストレージシステムはコンテナと仮想化の両方には適合しない可能性がある。
米Dockerのコンテナテクノロジー「Docker」は新しい仮想マシン(VM)だが、企業のデータセンターを席巻する準備が着々と進んでいる。コンテナ化は基本的にサーバの仮想化ではなくアプリケーションの仮想化だ。コンテナはVMのサブセットと考えられる。アプリケーションの場合もあれば、アプリケーションやVMのマスターインスタンスに結び付くアプリケーションの一部という場合もある。だが、VMのストレージのように、コンテナとDockerのストレージでは、それぞれ独自の機能が必要になる。
仮想化の問題
サーバとデスクトップの仮想化は問題なく機能している。こうした仮想化は、ほとんどのデータセンターで標準的なアプリケーションの導入手法になっている。それでは、なぜサーバとデスクトップの仮想化を導入したデータセンターがDockerなどのコンテナテクノロジーに関心を寄せているのだろうか。それは、仮想化が抱える次の2つの根本的な問題をコンテナが克服しているからである。
1.VMはやり過ぎの場合が多い
データセンターでは、1台の物理サーバ上で複数のアプリケーションを安全かつ同時に実行する能力が必要になる。各アプリケーションをサイロ化することで、特定のアプリケーションに存在する問題のあるコードによって他のアプリケーションがクラッシュしないようにすることが必須要件だ。それに加え、CPUやメモリ、ストレージなどのホストサーバのリソースをこれらのエンティティ間で慎重に割り当てられる必要もある。仮想化が登場する前は、IT担当者は1台の物理サーバで実行するアプリケーションを1つに制限することでこのような制御を行っていた。仮想化では物理サーバ全体をVMとして再現し、VMでアプリケーションを1つ実行するのが基本だ。
2.仮想化の実行にはハイパーバイザーが必要である
ハイパーバイザーは、ホストサーバのリソースを抽象化することで、リソースを各種VMに割り当てることが可能になる。この抽象化の処理に関わるハイパーバイザーのオーバーヘッドによってパフォーマンスは低下する。
この2つの問題に対する一般的な解決策は投入するハードウェアを増やすことだ。基本的にはベアメタルサーバではなくCPU処理能力の増強という形を取る。特にCPUの処理能力が十分にあるため、このモデルも機能する。コンテナはとにかく効率性が高い代替手段になる。
コンテナのメリット
コンテナはVMよりも効率的だ。コンテナは、ハードウェア全体を仮想化して抽象化するのではなく、アプリケーションやアプリケーションの一部だけを抽象化する。このように細かい単位で仮想化することにより、冗長なコンポーネントの抽象化によって生じるリソースの無駄がなくなる。また、CPUやメモリ、ストレージ要件の引き下げにもつながる。
Dockerはコピーオンライトのファイルシステムを使用してコンテナを生成する。通常は、まずマスターイメージを作成し、次にそのマスターからコンテナを生成する。ほとんどのハイパーバイザーにも同様の機能が備わっているが、マスターイメージはVM全体でなければならない。また、コンテナテクノロジーなら、マスターイメージはもっと精密になる。コンテナはアプリケーションの派生物だけでなく、サブセットにもなる。
Dockerストレージの考慮事項
Dockerストレージの考慮事項の多くは、仮想化に関する懸念と同様である。だが、そこには幾つかの重要な違いが存在する。Dockerは直接接続型ストレージを使用する設計になっているが、Docker環境の成熟に伴い、各種コンテナはホスト間で情報を共有し、コンテナを移動できなければならなくなっている。共有ストレージを使用することで高可用性、共有アクセス、コンテナの移動が可能になる。だが、Dockerで使用する共有ストレージは、通常の仮想サーバ環境より多くの可変的なワークロード需要に対処できなければならない。入出力の観点では、Dockerのストレージ環境は、リンククローンを使用する数百ものデスクトップを伴う仮想デスクトップインフラによく似ている。
Docker環境では、数秒でコンテナの数を数十から(数千とまではいかなくとも)数百までスケールアップ可能だ。同様に、ほぼ同じ早さで数十までスケールダウンできる。この可変的なスケーリングに対応するには、フラッシュとHDDの組み合わせをサポートできるシステムが条件となる。また、このシステムでは、コンテナの増加に対応するために設計のスケールアウトが必要になるだろう。
米VMwareの「VMware」や米Microsoftの「Microsoft Hyper-V」とは異なり、現在のDockerはストレージ機能に関してほとんど特色がない。機能に特色がないということは、企業になじみのある機能を利用できるようにするには、ストレージハードウェア上に堅牢なソフトウェアが必要になる。Docker環境はRESTful APIを使用して自動化されることが多い。一方、コンテナはプログラムで生成し、実行および削除されることが多い。そのため、RESTful APIを介してストレージシステム自体を完全にスクリプトで操作できるのは当然のことだ。
Dockerとコンテナテクノロジーは誕生して間もないため、今後数年で大きく変化する可能性がある。Dockerは、新しいプロトコルが追加され、ストレージサービスが提供され、ストレージ管理が改善されると考えて問題ないだろう。サポートするDockerのストレージシステムには、複数のプロトコルをサポートすることで変化に対応可能で、Dockerに追加された機能と競合する可能性がある機能を遮断できる柔軟性が必要だ。
現在Dockerはアプリケーションの開発とテストの支援目的で使用されている。これまで以上に開発努力を行っているデータセンターの数は増えており、ほとんどのエンタープライズデータセンターについても同じことがいえる。Dockerはこのような環境にとって理想的なテクノロジーである。だが仮想化が最初に研究所でのテストに使用されてからビジネスの世界に足を踏み入れたのと同様に、Dockerとコンテナもテスト/開発ツールとしてスタートした後に企業での地位を獲得する可能性は十分ある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[日本オラクル株式会社] ピンチをチャンスに変えたEPR製品は? 先行企業の導入事例3選 -
技術文書・技術解説
[日本オラクル株式会社] 無自覚なリスク 秘伝Excelファイルが監査の壁、不正・ミスの温床となる理由 -
製品資料
[日本オラクル株式会社] 戦略的経理の第一歩 失敗のない「脱Excel」を実現する秘訣とは? -
技術文書・技術解説
[日本オラクル株式会社] いまさら聞けないオンプレERPとクラウドERPの違い 最適な製品をどう見極める? -
事例
[株式会社ビザスク] 連結売上高が約2倍に成長、富士フイルムが実践した新規事業創出の戦略とは?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
2
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
3
「ノートPC派」は損をしている? Dellと考える“自作PC”のメリット
-
4
エンジニアの生産性はどう測る? マネジメントに不可欠な可視化の実現方法とは
-
5
慶應義塾が「Notion」を選んだ理由 AI導入の盲点になる“情報のサイロ化”
-
6
ただなのに「12時間以内の復旧」も要求 無償OSSに商用レベルを求める企業の末路
-
7
「IoT通信環境の構築・運用」に関するアンケート
-
8
生データを隠してデータ連携 KDDIが4000万人の顧客情報を安全に分析できた理由
-
9
「Copilot」はなぜ放置される? “議事録要約止まり”を脱する処方箋
-
10
大阪証券取引所がHiRDBで実現した「世界トップレベルの応答速度」を誇る新売買システム
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
DX/AI投資の壁を突破、現代の最高財務責任者が直面する課題と克服のヒント
-
2
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
3
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
4
バックアップは“取っているから大丈夫”なのか? ランサムウェア時代の備え方
-
5
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
6
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
7
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
8
5分で分かる Microsoft 365のデータ損失に備えるためのバックアップの仕組み
-
9
ネットワーク遅延の原因、「パケットロス」の基礎知識と効果的な解決策
-
10
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー